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愛に縛られた魂は重いから

作者: 満原こもじ
掲載日:2026/09/19

 本来魂は軽い。

 空気より軽いのだ。

 だから人は死んで肉体を脱ぎ捨てると、魂は天界に昇るものと決まっている。

 天界に辿り着けないのは、魂が悪徳や執着に染まって重くなっている場合に限られる。


 最近人間界で、空気にも重さがあることが知られ始めた。

 魔道で空気を成分に分けた時、重いものと軽いものがあるとわかったのだ。

 軽い空気を選り分け袋に詰めたものを風船と呼び、祭りなどのイベントや子供の玩具として用いられるようになった。


          ◇


 セラフィ・ラッカム男爵令嬢はアラン・モーペス男爵令息の幼馴染だった。

 アランはモーペス男爵家の跡取りで、『わたしはアランのお嫁さんになるのよ』と子供の頃からセラフィは言っていた。

 それくらい二人は仲がよかったのだ。

 後に二人が婚約したのはごく自然な流れだった。


 しかしアランは事故で命を落としてしまった。

 セラフィは嘆き悲しんだ。

 が、それは建設的でないと思い始めた。

 下界であったこと、わたしの周りであったことをアランに伝えたいと考えたのだ。


 セラフィは風船でアラン宛ての手紙を飛ばした。

 今年のプラムはおいしかったこと、テストの成績、公園の大道芸など。

 内容はたわいもないことだった。

 天界にいるアランに、わたしが日々の生活を楽しんでいることが届きますように、と。


 ところがアランの魂は天界にいなかった。

 セラフィとの愛に捉われてしまい、天界に昇れなかったのだ。

 アランの魂はセラフィの近辺にいたのだが、セラフィは気付かなかった。

 セラフィは時折手紙風船を飛ばしていたが、もちろんアランの元に届くことはなかった。


 天帝がアランとセラフィの状況を知り、哀れに思った。

 元々身体の強くないセラフィに寿命が近付いていることを、天帝は知っていたから。

 セラフィの魂は天に召されるだろう。

 アランと天界で再会できることを楽しみにしているだろう。


 しかしアランの魂は下界での愛に縛られてしまった。

 このままでは天に昇れないのだ。

 アランは下界の愛を脱ぎ捨て、魂の愛に昇華すべきであった。

 下界にいてはなかなかその境地に至れないのも現実ではあったが。


 天帝は迷った。

 自分が力を貸すのは簡単だが、天界に昇りたい魂はアランだけではない。

 天界を統べる者の行いとして不公平ではないかと。

 しかしここで閃いた。


 自分の寿命を悟ったセラフィが最後の手紙を書いていたからだ。

 わたしもそちらに行きます、楽しみにしていてくださいねと。

 これまでのよりもうんと大きな風船に手紙を括りつけて。


 天帝はアランに言った。

 アランよ、セラフィの風船はそなたが天界に来るための乗り物であると。

 理解したアランの魂はセラフィの風船に捕まって天界に到達した。

 アランの魂は聖気で浄化されて軽くなり、天界の住民として相応しいものになった。


 ほどなくしてセラフィの魂も天界に着いた。

 二人は天界で仲睦まじく暮らしたのだった。

 いつまでもいつまでも。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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― 新着の感想 ―
タイトルで重い話かなと思ったら、予想外で裏切られました。 健気なヒロインが可愛らしいです。 そりゃ、婚約者も縛られちゃいますよね。 ⋯親の立場になると辛すぎる⋯。゜(゜´Д`゜)゜。
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