表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
普通の悪役令嬢に転生したと思ったら、バグまで一緒にくっついてきました。  作者: 逆立ちハムスター


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/5

⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀5⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀5⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀5⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀5⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀5

「あ、あの……それ、返してもらえますか?……」


 私は震える声で、ステラに歩み寄った。

 必死だった。そのドレスがなければ、私はどんな厄介な事態になるか予想できない。偽物だって、怖い騎士達に学園から蹴り出されるかも。何より「平民の服」という低解像度のアセットは、私のバグ耐性が低そうで怖かったのだ。

 だが、周囲から見れば、それは「みすぼらしい格好をした公爵令嬢が、なぜか豪華な服を着ている平民の少女を脅している」という地獄のような構図だった。


「ひっ、ご、ごめんなさい……! 私、何もしてないのに、急に服が……! ごめんなさい! ごめんなさい!」


「悪いのは私の方で……」


 ステラが泣き出しそうになった、その時。


「そこまでだ、リゼッテ!」


 地響きのような声とともに、白馬……ではなく、恐らく、第一王子レヴィアンが登場した。

 彼は金髪を逆立て、怒りに燃える瞳で私を睨みつける。


「また貴様か! 懲りもせず、弱い者いじめばかり。ステラに自分のドレスを無理やり着せ、羞恥を与えただけでなく……自分は平民の服を纏い、彼女が盗んだとでも言いたいのか! なんと卑劣な……!」


(いや、ちょっと待って!! 私は自分のバグへの対処でいっぱい、いっぱいなのよ。そんな次から次へと、どんどん持ってこられたら、頭がパンクしちゃうわよ……でもかっこいい王子♡)


 私は必死に弁明しようと口を開いた。

「ち、違います、レヴィアン殿下! これは、その、不慮の事故というか、物理的なバグでして……!だから……!」


 その瞬間。

 私の目の前に、半透明の大きな巨大なウィンドウが出現した。

 それも、レヴィアン王子からもはっきりと見える位置に。


『【リゼッテの本音:字幕表示モード】』


 嫌な予感がした。止めようとしたが、私の思考は既に言語化されていた。


『(うわ、記憶より、間近で見るとレヴィアン王子、めちゃくちゃ顔がいい……。流石は攻略対象、彫刻みたいな美形だわ。ちょっと、かっこよすぎて、ときめきそう……)』


 時間が、止まった。

 『溶岩』の噴き出す、非日常音だけが、虚しく響く。


 レヴィアン王子は、怒りで拳を作っていた手を開き、目を見開いて硬直した。

 彼の顔が、耳の付け根まで真っ赤に染まっていく。


「き、貴様……何を……何を言っているんだ……!? 衆人環視の中で、そのような破廉恥な告白を……!」


「ち、違うんです! 今のは私の本音なんですけど、いえ、そうじゃなくって! これはシステムの勝手な解釈というか……!」


『(あ、照れてる。可愛い。怒ってる顔もいいけど、赤くなってる王子も最高に目の保養だわ……)』


 無情にも更新される本音字幕。

泡を吹いて今にも倒れそう。

 私はリゼッテ、猛烈に死にたい。今すぐこの世界のマップから消滅してしまいたい。

 焦れば焦るほど、私の心拍数は上がり、それに応じて字幕の更新速度も上がっていく。


「ふ、ふん!……そんなことを言っても、虐めは許されんぞ!……だが、その……君が……君が、私をそこまで高く評価しているというのなら……少しは温情を、かけないこともない……」


 王子はあからさまに動揺し、視線を泳がせながら喋る。

 さっきまでの殺気はどこへやら、彼は「変なやつだと思われた」と焦る私を見て、なぜか「照れ隠しで必死な乙女」だと勘違いしたらしい。


「あ、あの……!」

 そこで、おずおずとステラが声を上げた。彼女は豪華なドレスの裾をぎゅっと握りしめ、レヴィアン王子を見上げる。


「レヴィアン様、リゼッテ様は私をいじめてなんていません。突然、光に包まれて……その、服が入れ替わってしまっただけでして……」


 聖女の無垢な証言。

 レヴィアン王子は一つ咳払いをし、冷静さを取り戻そうと努めた。


「……ふむ。ステラがそう言うのなら、ひとまずは信じよう。だがリゼッテ、その頭上の不気味な文字と、心の中を垂れ流す術をどうにかしろ。……その……心臓に悪い」


「……善処します」


 私は力なく答えた。

 誤解は(別の方向に拡大しつつも)解け、一先ず一段落……なのだろうか。

 私は平民の制服のまま、ぐったりと肩を落とした。


 ふと見ると、噴水の溶岩が、今度は「チェリーピンクのゼリー」に変化していた。

 どうやら私の感情が「ときめき」に反応して、また余計な書き換えを発動させたらしい。


学園生活、まだ一日目なのに……もう耐久値がゼロになりそうだわ……。


 私の遠い目の先では、見つめた雲だけが高速回転を始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