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思考実験シリーズ

【思考実験】究極の三択

作者: 雨音かえる
掲載日:2026/04/30

いらっしゃい。

 私はこの実験室の案内人「チトセ」です。


 ここは、あらゆる人が思考実験の餌食……いえ、被験者となっていただき、一緒に考えて頂く場所です。


 

 今回の実験は、「トロッコ問題」よ。

 有名ね。


 

 ――ブレーキが壊れたトロッコの進む先にはら、作業員5人がいます。線路を切り替えれば5人は助かります。ですが、切り替えれば、その線路の先にいる1人が犠牲になります。


  

 ねえ、どっちを殺しても、あなたの魂には一生消えない泥がつくわよ。……ふふ、その泥の色、私に見せてくれる?

 

 え? 私ですか?

 わたしなら……迷わず全員始末……。

 いえ、黙って静観しているかもしれません。

 だって、余計なことに関わらないのが、1番ですからね。


 さぁ、はじめましょう。はじめましょう。


 アサヒは、汗ばむ手でレバーを握りしめていた。

 レバーを持つ手が震える。

 今にも勝手倒してしまいそうだ。


 

 どうする!?

 どうすればいいっ!?



 心臓が早鐘のように打ち、身体中から汗が吹き出る。

 ハァハァと呼吸もままならず、止まりそうな程に荒い。


 アサヒの目に、二つの選択が転がっている。


 一つは、何もしなければ、このまま鉄骨が落ち下の通行人が数人死ぬだろう。


 そしてもう一つは、レバーを倒し、タワークレーンを旋回させれば、隣のビルに鉄骨が激突して、ビルは倒壊してしまうかもしれない。


 だが、下の人達を助けるという意思は、認められるだろう。


 ゆっくり回せば問題無いだろうが、ワイヤーが今にも切れそうだ。ゆっくりなんて、してられない。


 時間が無い。


 このまま何もしなければ、下にいる人たちは死ぬかもしれないが、ただの事故として終われる。

 自分が殺した事には、ならないのではないか?


 だが、ワイヤーが今にも切れそうな事を知っている。

 しかも、ワイヤーの点検をしたのは、他でもない自分だ。


 どうする!!?


 ワイヤーは、今まさに切れようとしていた。

 アサヒさん。

 どうやっても、あなたに逃げ場なんかないわね。

 諦めて「事故」として、最小限に留めるのが1番いいかもしれないわね。


 私が予言したとおり、やっぱりあなたの魂には一生消えない泥がついたわね。


 二択なら、まだマシだったわね。



  三つ目の選択肢――『自分の罪を自覚しながら、ただ立ち尽くす』


 

 それが、一番汚い泥の色をしているのよ。……ふふ、素敵だわ。


 何事も、事を行う時には、点検確認は必要ってことよ?


 無難に事を終わらせるには、それが一番安全かもしれないわね。



 さぁ、あなたは、どの選択をする?

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