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私たちは、見落としたまま愛していた

作者: 月白ふゆ
掲載日:2026/02/13

 相沢真帆が経理部に異動して三年目の冬、会社の空気はいつもより乾いていた。決算が近づくと、フロアの誰もが少しだけ言葉を節約し、メールの件名が短くなる。数字が締まるほど、人の表情が固くなる。真帆はその変化に慣れていたし、嫌いでもなかった。曖昧なものが削ぎ落ちて、最後に残るのは「合っているか」「合っていないか」だけだ。


 ただ、その季節のはじまりに、ひとつだけ曖昧なものが増えた。


 高瀬修平という恋人の存在だった。


 恋人、と口に出すと少し気恥ずかしい。実際には、付き合って一年と少し。社内恋愛だから派手なことはしない。昼休みに一緒に歩くことも避けて、会うのは帰り道か週末だけ。それでも、真帆の生活は修平がいるだけで静かに整っていった。


 彼は営業だ。笑顔と機転で場をつなぎ、クライアントの曖昧な要望を具体に落とし込む。真帆の世界が「帳尻を合わせる」ことなら、彼の世界は「約束をつくる」ことだった。性格も似ている。過剰に甘い言葉は使わないが、言ったことは守る。遅れるときは必ず連絡を入れ、約束を破るときは先に謝る。真帆はその真面目さが好きだった。


 ある金曜日、残業を切り上げて駅へ向かう途中、修平からメッセージが届いた。


『ごめん。急に寄るところができた。先に帰ってて。明日埋め合わせする』


 真帆は歩きながら、返信欄に「了解」と打ち、送信した。詮索するほどのことじゃない。営業は突発が多い。そう思って、改札を抜ける。


 しかし、次の週も、その次の週も、同じような「急に寄るところ」が続いた。


 真帆は疑わなかった。疑う材料がなかった。修平の会話は変わらず穏やかで、会ったときの目線も、触れる手も、以前と同じだった。むしろ、以前より丁寧に扱われている気さえした。だからこそ、真帆の中に生まれた違和感は、疑念ではなく「説明のつかない余白」になっていく。


 その余白が形を持ったのは、十二月の半ば。雨上がりの夕方だった。


 会社の最寄り駅のコンコースで、真帆は修平を見つけた。遠目にも分かる。背筋がまっすぐで、肩の力だけが少し抜けている。人前ではあまり見せない柔らかい顔だった。その視線の先に、制服姿の女の子がいた。


 女子高校生。セーターの上に薄いコート、肩にかけたスクールバッグ。髪は黒く、少しだけ揺れる。真帆が知っている「この年頃の子」より落ち着いて見えた。スマホをいじるでもなく、足元の水たまりを避けるでもなく、ただ修平の話を聞いている。


 真帆は足を止めた。胸の奥が、理由もなくひやりとする。浮気だ、という結論はあまりに雑だ。でも、恋人が女子高校生と二人でいる絵面は、説明を拒む。


 修平が先に気づいた。真帆を見ると、少し驚いたように眉を上げ、すぐに歩み寄ってくる。


「真帆。どうした、こんなところで」


「帰り。修平こそ、今日は……」


 言い終える前に、女の子が軽い足取りで近づいてきた。距離感が妙に近い。嫌な近さではないのに、こちらの呼吸の範囲に自然に入ってくる。


「恋人さん?」


 真帆は一瞬、言葉を失った。修平が説明するより先に、女の子の方が真帆を見上げて言った。


「だよね。修平さん、そう言ってた」


 その言い方が、不思議と礼儀正しかった。勝ち誇るでも、牽制するでもなく、事実を確認するように。


 修平が小さく息を吐き、真帆の肩に手を置いた。


「紹介する。未央。……知り合いの子だ」


「未央です」


 名乗り方が大人っぽい。真帆が「相沢です」と返すと、未央は少し笑って、「真帆さん」と呼んだ。初対面の相手の名前を迷いなく口にする。その自然さが、逆に引っかかる。


 修平はそれ以上を説明しなかった。真帆も聞かなかった。駅の人波の中で、説明はいつでも不格好になる。真帆はただ、修平の指先が少し冷たいことだけを感じた。


 その日は三人で歩いた。駅前の明るい通りを、修平が真ん中、真帆と未央が左右。恋人と高校生が同じ歩幅で並ぶことの不自然さが、歩き続けるうちに薄れていく。未央はよく笑い、よく黙った。話題が途切れると、空気が気まずくなるのではなく、温度が落ち着く。


 ファミレスで夕食を取った。修平は仕事の話を避け、真帆の愚痴を聞き、未央の学校の話を少し聞いた。未央は部活の話をしなかった。友達の話も、家の話も、しなかった。質問されると、薄く笑って「まあ、色々」と言う。修平はそれ以上、追わない。


