表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

【Epilogue】

 早朝。

 燈里は遅れないよう恋人を送り出すために起き出した。

 彼が着替えを済ませたのを確かめて、カーテンを開ける。


「燈里ちゃん。サンダーソニアって球根が『増える』んだ」

 差し込む朝陽に照らされたベランダを指して、樹が不意に話し出した。


「え? どういう意味?」

「言葉通り。植えた球根から新しい球根が生まれるんだよ」

 それがまた、翌年に芽を出すんだ、と彼が続ける。


「じゃあ、いったん植えたら毎年永遠に咲き続けるってこと?」

「いや。植え替える必要はあるよ。新球、……新しい球根に栄養が回るように花が萎れたら摘み取って、全体に枯れたら掘り起こして保存するんだ。鉢植えならそのまま室内で越冬させる方法もあるけど、どちらにしても植え替えはいるね」

 それはそうか。

 確かに植えっ放しで毎年いつの間にか咲いている、という植物もあるが、やはり手間を掛けるのが当然だろう。


「また詳しく教えて。とりあえず、私がしなきゃいけないことがあったらそれだけでも」

「そうだね。今はちょっと余裕ないから、今度改めて説明するよ」

 燈里が手早く用意した朝食を食べ終えて、樹は「片付けできなくてごめん」と恐縮しつつ慌ただしく帰って行った。


 ──球根が、増える。また、来年新しく育てる楽しみができた。燈里の、……二人のサンダーソニアを。



 始まりは球根。

 

 ほんの気紛れだった筈の行動が、いつの間にか燈里の生活と心を侵食して行った。


 樹が勧めてくれて、一目で運命を感じたサンダーソニア。


 そう、──あれはまさしく運命だったのだろう。



 まるで導かれるように球根を介した関係が深まって、今もベランダでいくつも灯るオレンジの小さな洋燈(ランプ)が、新たな恋へのGOサインになった。


 ~END~


後日譚が二編あります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