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第二十章 扉を閉める時

ロイ=ウェル完結です!

マーシャル達、ビリーにエルキヴァード、エルフェルやスーやサー、名前のない女王達……みんな大好きです。

ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。

この作品が、少しでも皆さんの楽しみになっていたのなら、嬉しく思います。至らぬ点も多かったと思いますが、連載楽しかったです。また、何か思いついたら書く予定です。本当に、ありがとうございました!

 こうして、長きにわたる名前のない女王との戦いが終わった。名前のない女王が死んだと同時に、名前のない女王が作り出した配下達も死んだ為、敵での生き残りは誰もいなかった。

 マーシャルは、エルキヴァードがマリーと話しているのに気がついた。戦いを終えたマリーは、いつもと違って見えた。血の気が引いた顔は厳しく、大人びた顔になっていた。

「全部、リリーの手柄なの、エルキヴァード」とマリーは話していた。「リリーがいなかったら、きっと私達はあなた達が来るより前に全滅していました。名前のない女王や、配下達は私達を次々殺して行ったけど、リリーは勝つことを諦めずに剣を振り続けました。リリーは、名前のない女王が持っていた杖を、彼女の隙をついて叩き斬ってもくれたんです。名前のない女王が力を使えなくなったことで、どれほどみんなが助かったことか!けれど、やはり加護のない中での戦いは厳しく、たくさんの負傷者や死者が出てしまいました。リリーは必死になって今、治療を手伝ってます」

 マーシャル達は、スーやサーと一緒になって負傷者達の手当てをしているリリーを見つけた。リリーは、必死にこれ以上死者を出すまいとしていた。

「僕たちも動こう、勝つためとはいえ、圧倒的不利な状況で戦わせてしまって、申し訳ない」と、エルキヴァードは言った。

 戦争に勝利をもたらした後、マーシャル達人間ができることは、ロイ=ウェルの民達より少なかった。せいぜい、治癒能力を持つ生き物達が治療をしやすいように手伝ったり、包帯を巻いたりぐらいしか出来なかった。それでも、マーシャル達は動いて回った。中でもリリーの働きは大きかった。リリーは、これまでマーシャルが(エリーやマリーも)見たことがないほど良い顔になっていた。マーシャルへの嫉妬心や、名前のない女王への忠誠心を無くしたリリーは、本来のリリーに戻ったのである(もっとも、口や性格は元来良くないため、今もモタモタしている者にこの役立たず!など酷いことは言っている)。エルキヴァードは約束通り、ラススヴェートとして犠牲となることで、リリーを救ったのである。

「リリーは、エルキヴァードがしてくれたことを知ってるの?」と、マーシャルはエリーに尋ねた。「エルキヴァードが名前のない女王から、どうリリーを解放したのか?」

「しぃ!何も伝えてないわ」とエリーは言った。

「リリーに,話すべきじゃないかな?」とマーシャルは言ったが、エリーは反対した。「そんなのは、ダメよ。とても、むごいことだわ。それに、エルキヴァードがそんなこと望んでいると思う?」

 この件は、これで終わりになった。リリーを褒めているエルキヴァードを見たマーシャルは、もう終わりで良いと思い、エリーに頷いてみせた。

 その夜は、そのまま野営を張ることとなった。名前のない女王が死んだことは、すぐに国中に広められ、戦いに参加していなかった者達が、感謝を込めて沢山のご馳走を持って来てくれた。

 ロイ=ウェルの歴史史上、最大の宴が始まった。宴では、沢山の驚きが共有された。中でも、エルキヴァードがラススヴェートの実の姿で、過去に死んだと思われていたロイ=ウェルが最初に選んだ子であることは、一同に衝撃を与えた。もう自分はラススヴェートではなく、今までのように加護などの力がないことを、エルキヴァードは申し訳無さそうに謝ったが、誰も責めることなく、エルキヴァードが生きてことを喜んだ。宴は長く続き、マーシャル達やロイ=ウェルの民達は、勝利を笑い、犠牲を泣き続けた。4日後に、宴は終わりとなった。