 会計のとき、真帆が財布を出すより先に修平が伝票を掴んだ。真帆はいつも通り「半分払う」と言い、修平はいつも通り「今日はいい」と言った。いつもより違うのは、未央が一円も出そうとしないことだった。高校生なら当たり前、と言えば当たり前だが、真帆の中の経理の回路が小さく反応した。三人で食べたのに、二人分の会計にしか見えない。


 店を出ると、未央は「ありがとう」とだけ言い、修平の袖を軽く掴んだ。恋人の真帆がいる前で。けれど、その仕草に色気はなかった。もっと別の、子どもが大人の手を確認するような、必死さがあった。


 帰り道、真帆は修平と二人になった。未央は途中で一本違う道に曲がり、「じゃあね」と手を振った。背中が驚くほど軽く見えた。スクールバッグの重さを感じさせない。


「驚かせたよね」


 修平が先に言った。


「驚いた。けど……別に、嫌じゃない。説明が必要なだけ」


 真帆は自分の言葉に少し驚いた。嫌じゃない。どうしてそう言えるのか、自分でも分からない。ただ、未央の目に悪意がなかった。修平の声に嘘がなかった。そこだけは確かだった。


 修平は少し黙ってから、歩きながら言った。


「未央は、……俺が放っておけない子なんだ」


「家の事情?」


「そういうのもある。細かいことは、ちゃんと話す。今じゃないだけ」


 真帆は頷いた。今じゃない。それは修平が逃げるときの言い方ではない。言葉を選んでいるときの言い方だ。


 その夜、真帆はベッドの上で、修平から届いた短いメッセージを何度か読み返した。


『ありがとう。今日は、助かった』


 助かった。恋人を紹介しただけで助かるなんて、変だ。変だと感じるのに、腹は立たなかった。真帆は自分の感情を整理しようとしたが、どこにもきれいに入らない。だから翌朝、いつも通り会社へ行き、いつも通りの数字を追い始めた。


 それから未央は、時々ふたりの前に現れた。  それは「会う約束をした」というより、「呼吸の合間に混ざる」みたいな現れ方だった。真帆と修平が映画を観に行こうとして駅に着くと、改札外のベンチに未央が座っている。真帆がスーパーの袋を抱えて修平の部屋に向かう途中、横断歩道の向こうから未央が手を振る。修平が「ごめん」と言う前に、未央が「今日は少しだけ」と言う。真帆は最初、予定を奪われた気がして眉をひそめそうになったが、未央が「すぐ帰る」と言って本当に短時間で消えるので、怒りの置き場を見失った。


 修平は未央がいる間、真帆の手を離さなかった。取り繕うための芝居ではなく、ただ自然に。恋人としての位置を、未央の前で揺らがせないようにしているようにも見えたし、逆に、未央を安心させるための儀式にも見えた。真帆はそのどちらも否定できなかった。


 ある日、真帆が「たまには外でちゃんとデートしたい」と言うと、修平は珍しくすぐに頷いた。日曜の午後、街の小さな水族館へ行き、薄暗い通路で青い光に包まれた。クラゲがゆっくりと浮かぶ水槽の前で、修平は真帆の横顔を見て言った。


「こういうの、好きなんだ」


「好き。形がはっきりしないのに、ちゃんとそこにいるから」


 真帆がそう言うと、修平の視線が一瞬だけ揺れた。真帆はその揺れを見て、言葉を引っ込めようとしたが、遅かった。修平は小さく笑って、真帆の髪を耳にかけた。


「真帆は、ちゃんと見てしまうからな」


「仕事柄ね」


「仕事じゃなくても、だよ」


 その一言で真帆の胸が温かくなった。未央の存在で冷えた余白が、恋人の言葉で少し埋まる。埋まるからこそ、余白の形がより明確に見える。真帆はその矛盾を飲み込んだ。


 水族館を出たあと、二人で喫茶店に入り、真帆はケーキとコーヒーを頼んだ。修平はコーヒーだけ。真帆が「甘いの、食べないの?」と聞くと、修平は首を振った。


「誰かが甘いの好きだと、自分はあんまり食べなくなる」


「誰かって?」


 真帆が冗談めかして言うと、修平は一拍置いてから、「昔の癖」とだけ答えた。真帆はそれ以上追わなかった。追わないことが優しさになる場面があると、その頃から少しずつ理解し始めていた。


 喫茶店を出て、商店街を歩いていると、また未央が現れた。どこから来たのか分からない。気配も足音もなく、気づいたときには隣にいる。未央は真帆の手元の紙袋を覗き込み、目を輝かせた。


「それ、なに?」


「ケーキ屋さんのクッキー。家で食べようと思って」


「いいな。甘い匂い、好き」


 好きと言いながら、未央は袋に手を伸ばさない。修平が「一枚食べる?」と聞いても、「いい」と笑って首を振る。真帆はそのやり取りの中に、何かの規則を感じた。食べたいのに食べない、ではなく、食べられないのに欲しがっているみたいな。


