表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
普通の悪役令嬢に転生したと思ったら、バグまで一緒にくっついてきました。  作者: 逆立ちハムスター


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/5

⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀4⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀

 学園の正門。それは本来、貴族の子弟たちが華やかに未来を語り合う社交の場だ。

 だが、私がその一歩を踏み出した瞬間、そこは「未完成のホラーゲーム」へと変貌を遂げた。


(私は石。私は無機物。私は、背景の一部……。私は、テクスチャが貼られる前のドットの塊……。)


 脳内で般若心経じみた自己暗示を繰り返しながら、私は極限まで表情を殺して歩く。

 瞬き一つせず、視線は一点を凝視。中身は「いつ地面が消えてもいいように」と心臓がバクバクしている挙動不審者だが、外側からは「周囲を塵芥ちりあくたとも思わない傲慢な公爵令嬢」に見えているはずだ。


 ――カラン、カラン。


 一歩踏み出すたびに、妙に澄んだ鈴の音が響く。

 見れば、私が踏みしめた石畳が、その足跡の形に「スカイボックス」のテクスチャへ書き換えられていた。地面に穴が開いているのではない。石畳の模様があるべき場所に、どこまでも深い青空と白い雲が映り込んでいるのを。


なにやら聞こえてくる。


「ひっ……見ろよ、リゼッテ様が歩く場所から『次元』が削り取られているぞ……!」

「あの方、地面を消滅させながら歩いておられるのか? なんという魔力だ……」

「しかも変な物体を頭に乗せて歩いているわ。おぞましい」


 周囲の生徒たちが、まるでモーゼの十戒のように、言いたい放題言ってから左右へ割れていく。


 違うの。ただの意味不明なエラーなの。私が歩く速度に、この世界の描画が追いついていないだけなのよ、きっと……そう……たぶん。

 私は叫びたい衝動を鉄の意志で抑え込み、さらに「無」を深めた。ここで動揺して感情を爆発させれば、今度は学園全体が持ち上がったり、剥がれ落ちる予感がしたからだ。


 現在の自分の状態を確認すべく、私は広場の中央にある噴水へと向かった。

 水面を鏡代わりにしようとしたのだが――。


「……はっ!?」


 絶句した。

 噴水の水面に映る私の頭上。そこには燦然と輝く【災害(歩くシステムエラー)】の文字。

 そしてその直下、電光掲示板のような透過ウィンドウが、私の感情をリアルタイムで翻訳(デバッグ出力)していた。


『【現在の状態:極度の困惑・および生存本能による強制フリーズ中】』


 筒抜けじゃない!

 プライバシーもへったくれもないわ。私はあまりのショックに、よろけて噴水の縁に手を置いた。


 ――ジュワッ!!!


「熱っ!?……って、えええええ!?」

凄まじい熱風で圧倒される。


 あろうことか、私の手が触れた瞬間、清らかな水がドロドロとした赤黒い「溶岩」に変色したのだ。噴水から火柱が上がり、周囲に硫黄の臭いが立ち込める。

 噴水の概念が、私の「動揺」という異常な異質を処理しきれず、適当な攻撃オブジェクトに置き換わってしまったらしい。


「火山だ! 公爵……いや、悪役令嬢が学園を噴火させたぞ!!」

「逃げろ! 焼き殺される!」


(違う! 私、今ちょっとびっくりしただけなの!)

 パニックになり、私は慌てて後ずさった。かなり後ずさった。熱いから。

 だが、足元の座標計算が狂っていた。振り返りざま、誰かに激突する。


「きゃっ……!?」


 ぶつかったのは、桃色の髪をなびかせた可憐な少女。恐らく、この物語の本来のヒロイン、平民聖女のステラだ。なぜなら、私が昔の記憶が戻ってない間、徹底的に虐めてやろうと画策していた相手だったからだ。


 本来なら、恐らく、ここで私が彼女を突き飛ばして「不浄な平民が触れるな!」と罵るのが悪役令嬢のお決まりだ。しかし、私にはそんなお決まりを回避しようかな〜♪ なんて呑気な事を考える暇すらない状況。

 現実は私の予想よりも遥かに「非論理的」だった。


 ――ビ、ビビビッ!!


 凄まじい電子ノイズが脳内を駆け巡る。

 ステラと接触した箇所から、虹色のノイズが私達の体を包み込んだ。


 一瞬、視界が真っ白に染まった。

 次に目を開けた時。


「……え!?」

「……へっ!?」


 私とステラは、同時にお互いの姿を見て固まった。

 私の体には、ついさっきまでステラが着ていた、使い古された質素な平民用の制服が。

 そしてステラの体には、私が今朝アンに必死の思いで着せてもらった、時価、高過ぎ最高級シルクの公爵令嬢ドレスが、寸分の狂いもなく着用されていた。


 よりにもよって、ヒロインと服のデータが入れ替わってしまったのだ。

しかし、別に元一般人の私にとって、普通の着心地だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