 読者の皆さんはお気づきに違いないが、この物語はもうすぐ終わる。宴が終わると、ロイ=ウェルの民達は、マーシャル達をロイ=ウェルの扉の前まで送ってくれた。マーシャル達五人の人間がもたらした平和は、ロイ=ウェルの民達が守り抜くと約束してくれた。女王は居なくなったが、元々ロイ=ウェルは王制では無かった為、王は立てずに様々な種族が支え合って生きる、昔の生き方をしていく予定らしい。

 王を立てないのには、適任者が居ないということもあった。ロイ=ウェルの民達は、平和をもたらしてくれたマーシャル達人間を王としようと、宴の際に提案したが、マーシャル達は「そろそろ家に帰らないと」と、丁寧に辞退したのだ。辞退したのは、エルキヴァードも同じだった。

「死んで生き返ってから、国を持たないとはいえ、ずっと王だったからなぁ。王様以外をやってみたい。身に余るような力もなくなったし」そう言うエルキヴァードに、誰も意を唱えなかった。あまりに彼の人生は、ロイ=ウェルに振り回され過ぎている。もう解放されるべきだと、みんなが感じていた。

 ふと、マーシャルは思った。そういえば、エルキヴァードは、これからどうするんだろうか。マーシャルは、宴の中で、エルキヴァードに小声で聞いてみた。

「エルキヴァード、君はこれからどうするつもりなんだい?良かったら一緒に人間界に戻らないか?」

 それを聞いたエルキヴァードは首を振って答えた。「いや、戻る気はないよ。僕が死んだのは、ずっとずっと昔だ。いくらロイ=ウェルの時の流れ方が人間界と違っているとしても、もうそっちに、僕が知ってる世界はない。家族や友達も死んだだろうし…寂しい世界しか待ってないんだ。僕は、ロイ=ウェルに残るよ。こっちの方が、友達も沢山いるからね。エルフェルが、自分の両親が僕を殺したことを償いたくて、面倒を見させてくれって言ってくれててさ。全然気にして欲しくないんだけど、純粋にいい奴で一緒にいたいから、お世話になろうかと思ってる」

 だから、今エルキヴァードは、マーシャル達の方ではなく、ロイ=ウェルの民達の方に立っていた。エルキヴァードは微笑んで、マーシャル達に手を伸ばした。「ありがとう、君達が来てくれて嬉しかった」

 マーシャル達は、一人一人エルキヴァードと握手を交わした。涙が止まらず、返事をすることは出来なかった。だが、きっとエルキヴァードには通じているに違いなかった。エルキヴァードは、一人一人違った強さで握手を返してみせた。人間に戻ろうが、力が無かろうが、彼はやはり他者を愛してやまない王だった。

 エルフェルやスーやサーが、扉を開けてくれた。マーシャル達は、扉の中に入り扉を閉めた。マーシャル達は、裾をつまんだ一列になって暗闇を進み、やがて扉にたどり着いた。先頭を歩いていたマーシャルは、その扉を開けた。

 次の瞬間、四人は一斉に、窓から家の中に転がり落ちた。彼らは血の剣を持った伝説の戦士ではなく、元のエリー、マリー、リリー、マーシャルに戻ったのだ。しかも今は、マーシャルがロイ=ウェルに行こうと屋敷中の開けられるものを開けて回っていたのと同じ日、同じ時間だった。屋敷中に響き回った四人が落ちた音を聞きつけたビリーが駆けつけて、四人に聞いた。「ああ、マーシャルを止められたんだな!仲直りは出来たのかい?」

 四人は、何が今まであったのかを、ビリーに話そうとした。ただ、四人一斉に話すため、ビリーは落ち着いて話を聞かせて欲しいと、書斎に四人を連れて行った。四人は、自分達が体験したこと、仲直りしたことを、風変わりな父に全て話した。話を聞き終えたビリーは、こう締め括った。

「そうか、全て終わったのか。もうロイ=ウェルに行くことは無いだろうな。平和が戻り、これからは人間が必要な事態にもならないだろう。もうロイ=ウェルが誰かを選んで導くこともないのなら、私の代で開けたら閉めるの掟は終わりかな……いや、それはやめておこう。ロイ=ウェルがいつ人間をまた必要とするか分からないからな。用心に越したことはない。いつでも、ロイ=ウェルの導きに応えられるようにしておこう」

 というわけで、四人の冒険はこれでおしまい。また、ロイ=ウェルが導かなければのお話ですが。

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