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PROJECT "C"  作者: 観測者
-起- 混沌の産声
4/4

記録3 落とされた火蓋

 突如として現れた謎の集団によって襲撃を受けたゼノフレア達。爆発と共に一直線に突っ込んできた男の斬撃を剣で受け止め、鍔迫り合いになる。


「こいつらが…」


その男の服には、先程見たばかりの紋章が縫い付けられていた。

 一瞬にして、奴らは倒さねばならないと理解した。この状況で逃げれるとは考えていない。倒さなくては、こちらが殺されるだろう。何故狙われたのか、何故このタイミングなのか、などと疑問は残るものの、今は目の前の"脅威"に対処しなくてはならない。


 剣を押し返し、相手の腹に蹴りを喰らわせる。


「ディア、カイリを任せた」

「っ!?待て―」


ディアの静止も虚しく、ゼノフレアは目の前の敵に斬り掛かる。だが、それと同時に周りに控えていた奴らがゼノフレアに刃を振るう。


「だろうな」


突如、ゼノフレアの姿が消える。


「な―」

「…相変わらずね」


地面を蹴り、上空に飛んだゼノフレア。そのまま落下の勢いを利用し、地面を叩きつける。その衝撃でカイリ達含む全員が姿勢を崩した。その隙を見逃さず、無防備になった敵3人を一瞬にして斬り刻む。


「人間の速さではない…。あやつは一体―」

「歴とした人間よ。人間離れした、ね」


同時に迫る3人を相手に斬撃を受け流し、背後から迫る炎魔法を的確に躱す。魔法は物理で相殺することは出来ない。

 

「威力はあるようだが…遅い」


魔法が着弾した地点は大きく抉れている。当たれば致命傷だっただろう。だが、この程度のスピードではゼノフレアを捉えることは出来ない。

 そして、魔法は威力を上げれば上げるほど、発動後の隙も生じる。その隙を埋めるのが普通だが、躱すと想定していなかったのか、魔法を放った男は無防備だった。その体に鋭い一撃を放つ。


(あと2人―)


ようやくゼノフレアが普通の人間でないことを悟ったのか、残る2人は前の4人に比べて随分慎重だ。無防備に間合いを詰めてこない。2人共剣を手にしており、魔力を練っている様子でもないことから魔法は使わないと見られる。

 膠着状態。お互い、自身の間合いではないことから安直に攻める事が出来ない。―だが、()はゼノフレアだけでは無い。


"焔弾(ほむらだま)"


敢えて手を出さずにいたカイリが魔法を放つ。あれだけの速度で動くゼノフレアがいては、彼に魔法が当たる可能性があったからだ。それに相手の力量も分からぬ以上、魔法しか攻撃手段がないと分かれば真っ先に襲われる可能性があった。


 意識外からの攻撃。奴らの反応が遅れる。


「!」


それと同時に、ディアも又、前線に出た。ゼノフレアの実力も分からぬ状況下では、英霊の自分では彼を巻き込む可能性がある。それにカイリを任されていた以上、下手に動く訳にもいかない。

 だがゼノフレアの力の確証、及び奴らの意識が完全に外れた今であれば己が前に出ても問題無い。


「合わせろ!」

「―!わかった」


ディアの言葉と動きから、彼女の意図を察するゼノフレア。依然、奴らはカイリの放った魔法に意識が向いている。

 その瞬間、奴らを囲むように後ろに回り込むディア。脚に魔力を込め、思いっ切り蹴りかかる。それと同時にゼノフレアはディアとは反対の方向から斬りかかった。


「っ!!」


それらの攻撃は防がれたものの、奴らは2人のいない方向に吹き飛ぶ。だが、そこにはカイリの放った魔法がある。


「しまっ―」


炎と男が触れる。瞬間、炎は一気に燃え広がり、爆ぜた。勿論、そんなものを喰らえば即死は免れない。ゼノフレア達を襲った集団はこれにて全滅した。



「っと。もうちょい威力抑えてくれ。俺らじゃなきゃ巻き込まれてたぞ」


魔力の爆発を感じ取り、瞬間的に距離を取ったゼノフレアとディア。事前知識のあるゼノフレアと違って、ディアはカイリの魔法の威力を知らない。下手をすれば焼かれていた。


「よく避けられたな、ディア」

「発動の瞬間を見ていたからな、大方の予想はついていた。じゃが、詠唱なしかつ人間の放つ魔法でこの威力とは…」

「ごめん、屋敷のことまでは気にしてられなかった」


カイリの放った魔法により、屋敷に火が回り始めている。直前の爆発でもかなりの損傷が生じていた。


「構わぬ。屋敷などいくらでも立て直せば良い」

「取り敢えずどこかに退くぞ。追っ手が来ないとも限らないし、この炎を見て魔獣達も集まってくる」

「確かにそうね。…でもディア、ここら辺で安全な場所ってあるの?」

「先刻も話したが、この地体には廃墟が幾つか存在する。だいぶ古びてはいるが、建物も残っていた筈じゃ」

「決まりだな」


………

………

既に日は沈み、辺りが漆黒に呑まれた頃。ゼノフレア達はディアの案内により、廃墟に残された1つの民家に身を隠していた。ろくに周りも見えない状況だったが、流石は領主。位置関係を正確に把握しており、彼らは迷うことなく廃墟に辿り着けた。


「…それで、結局奴らの目的は何なんだ?ここまで巻き込まれた以上、見て見ぬふりする訳にもいかない」

「そうじゃの。如何せんタイミングが良すぎるのが気にかかるが、今は疑ってもどうしようもない。……奴らの名前は、イノベーター。世界の崩壊を望む―端的に言えば、世界的テロ組織じゃ。妾が造られるよりも前から存在していたらしいが、その頃と比べても規模や脅威さは大きくなっておるようじゃ」

