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PROJECT "C"  作者: 観測者
-起- 混沌の産声
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記録5 迫る凶刃

 突如として、背後から話しかけられたゼノフレア。だが、それは異常なことだ。気配に敏感なゼノフレアが背後を取られることなど滅多にない。そう、これで2回目だ。…だが、声色や魔力・気配からディアでないことはすぐに分かった。


(何だ、こいつの魔力は…!?体を蝕むような、この不気味な感覚は―)

「お前が、次の守護神(ガーディアン)か。確かに、今までの奴らに比べれば骨があるようだな」

「…誰だお前は」


すぐに攻撃してくる様子ではないことから、ゼノフレアはゆっくりと背後に振り返った。

 そこにいたのは、ゼノフレアと同じくらいの背丈をした男だった。…が、その体から感じる魔力や気配から、彼が只者でないことは瞬時に分からされた。それだけではない。背後を取られた時から、冷や汗が止まらない。


(…真っ向から戦えば命は危うい。どうするか―)


最大限に警戒しつつ、奴の様子を見る。…だが、明確な敵意は感じない。現に、奴はゼノフレアに襲いかからず何故か話しかけてくる。


「誰、か。その様子じゃ、まだ目覚めてないみたいだな」

「……何の話だ」

「まぁ良い。…俺の名はセカイ。そうだな、お前のモデルとなった人間、とでも言おうか」

「何を言っている…?それに、その魔力量と気配。只の人間じゃないだろう」

「それはお互いそうじゃないか。今言ったのも、そのまんまの意味だ」

「…俺の魔力の総量に気付いているのか。これでも、今までバレたことは無かったんだがな」


 人ならざる魔力を持っているのはゼノフレアも同様だ。だが、それは人間社会で暮らす上では支障をきたす。あまりにも膨大な魔力は、時に人体に影響を及ぼす上、これだけの魔力を持っている人間がいるとなれば騒ぎになるのは当然のことだからだ。

 そして、その隠蔽は今まで誰にもバレたことがない。今までの様子からして、ディアすら未だ気付いていない。


(それを、こいつは一瞬で見破った。ホント、何者だ…?)


「当たり前だ。お前は、俺だからな」

「……さっきから訳分からんことばっかり言いやがって。目的は何だ。ただ俺に逢いに来たわけじゃないだろう―イノベーター」


その言葉を発すると、セカイの気配がより一層重くのしかかった。気を抜けばそのまま押し潰されてしまいそうな重圧。息をするのすら苦しい。


「…何故分かった?」

「確証は無かったんだがな。今のでそうだと分かったよ。…簡単な話だ。以前イノベーターに襲われた時、奴らは俺を狙っていた。世界的には只の旅人の俺を、だ。そして今、またもや俺を狙う存在が現れた。お前が俺を殺そうとしているかは知らんが、俺との接触を試みてる時点で既に―答えだ」


剣を抜くゼノフレア。イノベーターと分かった以上、会話は不要だ。

 が、勝てる見込みはほぼ零に近い。背後を取られた事から、セカイはゼノフレアの検知を抜ける。そして突如現れたことから、その速度も保証されている。加えて…


(この魔力と気配だ。上位魔獣、いやそれ以上を凌駕している―)


「ほう、俺と闘う(やる)気か。"只の旅人"風情で?」

「イノベーターを生かしておく理由は無い」

「口だけは達者だな。…だが悪いな。俺は()()お前を殺す気はない。また逢うとしよう。その時はせめて、目覚めておいてくれよ?」

「っ、待て!!」


何かを察知したゼノフレア。セカイはここから退こうとしている。イノベーターの情報を握れるかもしれない絶好の機会。逃す訳にはいかない。

 だが―


「っ!?」

「……まぁ、お前が死ななければ、の話だがな」


上空から何かが降ってくる。そしてそれは、ゼノフレア目掛けて突っ込んで来る。


「この気配…!!」


素早くその場から退き、直撃を避ける。それは地面にぶつかり、激しく土煙を舞わせた。


(…セカイは―逃げたか)


土煙の中から現れたのは、剣を片手に持つ、1人の女だった。だがその気配と魔力は、すぐに彼女が人間では無いことを示した。


「お前が、この地体の英霊―ギルノドゥアか」


 そう、彼女こそがゼノフレア達の探していた英霊本人だ。その実力は先のディアの通り、上位魔獣すらも屠る。セカイ程の重圧は感じないがそれでも、彼女から感じる殺意は、充分過ぎるほどにゼノフレアにのしかかっている。


(目に生気を感じない…。ディアから聞いた話からしても、彼女がイノベーターに協力するようなことは無いはず。何かしら裏があるんだろう。だが今は―)


 瞬間、ギルノドゥアの姿が視界から消える。


「っ!!」


背後から迫る斬撃。すんでのところで受け止め、そのまま反撃する。が、その刃は空を切り、ギルノドゥアの更なる追撃が襲いかかる。


(とんでもなく速いな。俺と同等か、それ以上…!)


