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第八章 雨の日のこと

ロイ=ウェルの第八章です。

マーシャルと会えなくなったエリーとマリーは、ビリーの書斎を訪ね、そこで沢山のことを話し合い、ある計画を試すことにします。楽しんで頂ければ幸いです!


 エリーやマリーは、マーシャルと会えなくなったことを悲しんだ。こんな風な仲違いをしたことはなく、二人はマーシャルを思って苦しんだ。

 それは、リリーも同じだった。自分が嘘をついたせいで、マーシャルを深く傷つけたことがリリーの心を責め続けた。いっそのこと本当のことを話して、仲直りしたいとも考えた。しかし、リリーは魂を奴隷にされてしまっており、どうしても女王陛下への忠誠心を消すことが出来ず、話すことが出来なかった。話せずにいる間に忠誠心はますます強まり、計画が上手くいきそうにないことにリリーはイライラして堪らなくなった。マーシャルが別行動を取るようになってしまい、他の姉弟をみんな女王陛下の元へ連れていく約束を叶えられそうになかったからである。ロイ=ウェルへ連れて行けさえすれば、何とか言い含めて女王陛下のお城へみんなを連れていけるだろうに!何かいいアイディアは無いかと考え、リリーも部屋に篭りがちになっていった。

 そんなある日、エリーとマリーは勇気を出して、ビリーの書斎を訪ねた。マーシャルはビリーには心許しているようだったし、マーシャルのことを何か聞けないかと思ったのだ。もしかしたら、もうロイ=ウェルに行ってしまったのかもしれない。そう考えると二人は怖く、どうしても確認したかった。

 二人を迎え入れたビリーは、ソファに座るよう言い、自分から切り出した。「マーシャルなら、私もあれから会えていないんだ。ただ、手紙のやりとりはしている。彼は、ある計画を立てているそうだよ」

 二人は、顔を見合わせた。マーシャルの計画って…!「マーシャルは、ロイ=ウェルがこちらと繋がる日の法則について思い当たることがあって、次の当てはまる日に、片っ端から屋敷の物を開けようとしてるらしい。お前達、マーシャルが最初にロイ=ウェルに行った日と、二回目に行った日に何か共通していることを思いつかないか?」

 そう聞かれた二人は、過去を振り返ってみた。たしか…最初は外で遊ぶ計画を立てたけどダメになって…。二回目は…?「あ!」と二人は同時に叫んだ。「どっちも、雨が降ってたわ!」

 ビリーは頷いた。「さよう。どうやら繋がった日には、雨という法則があるようなのだ。雨の時は、何か外に行く用事がなければ、まず住んでいる者は家から出ないからな。家にいる者が多い分、その中から誰かを導きやすいとロイ=ウェルが思っているのかもしれない。マーシャルは、次の雨の日に実行するそうだよ」

 ふと、エリーは、マーシャルとリリーが次の雨の日に屋敷の物を開けて回る遊びを考えていたことを思い出した。マーシャルは法則に気づいて、自分達にロイ=ウェルへ繋がる道を見せたかったのか?たしかあの遊びは、二人で考えたのだとマーシャル達は言っていた。あの、ロイ=ウェルの存在を否定していたリリーが、存在を認めてないのにマーシャルに言われたというだけでロイ=ウェルに関わる遊びをやろうとするとは考え難い。なんならリリーも、積極的に遊びについて話していた。なら、あの時すでにリリーも、マーシャルと同じでロイ=ウェルに行ったことがあって、その存在を認めていたんじゃ…?