 真帆は紙袋を抱え直し、代わりに「家で温かいの飲む?」と聞いた。未央は「飲む」と即答した。その即答が、妙に子どもっぽかった。


 その日、真帆の部屋でクッキーを皿に出し、ミルクティーを淹れた。未央は湯気の上に両手をかざして温まり、「冬の匂いがする」と言った。真帆が「冬の匂いって何」と笑うと、未央は少し考えてから、「帰り道の匂い」と答えた。修平がその言葉を聞いた瞬間、目を伏せた。真帆は気づいた。未央の言葉は、ときどき修平の記憶の奥を叩く。叩いて、ひび割れさせる。


 真帆は皿のクッキーを一枚、未央の前へ滑らせた。未央は嬉しそうに指先で触れ、けれど口には運ばなかった。真帆が「食べないの?」と聞くと、未央は曖昧に笑って、「あとで」と言った。その「あとで」は、いつも来ない。


 真帆は、その夜から自分の中に「未央の存在を数える」癖が生まれていることに気づいた。会った回数、言葉の数、笑った回数。経理の癖だ。数えることで安心しようとする。けれど、数えれば数えるほど、足りないものが見えてくる。未央の生活が見えない。学校の話は断片だけで、友達の名前が一つも出ない。先生の愚痴もない。教科書の匂いも、部活の汗も、未央の周りにはまとわりつかない。


 なのに未央は、確かに真帆の前で笑う。


 真帆はその矛盾を、恋愛の一部として抱えることにした。修平が真帆を大切にすることも、未央を放っておけないことも、どちらも同じ根から生えている。そう信じたかった。


 真帆は未央のことを少しずつ知った。好きな飲み物は温かいミルクティー。甘いものは少し苦手。音楽は聴かない。映画も観ない。代わりに、空をよく見ている。夕焼けが好きで、雲の形を当てるのが得意だった。


「今日の雲、魚みたい」


 未央が言う。真帆が見上げると、確かに尾びれのある影が伸びていた。


「魚っていうか、鯨かな」


「大きいのがいいんだ。安心するから」


 未央はそう言って笑い、修平の方を見た。修平は「そうか」とだけ返す。優しい声なのに、少しだけ遠い。真帆はその距離感が気になり始めた。未央に対して、修平は恋人に見せる優しさと同じ温度を持ちながら、決定的に踏み込まない。それはまるで、壊れものを扱う手つきだった。


 年末が近づき、真帆の仕事は加速度的に忙しくなった。売上の計上、未払の確認、仮払精算。月末の締めは、会社という生き物の脈拍を聞く時間だ。真帆は好きだった。数字は裏切らない。嘘があれば、どこかが歪む。


 そう信じていた。


 ある日、修平が真帆を迎えに来た。珍しく会社の前まで来て、待っていた。寒そうに息を白くしながら、手袋を外し、真帆の手を取る。


「今日は、ちゃんと話す」


 修平の声は、決意の硬さがあった。真帆は頷いた。そうするべきだ、と頭では分かっている。心は、分からないままでもいいと思っている。


 ふたりは駅から少し離れた小さな居酒屋に入った。カウンターの端、隣同士。修平はビールを一口飲んでから、真帆の方を見ずに話し始めた。


「未央は……昔、近所にいた子だ」


「昔?」


「俺が大学の頃。家が近かった。時々、話してた。俺にとっては、家族みたいなもんだった」


 真帆は黙って聞いた。修平は必要なところだけを切り取って並べているような話し方をする。真帆は「それで?」と急かしたくなる衝動を抑えた。


「未央の家は、あまり良くなかった。本人が何も言わないから、俺も勝手に踏み込まなかった。けど、ある日、連絡が取れなくなって……」


 修平はそこで言葉を切った。ジョッキを握る指先に力が入る。真帆はそこに触れたいと思ったが、手を伸ばさなかった。


「最近になって、偶然会ったんだ。駅前で」


「偶然……」


「本当に偶然だ。俺も驚いた」


 修平がようやく真帆を見る。目が逸れない。嘘をついている目じゃない。けれど、全部を言っている目でもなかった。


「今度は、放っておけなかった。俺が一度放ったから、今、ここにいる気がして」


 真帆はゆっくり息を吐いた。「そう」とだけ言うのが精いっぱいだった。恋人の過去に、恋人が守りたい誰かがいる。それは普通のことだ。なのに、未央という存在は、普通の守り方を拒む。


「私にできることはある?」


 修平は少し驚いたように瞬きをし、それからほっとしたように笑った。


「それを言ってくれるだけで十分」


 その言葉が、真帆の胸を温めた。彼が誰かを守ることと、真帆が愛されることが、矛盾しないと信じられた。真帆はその夜、修平の部屋に泊まり、いつもより静かに抱き合った。言葉は少なく、触れる手だけが確かだった。


