1.なぜか、クラスのギャルは私にだけ厳しい?
僕の名前は白河悠也。
一見すると、なんだか明るくて爽やかな男の子っぽい名前だけど、実際はその正反対。
僕は、根っからのオタクだ。
趣味はラノベと漫画、暇さえあればアニメを観る……そんな典型的なオタク。
見た目もパッとしないし、人の目を見るのが苦手で、前髪が目にかかるくらい伸ばしている。
体型は太ってはいないけど、逆にちょっと痩せすぎな感じで、身長も低め。
とにかく目立たない存在だ。
もちろん女子から好かれるわけもなく、今まで手を繋いだ異性なんて、母さんか妹くらいのものだ。
――そんな僕だけど、高校に進学したことで、人生が大きく動き始めたんだ。
「遅刻だなぁ……」
すでに二時間目の授業も終わった頃、僕はのんびりと学校に足を踏み入れた。
「よっ!悠也!」
廊下で、龍之介が笑いながら僕の肩をバンっと叩く。
「おはよう。」
僕は小さく頷いて応えた。
目の前にいる背の高い男子、彼の名前は龍之介。
黒くてさっぱりした短髪、整った顔立ちで、女子からの人気もかなり高い。
性格も明るくてフレンドリー、しかもバスケ部に所属している。
――まるで少年漫画の主人公みたいなやつだ。
そんなイケメンが僕と友達だなんて……いまだに信じられない。
「悠也、どうした?なんかボーっとしてたぞ?」
「えっ?あ、あぁ!ご、ごめん。」
僕たちは並んで教室へ向かう。
「また寝坊か?悠也。」
「うん……最近ハマった新作アニメがあってさ、ついつい観すぎちゃって……。」
「ははっ!お前らしいな!」
龍之介はまた僕の肩をポンっと叩いて笑った。
ちょっと恥ずかしい。
だって、寝坊して遅刻だなんて、小学生じゃあるまいし。
それなのに、高校生になってもう四、五回もやらかしている僕って一体……。
教室に着くと――
「悠ちゃん来たー!」
ドアを開けた瞬間、佐倉陽葵が元気いっぱいに声を上げた。
佐倉陽葵は、クラスでも指折りの美少女だ。
明るくてちょっと天然、だけど距離感を測るのが下手で、好きな人にはすぐグイグイいっちゃうタイプ。
「悠ちゃーん!」
陽葵は大きく手を振りながら、満面の笑みを向けてくる。
(ちゃんと返事しないと……!)
手を挙げて挨拶しようとした、その瞬間――
「どこが早いのよ!今何時だと思ってんの!」
鋭い声に遮られた。
声の方を見ると、そこにはいかにもギャルっぽい女の子がいた。
高く結ばれた金色ツインテール、その毛先にはピンクのメッシュ。
太陽の光を受けてキラキラ輝くその髪は、周囲の空気まで明るくしてしまうようだった。
氷のようなアイスブルーの瞳には冷たさを感じるけど、どこか少女らしい可愛さも隠れている。
制服は着崩していて、ジャケットは肩に羽織るだけ、スカートも少し短め。
厚底ローファーのコツコツという足音を響かせながら、彼女は僕に近づいてきた。
彼女の名前は――氷室凛。
「ひ、氷室さん……」
思わずビビって、声が震える。
「白河、学生なら時間守るのが当たり前でしょ?」
「は、はいっ!」
「じゃあ、なんで遅刻してんのよ!」
「も、申し訳ありません!!」
……なぜかクラスのギャルは、僕にだけやたら厳しいんだよなぁ。