 エリーは、ビリーに自分が考えたことを全て伝えた。横で聞いていたマリーも、確かにと感じた。話を聞いたビリーは、悲しそうな、思い詰めたような表情で話し始めた。「お前達、私も考えたく無いのだが…。マーシャルではなく、リリーが嘘をついているのだと思わないか?マーシャルが来てからそんなに経っていないが…あの子が嘘をつくような子にはどうしても思えない。それに…リリーが口が立つ子で、嘘や誤魔化しの屁理屈が得意なのは、お前達も知っているだろう?」

 エリーとマリーは改めて考えてみた。そして、父の言う通りだと感じた。今までも、リリーの嘘や屁理屈を信じて、騙されていたことがあったのだ。その分野のリリーの才能は大変恐ろしく、毎回信じまいと思っても、つい信じてしまうのだ。

 「それに」と、ビリーは続けた。「梟頭が来た日のことをよく思い出してごらん。リリーは、開けた物を閉めろと言われ、すぐに駆け出したからマーシャルは怪しいと論じていたが…。思い返せば、あの時リリーも全く同時に駆け出していたんだよ。場所を完全に理解しているようにね。その理屈でマーシャルが怪しいのなら、リリーだって怪しいのだ。マーシャルのことだけを責めているあたり、余計怪しいとも言える」

 エリーとマリーは、段々と気分が悪くなって来た。自分の妹が嘘つきの可能性が高く、それを否定できないのは辛かった。もし、リリーが嘘をついていたのだとしたら、無実なのに責められたマーシャルはどれほど傷ついただろう!今のマーシャルの振る舞いが、その傷によるものなのだろうと考えるのは容易かった。

「リリーに直接みんなで聞いてみましょうよ」とマリーは言った。それに対してビリーは言った。「待ちなさい、ただ聞くだけではあの子はどうとでも誤魔化すだろう。マーシャルを嘘つきに仕立てるほど、ロイ=ウェルに関する何かをリリーは隠そうとしている。普段よりも話すことには気を遣うだろう」

「じゃあ、どうしたら…?」マリーは途方に暮れて尋ねた。しばらくビリーは考え、やがて口を開いた「…行動させればいい」

「え?」エリーとマリーは言った。「行動って…?」

ビリーは答えた。「いいかい?言葉というものは、使い方次第で本心を隠せる、嘘をつくのに使うのにはもってこいな代物だ。けれど、行動は違う。そうだな…例えばお化け屋敷に行った際に、口では怖くないと言っても、なにか物音がしたりすると固まったり叫んだりするだろう?よほどの訓練を受けていない限り、行動に嘘はつけない」

「…でも、どうやって?」とマリーが言うと、横でずっと考えを巡らせていたエリーが「思いついた!」と言って勢いよく立ち上がった。マリーはびっくりして「きゃあ!」と叫んだ。そんなマリーにお構いなしで、エリーは「ねぇ、マリー」と質問をした。「なんで、梟頭はこっちに来て私達を殺そうとしたんだと思う?」

 段々と落ちついたマリーは考えてみて答えた。「マーシャルとか…リリーの他にもロイ=ウェルに選ばれる人間がいるかもしれないから?」マリーはそう呟いた。エリーは頷いた。「そうだと思う。あの日、書斎でマーシャルが、梟頭が名前のない女王に命令されて来たと言ってたって教えてくれたわよね。多分、彼女は私達が姉弟だということを誰かから…多分リリーに聞いて、私達一族が天敵じゃないかと警戒して、ロイ=ウェルに来ないようにしようと考えて、刺客を送ったんじゃないかしら。でね、この私達一族ならロイ=ウェルに導かれんじゃないかと言う推理を、だから私達もマーシャルみたいにロイ=ウェルに行こうと思うんだという決意と一緒にリリーに話すの。マーシャルの助けになりたいからだとか言うのも説得力があるかもしれない」

「話したらどうなるというの?」マリーは聞いた。エリーは答えた。「いいこと?リリーがマーシャルを嘘つきにしてまで、自分は名前のない女王と何の関係もないと主張したのは、本当は女王と密接に関係を持っていて、それがバレたくなかったからだという可能性が高いわ。リリーが女王に味方しているのだとしたら、当然女王にとって都合が良い展開になることを喜ぶはずよ。私達を殺したがっている女王のところへ、私達全員が自分から行こうとしていると知ったら、絶対にあの子は喜ぶわ。喜んだ時点で、まず間違いなくリリーは黒よ」