 年明け、仕事始め。真帆は忙しさに追われながら、修平と会える時間を大切にした。未央は相変わらず時々現れ、相変わらず軽かった。真帆はその軽さを「若さ」と呼んで片づけようとした。片づけるのが得意だった。経理はそういう仕事だ。


 けれど、二月に入る頃から、真帆の中の「片づけられない棚」がひとつ増えた。


 未央は、いつも改札の外にいた。


 最初は気にしていなかった。待ち合わせ場所が駅前なら、改札外は自然だ。けれど、修平がクライアント帰りに合流するときも、未央は同じ場所にいる。修平が別の路線で戻ってくる日も、未央は同じ場所にいる。真帆が遅れても、未央は同じ場所にいる。時間が滑らない。待ち合わせというより、そこに「いる」。


 そして、未央は何も買わなかった。自販機の前で立ち止まっても、缶のボタンに指を伸ばさない。コンビニに入っても、レジに向かわない。修平がホットドリンクを二本買うと、未央は一本を受け取って「ありがとう」と言い、けれど飲む量が少ない。気づけば、いつも少しだけ残っている。真帆は「冷めるから飲みなよ」と言いかけてやめた。冷めても平気そうな顔をするからだ。


 決算月が来た。


 真帆は連日残業し、終電が近づく時間にやっと机を離れる。修平とはすれ違いが増えた。それでも彼は、真帆の帰宅に合わせて短い電話をくれた。眠そうな声で「お疲れ」と言い、真帆は「あなたも」と返す。そのやり取りだけで十分だった。


 決算前夜。真帆はオフィスに残っていた。フロアはほぼ無人で、蛍光灯の白さが余計に冷たい。パソコンの画面に並ぶ数字は、いつも通りの顔をしている。いつも通り、のはずだった。


 売上の計上は済んだ。未払も、仮払も、ほとんど片づいた。あとは経費の最終確認。真帆は営業部の精算データを開き、細かい領収書の束をチェックし始めた。タクシー、接待、手土産。営業という仕事は、現金の流れが多い。だからこそ経理は、そこを見る。


 高瀬修平の精算は、いつもきれいだった。必要なものだけ、必要な分だけ。余計な私用は混ざらない。領収書の貼り方も丁寧で、メモも読みやすい。真帆は内心で何度も「助かる」と思ってきた。


 その夜、真帆はその「助かる」に、別の意味が混ざっていることに気づいた。


 修平の交通費精算に、奇妙な空白があった。クライアント訪問の前後はきっちり記録されているのに、訪問と訪問の間に一時間ほどの空白が何度もある。営業に空白は珍しくない。移動、待ち時間、雑談。けれど、その空白がいつも同じ駅で発生している。会社の最寄り駅。未央と会う場所。


 真帆は画面をスクロールしながら、指先が冷たくなるのを感じた。たまたま? たまたまにしては、回数が多い。二月だけで七回。三月は、もっと増えている。


 真帆は、ふと自分の記憶を引き出した。未央と会った日。三人でファミレスに行った日。修平が「急に寄るところができた」と言った日。メッセージの時刻と、精算データの空白が重なっていく。


 真帆は椅子にもたれ、天井を見上げた。経理の脳は、感情より先に整合性を取ろうとする。だから怖い。怖いと認める前に、現実を組み上げてしまう。


 もし未央が「生きている」なら、生活費の痕跡があるはずだ。交通費、食費、雑費。少なくとも、修平がホットドリンクを二本買う回数が増える。けれど、修平のカード明細にも、現金精算にも、それがない。未央と会う日の支出は、いつも修平一人分の範囲で完結している。


 真帆は思い出した。ファミレスの会計。未央が一円も出さなかったことではない。伝票に書かれていたのは、二人分のセットが二つだった。真帆は三人で食べた記憶を持っている。けれど、伝票は二人分だった。真帆は「高校生だから少食」と自分で片づけた。あのとき、未央は何を食べた?


 胸の奥が、ゆっくり冷えていく。真帆は立ち上がり、コピー機の横に置かれた共用の書類棚から、過去の勤怠管理のログを引っ張り出した。営業部の外出記録。修平は確かに、その時間に会社の最寄り駅付近にいた。スマホの位置情報でチェックインした履歴が残っている。つまり、修平はそこに行っている。行っているのに、誰か一人分が存在しない。


 真帆はキーボードを叩き、検索窓に、駅名と「事故」と「女子高生」を入れた。社内のネットワークは外部サイトへのアクセスが制限されている。ニュースのキャッシュ記事だけが断片的に出る。その断片で十分だった。