英霊の中でも相当の強さを持つ彼女に、只者では無いとはいえ人間1人で挑むのはあまりにも無謀だ。だが、単純な身体能力による勝負ならまだ対抗出来うる。

 英霊は人間をモデルに造られている。その証拠として、世界中に存在する英霊の中で、人の形をしていない者は只の1人もいない。


(人間と同じなら、僅かな行動の出始めから、ある程度は予測できる)


それでも普通の人間であれば、既に細切れにされていただろう。彼女の動きは非常に素早い。その速さに対応できる動体視力と反射神経がなくては意味が無い。

 ゼノフレアの肉体は、凡そ人の範疇を超えている。単純な身体能力だけでなく、その研ぎ澄まされた五感と今までの戦闘経験から生まれる彼の実力は、時に英霊を超える。況して、ギルノドゥアのように武器を用いる近接型の場合、それはゼノフレアの得意分野でしかない。


「意思の疎通は…流石に無理そうだな。こうなったら、一旦眠ってもらうしかないか」


 ギルノドゥアからは、2つの魔力の気配を感じる。1つは、言うまでもなく彼女自身の魔力だ。そしてもう1つの正体は、つい先刻まで目の前にいた。


(操られている、と考えるべきだろうな。洗脳やそこらの類だろう。…厄介だ)


 魔法には幾つか種類があり、洗脳や魅了といったものは精神魔法に分類される。高度な技術である為使い手も少ないく効果を発揮するのも珍しいが、それ故に精神魔法を解除するのは非常に難しい。


(普通、ある程度の実力の者には効かないんだがな。あいつからしたら、ギルノドゥアも格下でしかないってことか)


一般的に、精神魔法は自身より格上の存在には効かない。その道に精通した者であれば可能であるが、それでもその確率は非常に低く、効果も薄い。

 上位魔獣をも凌駕するギルノドゥア。そんな彼女を完全に術中に嵌めている。それが具体的に何の精神魔法なのかは分からないが、少なからず彼女を救うのは困難極まる、というのは確かだろう。


(カイリなら精神魔法も解除出来るが…、カイリ達は無事か?)


 カイリにはディアが付いているが故相当のことがなければ大丈夫だろうが、セカイのことを考えると危険がないとは言いきれない。ギルノドゥアと相対したのがゼノフレアであったのがせめてもの救いだろう。ディアの実力は知らないが、カイリもいるとなれば彼女を守りながら戦わなくてはいけないかった。どれだけの実力者だろうと、他者を守りながらでは上手く立ち回れないのが常だ。

 だが決して、ゼノフレアだからこそ問題がないというわけでもない。現状かなり追い詰められている上、彼女はまだ"力"を使っていない。


「っ、考えてた傍から来るか…!」


ギルノドゥアの足元が突然凍り付き、それはゼノフレアの元まで及ぶ。


「っ!」


反射的に地面を蹴る。ゼノフレアがいた地点は既に完全に凍り付き、地面だけでなく、()()()()()()が凍結していた。


(一瞬でも遅かったら俺ごと凍り付いていたな…。この能力、聞いた通り厄介そうだ)


 英霊にはそれぞれ、魔法やそれとは違った能力が備わっている。その力は英霊毎に異なり、一般的に全く同じ能力をもつ英霊が複数存在するといったことはない。似通った能力であっても、効果や対象が違ったりなど、必ず差異がある。

 英霊の能力は、魔法と違い魔力を消費しない為、基本的に使用不可になるということは無い。…が、弱点が全くないということも勿論なく、先ず、発動する度に英霊自信に負荷がかかるという点。具体的な負荷の内容は英霊によって違い、その負荷によって死に至ることは無いが、それでも肉体的・精神的にかなりの負傷を伴い、英霊達は自分で能力の限界値を定めている。

