4.地域清掃活動-1
今日は学校主催の地域清掃活動の日だ。
男子たちはほとんどが興奮している、だってこれで授業がなくなるから。
一方、女子たちは冷静に、男子たちを「進化がまだ不完全な原始人?」という目で見ているだけだった。
先生は生徒たちにゴミ箱、ほうき、トング、手袋などの掃除用具を持たせて、学校近くの「露之草公園」――今回の清掃活動の場所へと向かう。
「みなさん、こちらに注目してください。」
目的地に着くと、学務主任が公園のベンチに立ち、まるで拡声器のような形をしたマイクを持ち、事前の説明を始めた。
「今日は学校主催の地域清掃活動の日です。地域の方々への感謝の気持ちを込めて……」
「みなさん、掃除は真剣な活動ですから、ふざけないようにお願いします……」
僕の左側に立っている龍之介が少し不満げに小声で言った。
「先生、まだ話すのかよ……」
「『楓葉高校』の生徒として、みなさんには優れた資質が求められます……」
「覚えておいてください、制服を着ているとき、あなたたちは外で本校を代表していることになります……」
左後ろにいる佐倉陽葵もつい文句をこぼす。
「遅すぎー」
「だから、私はあなたたちの学務主任として……」
「本校の生徒について悪い噂を耳にすることは絶対に避けたい……」
「それから……」
「さらに……」
「みなさん……」
(あぁ、眠い……寝ちゃいそう…)
昨日の夜、深夜アニメの更新を待って徹夜してしまい、全然寝ていなかった。
そして朝から学務主任の説明、これがもう催眠みたいで……
もう無理だ、少しだけ目を閉じてもいいよね。
……
……
……
「……白河!」
(……?)
「おお、悠也本当に寝てる!」
(…誰が呼んでるんだ?)
「悠ちゃん、立ったまま寝てるなんて、すごい!」
目を開けたとき、僕は龍之介、陽葵、そして氷室同学の三人に囲まれていた。龍之介は指を一本出して、どうやら僕の目をつつこうとしているみたいだった。
「……事前説明、もう終わったの?」
「とっくに終わってるよ……ある意味、君もすごいよね、本当に寝ちゃうなんて……」
氷室同学は驚いた顔をして、手の甲で僕の額を軽く叩いた。
「じゃあ、次は何をするの?」
寝起きで、頭がまだぼんやりしている。
「今から先生のところで並んで、くじ引きで自分の担当を決めるんだ。」
「くじ引きで決めるんだ…みんな一緒の仕事になればいいな。」
「それは難しいかもね、仕事の種類結構多いから。」
(掃除やゴミ拾いぐらいじゃないか?他に何を分ける必要があるんだ?)
「二人とも、早くして! 小凜! 悠ちゃん!」
「見てて、勇者の剣だ!」
いつの間にか、陽葵と龍之介はすでに列の最後に並んでいて、龍之介は地面から拾ってきたと思われる木の枝を振り回していた。
「行こう、氷室同学。」
僕は隣に立っている氷室同学に振り返って言った。
「うん。」
氷室同学はうなずいて、僕たちは一緒に陽葵と龍之介の方へ歩いていった。
人数は少し多かったけど、並んでいる列はすぐに進んで、あっという間に僕たちの番が来た。
くじ引きを担当していたのは桐原先生、僕たちの担任であり、国語の先生でもある。
桐原先生は優しい性格と若さもあって、学生たちにとても人気がある。
「おや、お前たち、うちのクラスの子たちね、早くくじを引きに来て。」
桐原先生は手を振りながら僕たちに招きかけた。
「じゃあ、僕から始めよう!」
龍之介が自ら進んで一番にくじを引くことにした。
「勇者の剣の力を借りれば、きっと良い役割を引けるはずだ!」
龍之介は手にした木の枝を真剣な目で見つめ、何かを呟きながら口元を動かしていた。
「龍之介、なんか変だよ。」
陽葵は目をぱちぱちとさせながら、少し心配そうに言った。
「その通り、絶対に白河に影響されたんだ。」
氷室同学は腕を組みながら、確信を持ってうなずいた。
「ちょっと待ってよ、僕何もしてないって!」
僕はただ龍之介に最近話題になっている異世界アニメを推薦しただけで、まさか彼がこんな風に物語の主人公みたいな真似をするとは思わなかった。
龍之介はくじ引きの箱から紙を慎重に選んで、
「これだ!―――」
と、紙を引き抜いた。
「誰に話しかけてるのさ、くじ引き箱は『ピカピカ』なんて言わないよ。」
「龍之介、何が書いてある?早く開けて!」
みんなの視線が集まり、龍之介はゆっくりと紙を広げてみた。
「……拾う枝……?」
「龍之介君、君は大当たりを引いたね!」
桐原先生は両手を胸の前で重ね、興奮した様子で言った。
「え?これが大当たりなの?」
「そうだよ!龍之介君にぴったりの『勇者』にふさわしい仕事だよ!」
桐原先生は優しく微笑んだ。
「僕、勇者なのか?」
龍之介は少し戸惑っている様子だった。
「もちろん!だって公園の草地には、主人を失った『勇者の剣』がたくさん散らばっているから、龍之介君にはそれを全部拾い集めて、いや、取り戻してほしいんだ!」
「これが勇者の剣だって…仕方ない、任せておいて!」
龍之介は異世界アニメのテーマソングを口ずさみながら、木の枝を振り回して…勇者の剣を手にして出発した。
その後、僕と陽葵、氷室同学の三人は、ただただ呆然と立ち尽くしていた。
(桐原先生…子どもをうまく丸め込むのがうますぎる…)
(いや…龍之介が簡単に騙されているだけだ。)
僕は心の中でうなずいた。