 数年前の春。駅前で発生した交通事故。横断歩道を渡っていた女子高校生が巻き込まれ、死亡。記事の写真は小さく、顔は判別できない。けれど、添えられた説明に、名前があった。


 未央。


 真帆は呼吸を忘れた。指先が震える。信じたくない、という感情は遅れてやってきた。経理の脳は、先に結論を置く。未央は、社会の帳簿に載っていない。だから、生活費も、交通費も、記録も、増えない。増えるはずのものが、最初から存在しない。


 じゃあ、今ここで、修平と話して笑う未央は何だ。


 真帆は椅子に座り直し、画面を閉じた。閉じたところで消えない。消えるのはデータだけで、理解は残る。


 机の引き出しを開け、スマホを取り出す。修平に電話をかけようとして、指が止まった。何を言う? 問いを作った瞬間に、未央が崩れる気がした。修平は嘘をつかない。だから答える。答えたら、何かが壊れる。壊れてしまったら、未央はどこへ行く。修平はどうなる。真帆はどこに立てばいい。


 真帆はスマホを伏せ、代わりに、決算の最終チェックに戻った。数字は相変わらず整っている。整っていることが、今は怖かった。会社というシステムが、未央を最初から「いないもの」として処理している。処理できてしまうから、誰も気づかない。気づくのは、整合性の番人だけだ。


 午前一時を回った頃、ようやく作業が終わった。真帆は上着を羽織り、オフィスを出る。エレベーターの鏡に映る自分の顔が、少しだけ白い。夜の空気は冷たく、息が細くなる。駅へ向かう道で、真帆は無意識に改札前の広場を見た。


 そこに、未央がいた。


 制服姿で、いつものように軽く立っている。街灯の下で、影が薄い。真帆は足を止めた。心臓が跳ねる。未央は真帆に気づくと、小さく手を振った。


「真帆さん。お疲れさま」


 声は普通だった。風に消えるでもなく、ちゃんと耳に届く。真帆は喉が鳴るのを感じながら、近づいた。怖いのに、逃げられない。経理の仕事は、見ないふりができない。


「修平は?」


「もうすぐ来るよ」


 未央は笑った。笑い方も普通だ。真帆は、その普通さが怖かった。死んだはずの人が普通にいることが怖いのではない。普通にいてしまう世界が怖い。


「未央」


 真帆が名前を呼ぶと、未央の笑顔がほんの少しだけ揺れた。


「なに」


「あなたは……」


 言葉が続かなかった。真帆は、質問の形を作れない。質問の形を作った瞬間に、未央が崩れる気がした。未央は真帆の沈黙を待つように、視線を落として、足元のタイルの模様を見た。


「わたしね」


 未央がぽつりと言った。


「修平さんが、忘れないでいてくれたから、ここにいられる」


 真帆は息を呑んだ。その言い方は、謝罪でも、お願いでもない。報告だった。自分の存在条件を淡々と述べている。


「真帆さんは、すごいね。ちゃんと見ちゃうんだね」


「……見ちゃうよ。経理だから」


 真帆がそう言うと、未央は少しだけ笑った。


「じゃあ、真帆さんにだけ、言う。わたし、こっちに長くいられない。修平さんは優しいから、ずっと引き止める。引き止めると、修平さんが疲れる」


 真帆の胸に、痛みが広がった。未央は自分のためではなく、修平のために話している。真帆は、恋人の優しさが誰かを縛ることがあると初めて知った。


「真帆さん、修平さんのこと好き?」


 質問がまっすぐ過ぎて、真帆は逃げられなかった。


「好きだよ」


 未央は頷いた。


「よかった。じゃあ、真帆さんが、修平さんを現実にして」


 その言葉の意味が分からないまま、真帆は唇を開いた。


「現実って、何」


 未央は少し首を傾げた。


「帳簿に載る方。残る方。みんなが見てる方」


 真帆の背筋が冷えた。未央は自分が「載らない側」であることを、最初から知っている。知っていて、修平に会っている。修平も、どこかで知っている。だから踏み込まない。壊れものを扱うように優しい。


 足音が近づき、修平が現れた。息を切らせて、真帆を見て、未央を見て、安堵したように笑った。


「ごめん、遅くなった」


 修平は真帆の肩に手を置き、いつもの温度で言う。


「真帆、迎えに来た」


 真帆は修平の目を見た。真帆の中で整合性が揃っていく。修平は嘘をついていない。修平は未央を見ている。未央も修平を見ている。それなのに、社会は未央を数えない。数えないことで、未央は存在できる。皮肉だ。帳簿に載った瞬間、彼女は消えるかもしれない。