 そしてもう1つ。その能力には様々な条件やルールが存在するということ。つまり、どんな状況下や相手にも有効と言う訳では無い―ということだ。その条件やルールも又、英霊毎に決まっており、これを見極めるのが英霊と戦う際の勝利の鍵となる。


 ゼノフレアは、既にギルノドゥアの故人であるディアから彼女の能力を聞いている。


『ギルノドゥアの能力は"凍結"じゃ。森羅万象、全てが凍結の対象。しかも、従来の氷雪系の魔法と違い、あやつの能力は()()()()()()を凍り付かせる。基本的に防ぐことは出来ぬ。じゃが、避けることは出来るし、範囲もそこまで広くは無い。そして、あやつ自身は、その凍結を操れる為、実質無効じゃな』


対象を凍り付かせる魔法等は存在するが、それは魔力を術式により過冷却にし、それを相手にぶつけることで凍り付かせている。故に、同じ魔法で相殺することが出来る上、真逆とも言える炎熱系の魔法であれば融解も可能だ。


(だが、ギルノドゥアの能力は対象を直接凍り付ける。故に魔法での相殺は疎か、凍結により魔力をも効果を失う為、溶かすことも不可能。当たれば詰みだな。……だが、真に恐ろしいのはそこじゃない。彼女の能力の真骨頂は―)


その応用力の高さにある。先の攻撃のように、空間そのものを凍結させることで、攻撃手段としてだけでなく防御手段としても使える。発動した魔法ですら、そのものを凍り付かせてしまえば機能を失う。それに、空間を凍り付かせるということは、それを足場にすることすら出来る。そして、敵手に当てればその時点でほぼ勝ちが確定する。強力な能力だ。

 だが、それでもやはり弱点は存在する。彼女の場合、発動の際の負荷は"魔力の大幅消費"に当てられており、連発は難しいという点。ギルノドゥアも又、相当の魔力を持つが、先の発動でその変化が分かる程度には魔力が消費されていた。具体的には分からないものの、後数発が限度といったところだろう。

 他にも弱点は存在しており、まず凍結そのものの速度はそこまで早くないという点がまずある。人間からしてみれば十分すぎる速度だが、英霊やゼノフレアであれば発動の際を見極められれば避けることは容易だ。そして、その凍結時間もそこまで長くは無いということもある。加えて、彼女よりも魔力や実力が上回っていた場合、その凍結時間は更に短くなる。故に、自身が凍結されたからと言って彼女自身の勝利が確定する訳では無い。仲間がいた場合や格上の場合、凍結後の彼女の追撃を凌げる可能性があるからだ。最後の弱点として、発動対象が狭いかつ1つのみという点も、先の弱点を加速させている。

 だが、現状のゼノフレアであれば一度でも喰らえば終わりだろう。凍結の時間はともかく、一瞬でも隙を見せれば追撃で方が付く。あの速度と的確な狙いのギルノドゥアであれば、その程度であれば簡単だろう。


(能力自体も厄介極まりないが、それ以上に―強い!)


 能力は強力なものの、決して扱いやすい能力ではない。それでも彼女が、英霊の中でも上位に位置し、上位魔獣とも渡り合えるのは、ギルノドゥア自身が強いからだ。素早い斬撃に加え、能力を発動してから魔法も駆使して来ているが、そのどれもが高威力かつ高精度。発動までのキレが異常に鋭く、剣の攻撃も相まって凌ぐので精一杯だ。


(能力だけじゃない。対峙して分かったが、ギルノドゥアは剣術に長けている。加えてこの身体能力。戦闘経験も多いだろう。…そりゃあ、強いわけだ)


 しかし、このままではいずれ攻め負ける。英霊は人間に比べて体力も多い。近接戦闘ではまだこちらから攻めることも可能だが、そこに付随している能力と魔法による援護が、こちらの攻め手を削ってくる。カイリ達と合流出来ればまだ勝機は見いだせるだろうが、現状のままでは勝ち目は薄い。それに、殺すのは出来ない。あくまで彼女の意識を奪うのがもくてきだ。


「…仕方ない。こちらも使うとしようか―魔力を」

重要人物

ゼノフレア・ガーランド

カイリ・ルーインズ

ディアブロス・████

ギルノドゥア・フィヨルティン


セカイ(正体不明)

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