「素晴らしい思いつきだよ、エリー」ビリーは言った。「私から提案なんだが、それを話すのは、マーシャルが屋敷の物を開けて回る雨の日にしたらどうだろうか?そうすれば、リリーの反応がさらに分かりやすいだろう。それに…」ビリーは、エリーとマリーの片手ずつを握りながら言った。「マーシャルが一人でロイ=ウェルに行こうとするのを、私達は止めなくてはならない。エルフが心配な気持ちも分かるが、何の策も無しに一人で戦うには、ロイ=ウェルは危険すぎる…なにより、リリー含め私達は沢山マーシャルを傷つけてしまっている。謝ることも出来ずに永遠の別れなど、私は絶対に嫌だ」

 その気持ちは、エリーもマリーも同じだった。ビリー達三人は、絶対にリリーから真実を聞き出すことと、マーシャルを止めることを誓い合った。その誓いによるものか、ロイ=ウェルが呼んでいるからか、雨の日はすぐにやって来た。三人は話し合い、一旦マーシャルを探す方と、リリーに話をする方で別れ、後で合流することにした。話し合いの上、マーシャルはビリーが、リリーはエリー達が担当することになった。ビリーの方が屋敷に詳しいし、心許されている分、止めるのが上手くいきそうだったし、ビリーよりもエリー達の方が、リリーが舐めてかかりボロを出しやすいのでは、とエリーは考えたのだ。

 二手に別れた後、エリー達はリリーを見つけて、マーシャルがロイ=ウェルに行ける法則に気づいて、今屋敷の物を開けて回っていることを伝えた上で、自分たちの計画について話して聞かせた。

 エリー達の話を聞いたリリーは、心の中で非常に喜んだ。みんながロイ=ウェルに行こうとしている!女王陛下のところへ今日やっと連れて行けるかもしれない!女王陛下への忠誠心ゆえ、喜びは膨らみ続け、ついに我慢できずにリリーは両手をあげて叫んだ。「やったぁ!待っててください女王陛下!!」

 ハッ!とリリーは口を塞いだが、何の意味も無かった。リリーを見つめ、しばらくエリー達は何も言えなかった。やっぱりリリーは…!

 お互いに黙り込む三姉妹の耳が、足音を拾った。それは、廊下の窓を開け閉めしながら歩いていたマーシャルの足音だった。マーシャルにも、リリーの声は聞こえていた。マーシャルは、歩みを止めることなく点々と続く窓を開け閉めしながら歩き続け、やがてエリー達の横で立ち止まり、黙ったまま真っ直ぐにリリーを見つめた。マーシャルは、リリーが何か話すのを待っているようだった。リリーは何とか口をきいて、いつものように誤魔化そうとしたが、あまりにも弁解のしようがなく、何も話せなかった。それは、エリー達も同じだった。張り詰めた空気の中で、心だけが沢山話していた。何からマーシャルに話せば良い?そうだ、まず謝らないと、止めないと…!

 何も三姉妹が話せないようなのを見たマーシャルは、リリーの横を通り過ぎて次の窓に手を伸ばした。リリーより先に動けるようになったエリーとマリーは、マーシャルが窓を開けるのを止めようとしたが勝つことができず、逆に開けるのを手伝ってしまった。 ロイ=ウェルへと繋がる窓が開けられた。窓の先には、暗闇が広がっていた。それを見とめたマーシャルは、なんの躊躇いもなく窓から暗闇に飛び込んだ。エリーとマリーは呆然とそれを見送ったが、マーシャルの後を追うために、勇気を出して暗闇に飛び込んだ。       最後に残されたリリーは、これからのことを考えた。これで私含めて四人がロイ=ウェルへ導かれた。女王陛下の元へ、誤魔化しながら何とかみんなを連れていかないと…。リリーは先ほどの失態をうまく騙せるだろうかと不安に思いながらも、窓を閉めながら暗闇に飛び込んだ。また自分のせいで誰かがロイ=ウェルから来た人に襲われてほしくないと、リリーは思ったのだ。良心と忠誠心でぐちゃぐちゃになったまま、リリーは暗闇の中を三人を追いかけた。

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