 真帆はその瞬間、決めた。経理としての自分ではなく、恋人としての自分で決めた。


「修平」


 修平が「なに」と返す。


「今日は帰ろう。三人で。私の家に来て」


 修平は驚き、未央は目を丸くした。真帆は続けた。


「ご飯、作る。未央も食べたいものがあったら言って」


 未央は口を開き、言葉を探すように瞬きした。やがて小さく「うん」とだけ言った。その声は、泣きそうだった。


 真帆の部屋は狭い。三人で座ると距離が近い。それでも真帆は台所に立ち、いつもより丁寧に野菜を切った。修平は黙って手伝い、未央はダイニングの椅子に座って、湯気を眺めていた。真帆はカレーを作った。子どもが好きで、大人も安心する味。


 食卓に並べ、スプーンを置く。真帆は未央に皿を差し出した。


「熱いから気をつけて」


 未央は「ありがとう」と言い、スプーンを握った。真帆は息を詰めて見守った。未央が一口、口に運ぶ。噛む。飲み込む。表情がふっと緩む。


「……おいしい」


 真帆の肩から力が抜けた。食べる。未央は食べる。だったら、何かが帳簿に残るはずだ。残るはずなのに、残らなかった。真帆はその矛盾を抱えたまま、カレーを口に入れた。


 夜が更け、未央はソファでうとうとし始めた。  カレーの匂いが部屋に落ち着くと、修平は珍しく饒舌になった。未央に向けてではなく、真帆に向けて、ゆっくりと過去の話を繋げようとする。けれど話はいつも、肝心なところで途切れた。真帆は途中で口を挟まず、ただ頷いた。頷きながら、修平の視線が何度も未央の方へ滑るのを見ていた。見て、すぐ戻る。その往復が、まるで確認作業のように規則正しい。


 未央はカレーを三口ほど食べてから、スプーンを皿の縁に置いた。


「もういいの?」


 真帆が聞くと、未央は小さく頷く。


「これ以上は、もったいない」


「もったいない?」


「うん。全部、ここに残ってほしいから」


 未央は胸のあたりを指で軽く叩いた。残ってほしい。言葉は優しいのに、意味は分からない。真帆は「残るよ」と言いかけて、飲み込んだ。残る、という言葉は今夜の地雷だった。


 修平が立ち上がり、台所の流しで手を洗った。水の音が静かな部屋に響く。真帆はその音を聞きながら、ふと、修平の背中が少し痩せたように感じた。決算で疲れている自分より、修平の方が疲れている。そう思った瞬間、真帆の中で何かが決まっていく。


 ソファでうとうとする未央を挟んで、真帆と修平は小さな声で話した。


「修平、あなたは……未央と会うたびに、少しずつ削れてる」


 修平は驚いたように真帆を見た。言い返そうとして、やめた。


「削れてるのに、会うのをやめられない。優しさは立派だけど、優しさだけで人は生きられないよ」


 修平は唇を噛み、やっと小さく頷いた。


「……分かってる。でも、俺が見ないふりをしたら、未央は誰にも見られなくなる」


「誰にも見られなくなるのが、怖い?」


「怖い。俺だけが覚えていて、俺だけが見ている状態が……怖い」


 真帆はその言葉の意味を、痛いほど理解した。経理という仕事は、数字を一人で抱えた人間を作り出す。誰にも共有できない誤差を見つけたとき、世界は自分だけが歪んでいるように見える。その孤独が、修平の中にもある。


「じゃあ、今日だけは三人で共有しよう。私も見る。見るけど、引き止めない。引き止める側に立たない」


 修平は目を閉じ、長く息を吐いた。肯定と否定が同時に混ざった吐息だった。


「真帆、俺は……お前にこんな役を押しつけたくなかった」


「押しつけてない。私が選ぶ」


 真帆はそう言い切って、自分でも驚いた。恋愛の中で、選ぶという言葉を使ったのは初めてだった。今までは「合わせる」「譲る」「待つ」だった。けれど今夜は、選ばないと前へ進めない。


 未央はその会話を、眠りの底で聞いていたのかもしれない。毛布の下で小さく身じろぎし、真帆の方へ顔を向けた。目は閉じたまま、唇だけが動く。


「真帆さん」


 呼ばれて、真帆は息を止めた。


「なに?」


 未央の目がうっすら開いた。焦点が合っていないのに、真帆を見ている。


「真帆さんは、修平さんとどこまで行くの」


「……明日まで。明後日まで。できれば、もっと先まで」


 未央はふっと笑った。


「いいな。時間って、いいな」


 その言葉が、真帆の胸に刺さった。真帆は答えられず、未央の髪をそっと撫でた。冷たくはない。けれど、体温の輪郭が薄い。


 その瞬間、真帆は決定的に理解した。未央の存在は、熱で維持されていない。記憶と視線で維持されている。修平が見続ける限り、未央は「ここ」に戻ってくる。戻ってくることが、修平を削る。未央自身も分かっている。分かっているから、真帆に託した。