「世界の、崩壊?そんなこと望んでどうするのよ。そいつらだって結局死ぬんじゃない」

「そういった奴らは、別に自分が生きることが目的じゃないんだ。世界に対する復讐、とでも言おうか。とにかく、世界を嫌う者の集まりと考えれば良い。そういった組織や集団なら別に珍しくもない。だが、イノベーターに関しては全くだ」

「奴らは証拠を消すのが異様に上手い。長年の戦いで得られた情報は、今言った奴らの行動理念とこの勲章のみ。じゃが、奴らの仕業と思われる所業の数々は今までもあったのじゃよ。地体における異常気象、魔獣の大量発生、原因不明の大量死、虐殺、かつては国が1つ滅んだこともあったらしい」

「…いまいち噛み合わないな。世界を崩壊させると言う割には、1つ1つの事柄の規模は全て地体1つに収まっている。何が理由でそんなことを?」

「世界を混沌に陥れる―そんな感じに見えるわね。確かに、とてもではないけれど世界を壊すようには見えないわ」

「それについては妾らも分かっておらぬ。なにか別の目的があるのか、それとも全て計画の一端なのか」

「…それ以前に、奴らはどうやって世界を壊す気だ?」

「それについても、明確には分かっておらぬ。……じゃが、1つ、説はあるのじゃ」

「説?」

「…大惨禍カタストロフィ―、その人為的再発じゃ」

「「!?」」


 大惨禍カタストロフィ―かつてコスモスを襲った空前絶後の大災害。世界中の魔力濃度が異常なまでに上昇し、それにより世界の魔力均衡が崩壊。その負荷により大地震、大津波、大竜巻、大噴火、ありとあらゆる自然災害が同時に多発的に発生。また、世界的超高濃度の魔力に衝撃が加わったことにより、空気中の魔力が爆発。世界中は一瞬にして魔力爆発に呑み込まれ、その後は見る影もない程に破壊し尽くされていたという。

 だが、それの発生原因は未だ不明。当時を生き残った生物及び人間や英霊・式神はほぼおらず、数少ない生き残りもそのほとんどが寿命や戦いによって命を落としている。故に、カタストロフィについて残された情報は、かつてのことを記録した書物のみ。しかし、そのどれにも、カタストロフィの直接的原因となる事柄は明記されていなかった。

 世界中の魔力濃度が一瞬にして上昇する、ということは自然に起こることでは決してなく、その証拠としてカタストロフィ発生以降そのような事態になったことは歴史上一度もない。つまり、魔力濃度の指数的上昇及び魔力均衡の崩壊には、なにか原因があった筈なのだ。


「あんなことを人為的に起こすですって!?」

「妾達の仮説に過ぎぬがな。じゃが、世界を滅ぼすという大層な目的を達成するには、これくらいしか検討がつかぬ」

「確かに、もしもカタストロフィを再発出来れば、世界は文字通り崩壊する。…だが、そんなことが本当に可能なのか?」

「可能かもしれぬし、不可能かもしれぬ。お主らも知っておろう?カタストロフィの、()()()()()()()秘匿された、情報の少なさは。…しかし、もしイノベーターがあの時代からある組織だとしたら、カタストロフィの根本的原因について知っている可能性もある。そしてそれが、人為的に起こすことが出来るのであれば―」

「…成程」


 ゼノフレア達は勿論のこと、ディアでもカタストロフィを経験したことはない。だが、残されている書物の情報から、それがどれだけ恐ろしい災害だったのかは誰もが知っている。カタストロフィが再発すれば、今ある人間の文明は全て滅ぶ。それ以上に、世界自体が滅ぶだろう。


「……これはいよいよ、引けなくなってきたな」

「…そうね。それがもっと先の未来だとしても、世界の崩壊を放っておくなんて出来ないわ」

「…?お主ら、まさか―」

「奴らを止める。たかが人間2人でどうこう出来る話じゃないのは百も承知だが、その中で何か有益な情報が得られるかもしれない。それを未来に繋げれば、いつかは奴らにも対抗出来る筈だ。俺だって、滅びゆく世界を見て見ぬふりは出来ないさ」

「……確かにな。しかし、奴らの戦いに介入するということは即ち、いつ命を落としてもおかしくないということ。お主らは人間としては明らかに強力な存在だというのは、先の戦いで理解した。じゃが、奴らの強さは未知数。その覚悟は―あるのじゃろうな?」

「えぇ。元々、死と隣り合わせの旅をしてるしね」

「そうだな。…それに、先の戦闘で少し気になったことがある」

「何かあった?」

「奴らの矛先が、常に俺に向いていたことだ。確かに俺が意識を向けさせたというのはあるが、それでも奴らはカイリ達に対して一度も攻撃を加えようとしていない」

「―!」

「確かに…?」

「つまり、奴らの狙いは俺だった可能性が高い。そうともなれば、俺は逃げられないと考えた方が良いだろうな。…どの道、俺は戦わなくてはいけない」


狙いがもし、本当にゼノフレアだったのであれば奴らはまた彼を襲いに来るだろう。なら、根本を潰してしまえば良い。無論、この道が地獄であることは容易に想像できる。


「…分かった。お主らも、共に闘おう。滅びゆす世界を救うために―」


 こうして、闘いの火蓋は切って落とされた。彼らは、世界の存続を掴み取れるのか。

 

 

 だが、忘れてはならない。世界は常に残酷であると―

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