 真帆は修平の手を取り、静かに握った。修平は何も言わず、握り返した。その握り返しが、同意だった。


 未央はソファでうとうとしたまま、やがて薄く目を開けて言った。


「修平さん、ねむい」


「寝ていい」


「……帰りたくない」


 修平の顔が歪む。苦しそうに。真帆はその表情を見て、胸が締めつけられた。修平はずっとこの表情を抱えていたのだ。優しさで引き止め、優しさで苦しむ。


 真帆はゆっくり立ち上がり、未央の前にしゃがんだ。


「未央。今日はここにいていい。だけど、ずっとは無理。私たちは生きてるから、明日が来る。未央には、明日が来ないの?」


 未央は真帆を見た。静かな目だった。


「来ない。来ないけど……修平さんが呼ぶと、来ちゃう」


 真帆は頷いた。


「じゃあ、私が言う。修平は呼ばない。呼ばなくても、忘れない。忘れないって約束する。だから、帰って」


 修平がはっと息を呑んだ。未央は目を見開き、唇を震わせた。真帆は続けた。


「未央がいることは、私が知ってる。修平が誰かを大事にしてきたことも知ってる。だから、ここで終わりにしよう。終わりにして、現実の方を続けよう」


 未央の目から、涙が一筋落ちた。真帆はその涙を見て、泣きたくなった。けれど泣かなかった。泣いたら、未央を引き止める側に立ってしまう気がした。


「真帆さん、こわい」


 未央が言った。


「こわいよ。私も」


 真帆は正直に言った。


「でも、こわいって言えるのは、生きてるから」


 未央はしばらく黙ってから、ゆっくり頷いた。修平を見上げる。


「修平さん」


 修平は声が出ないまま、頷いた。


「好きだった」


 未央はそれだけ言って、目を閉じた。次に真帆が瞬きをしたとき、未央の姿はソファから消えていた。毛布だけが、ふわりと沈んでいる。


 真帆は呼吸を吐き、修平を見る。修平は立ち尽くしていた。目に涙が溜まっている。真帆は修平の手を取った。冷たい。駅で初めて会ったときと同じ冷たさ。


「真帆」


 修平が掠れた声で言う。


「……俺、ずっと、どうすればいいか分からなかった」


「分かるよ。分からないことがあるのは、普通」


 真帆は修平の手を強く握った。


「でも、明日からは、分かることだけで生きよう。私たちが数えられる方で」


 修平は何度も頷き、真帆の手の甲に額を押し当てた。真帆はその温度を感じながら、初めて泣いた。声を出さずに、ただ涙が落ちた。


 翌朝、真帆は出勤した。いつも通りのフロア、いつも通りの数字。けれど、真帆の中には、もう片づけられない棚が増えていた。片づけられないままでもいい、と初めて思えた。


 決算は無事に終わった。会社は生き延び、社員は次の月へ進む。真帆は最後の報告書を出し、席を立った。帰り際、ふと、業務メモを見返した。決算の苦労を忘れないために、短い覚え書きを残していた。そこに、真帆は確かに書いたはずだった。


 ――未央の件、記録は残らない。だから、忘れない。


 けれど、画面にはこう表示されていた。


 ――の件、記録は残らない。だから、忘れない。


 名前の部分だけが、きれいに抜け落ちている。削除した覚えはない。入力ミスでもない。真帆は背中が冷えるのを感じた。会社のシステムが、あるいは世界の帳簿が、今もなお「載らないもの」を削ぎ落としている。


 真帆はゆっくりとマウスを動かし、空白にカーソルを合わせた。そこに名前を書き足そうとして、指が止まる。書いても、消える。消えるから、刻まれる。刻まれるから、消える。


 試しに、紙の方なら残るのかと思った。真帆は引き出しから小さなメモ帳を取り出し、ボールペンで同じ文を書こうとした。手帳は経理部でよく使う、硬い表紙のものだ。ところが、ペン先が紙に触れた瞬間、インクがかすれた。真帆は筆圧を上げ、もう一度書く。文字は出る。けれど、書いたはずの部分だけが白く抜ける。まるで最初からそこだけ紙が吸わないみたいに。


 真帆は笑いそうになった。怖さより先に、呆れが来た。世界は徹底している。会社のシステムだけじゃない。現実という帳簿が、あの存在を「項目外」に押し出している。


 その夜、帰宅してからも同じだった。キッチンの棚の奥からレシートをまとめた封筒を出し、三人でファミレスに行った日の控えを探す。見つかったレシートには、やはり二人分のセットが二つだけ印字されていた。真帆はその紙を指でなぞり、あの日の未央の声を思い出す。確かにいた。確かに笑った。けれど紙は冷たく、数字は正しい顔をしている。


 真帆は封筒を閉じ、封をし直した。証拠を集めるのは、経理の仕事だ。けれど、これは証拠を集めることで救われる種類の話じゃない。救われるのは、記録ではなく、受け止める側の覚悟だ。


 忘れないために名前が必要だと思っていた。けれど、名前が消えるなら、覚えているのは自分の中だけだ。自分の中だけに残るものが、この世界で一番確かなこともある。


 会社を出ると、冷たい風が吹いた。駅へ向かう道で、修平からメッセージが届く。


『今日、帰りに寄っていい? ご飯、作るの手伝う』


 真帆は「うん」とだけ返した。短い返事で十分だった。生きている方の約束は、明日も更新できる。  その日の夜、修平はスーパーの袋を両手に提げて真帆の部屋に来た。野菜、肉、ヨーグルト、そして真帆が好きな少し高いバター。いつもは真帆が買うものを、今日は修平が迷いなく選んでいる。その迷いのなさが、真帆を少し泣きそうにさせた。現実の方を生きる、というのは、こういうことだ。明日の献立を考え、来週の予定を埋め、冷蔵庫の残量を気にすること。


 ふたりで台所に立ち、鍋の中でスープが温まる。修平は包丁の使い方が意外に丁寧で、真帆は笑った。修平も笑い、肩の力が抜けた。抜けた瞬間、修平はポケットの中を探って、小さなものを取り出した。黒いヘアゴムだった。少し伸びている。


「これ……前から持ってた?」


 真帆が聞くと、修平は答えに詰まった。


「たぶん、ずっと。捨てられなかった」


 真帆はそれを受け取り、掌の上で転がした。軽い。軽いのに、重い。


「捨てなくていい。うちに置こう」


 真帆がそう言うと、修平の目に一瞬だけ安堵が浮かんだ。真帆は小さなガラス瓶を棚から出し、ヘアゴムを入れ、蓋を閉めた。瓶は食器棚の端に置いた。目立たない場所。隠すためではなく、生活の中にしまうため。


 夜、眠る前に真帆はその瓶をもう一度見た。ガラス越しに黒い輪が見える。真帆は小さく息を吐き、電気を消した。


 翌朝、食器棚を開けると、瓶の中は空だった。


 真帆は蓋を開け、指を差し入れた。確かに空っぽだ。落ちた形跡もない。瓶は揺れていない。真帆は笑いそうになり、笑えなかった。現実に戻ったから終わる、という話ではないらしい。帳簿に載らないものは、帳簿に載らないまま、置き土産だけを残していく。


 真帆は瓶の蓋を閉め、元の場所に戻した。空の瓶を置くのは奇妙だ。けれど、空のまま置いておくことが、いちばん誠実な気がした。


 改札前の広場は、人で賑わっていた。真帆は無意識に、街灯の下を見た。そこには誰もいない。誰もいないことに、真帆は少しだけ安堵し、そして少しだけ寂しかった。


 寂しさは、罪悪感にも似ていた。守れなかった痛みではなく、守り続けることを選ばなかった痛み。真帆はその痛みを、恋人の手を握ることで消してしまわないと決めた。消さずに持って歩く。そうすれば、いつか重さは形を変える。重いままでも、生きていける。


 歩きながら、真帆は胸の奥で小さく数えた。今日という日が、確かに一日ぶん進んだこと。修平の温度が隣にあること。そして、数えられないものが確かにあったこと。数えられないからこそ、真帆はそれを抱いていく。


 その寂しさを抱えたまま、真帆は歩き出した。帳簿に載る現実の方へ。載らないものを、心の奥にしまったまま。


 食器棚の端の空っぽの瓶が、薄い朝日を受けて光っていた。中身がないのに、そこに「残り」があるように見える。その錯覚だけは、世界の帳簿にも消せないのだと、真帆は思った。


 そして、その光を見た瞬間だけ、真帆は確かに聞いた気がした。遠い改札の向こうから、短く息を吸う音がひとつ。


 振り向いても誰もいない。それでも真帆は、歩幅を乱さず前を向いた。


 数えられないものと一緒に、生きていく。


それが、答えだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


じれじれした恋愛に、少しだけ邪魔者がいる。

そんな、よくある恋愛ものを書くつもりで始めた話でした。


優しすぎる恋人と、踏み込めない距離感。

信じたい気持ちと、説明されない違和感。

恋愛としては、割と王道の構図だったはずです。


ところが書いているうちに、

どうしても帳尻が合わない部分が増えていき、

気づけば後半がこんな形になっていました。


恋愛のつもりで読んでいたのに、途中から「あれ?」と思った方がいたなら、

それは、恋愛のつもりで始めたのに帳尻の合わない部分が、

いつの間にか“物語の芯”になっていったから……かもしれません。


それでも、

見落としたまま誰かを選んでしまうこと、

分からないまま前に進んでしまうことも、

恋愛の一つの形だと思っています。


恋愛として読んだ方も、

少し別のものを感じた方も、

何か一つ引っかかるものが残っていれば幸いです。


ありがとうございました。

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