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日曜午後3時のひつじちゃん

作者: 昼月キオリ

出会いは海だった。

5月。

桜が散り終わり、風が暖かくなり始めた頃。

砂月は学校がない日曜日に海の家でアルバイトを始めた。

砂月「いらっしゃいませー!」

砂月海(さつきうみ)。16歳(男)。高校一年生。

カラカラと明るいその人柄から周りにはいつも沢山人が集まった。

女の子から声をかけられることも多い砂月だったが、いつも丁寧に断っていた。

砂月には気になる女の子がいた。

日曜日の午後3時。

浜辺の隅っこの日陰にある小さな岩にちょこんと座りながら1人で本を読んでいる女の子。

ふわふわのミディアムショートカット、日に当たると栗色に見える髪、

最初見た時に羊みたいな子だと思った。

砂月は密かに彼女にひつじちゃんとあだ名を付けていた。


店長「ひつじくーん!料理できたから運んでー!」

砂月「はーい!」

なぜ砂月がひつじくんと呼ばれているのかと言うと、シンプルに羊が好きだから。

自分が呼ばれるだけでなく、気になる子にまでひつじちゃんとあだ名を付けるくらいに好きなのだ。

自分の部屋には羊をモチーフにした雑貨が飾られている。


6月。

雨が降る日が増え、彼女を見かける回数が減った。


7月。

梅雨が終わり、タチアオイの花が咲く頃には彼女はいつも通り日曜日の午後3時に海へ来た。

いくら日陰とはいえ、こんな暑い日に外で本を読んでい

て大丈夫なのだろうかと心配をする。

しかし、本人は暑さを感じているようには見えず、至って平然としている。

まるでそこだけがずっと春のまま時が止まっているように見えた。


しかし、彼女が本を読み終わり、立ちあがろうとした時だった。

立ちくらみを起こしたのか本を砂浜に落としてしまう。

砂月「店長!すみません、少し休憩下さい!」

そう言って砂月は彼女の元へ駆け寄った。


しゃがみ込んでいる彼女に声を掛ける。

砂月「大丈夫?」

凛堂「は、はい・・・」

凛堂あみ(りんどうあみ)。16歳(女)。高校一年生。

本と海が好き。内気な性格。

砂月「海の家で休もう」

砂月はふらつく彼女を支えながら海の家に向かった。

砂月「店長、すみません戻りました、この子、体調悪いみたいでここで休ませてあげてもらえませんか?」

店長「こりゃ大変だ!奥の控え室で休ませてあげなさい」

砂月「ありがとうございます」


30分後。

凛堂「あの、ご迷惑をおかけしてすみませんでした」

店長「いやいや、いいんだよ、それより具合は大丈夫かい?」

凛堂「はい、もう大丈夫です」

店長「それなら良かった」

凛堂「ありがとうございます、お水まで頂いて・・・」

店長「なーに、困った時はお互い様だよ、あ、そうだ、ひつじくん、休憩入っていいよ」

砂月「え、でもさっき休憩は・・・」

店長「今は人の入りが少ないから大丈夫だよ

もう少し彼女の様子を見ていてあげて」

砂月「分かりました」

凛堂「すみません・・・せっかくの休憩時間なのに・・」

砂月「気にしない気にしない!むしろ話し相手がいてくれた方が楽しいし!」

凛堂「ありがとうございます・・ひつじさんは名前がひつじなんですか?」

砂月「あっはは、違うちがう、俺の名前は砂月海!

ひつじはただのあだ名だよ」

凛堂「どうしてひつじなんですか?」

砂月「羊大好きだから!あ、ちなみに食べるのも好きだよ!笑」

凛堂「可愛いですね」

砂月「そう?可愛いって言われると照れるな

あ、名前聞いてもいい?」

凛堂「凛堂あみです」

砂月「あみちゃんね!よろしく!」

凛堂「よ、よろしくお願いします・・・」

砂月「タメ語でいいよタメ語で!」

凛堂「う、うん」

砂月「あみちゃんっていくつ?」

凛堂「16」

砂月「うわ、同い年じゃん!、俺、南浜(みなみはま)高校一年!」

凛堂「私は東浜(ひがしはま)高校一年だよ」

砂月「高校近いね!」

凛堂「そうだね」

砂月「あ!本!まだ渡してなかったね」

砂月は本をあみに渡した。

凛堂「ありがとう」

砂月「本好きなんだね」

凛堂「うん」

砂月「こう言ったら気持ち悪い奴って思われるかもしれないんだけど

実は前からあみちゃんが海で本読んでるの知ってたんだ

いつも日曜日の午後3時に来てるなーって」

凛堂「意外、私を見てる人なんていないと思ってた」

砂月「不快な思いさせちゃってたらごめんね!」

凛堂「ううん、そんなことでないよ、私もずっと・・・」

砂月「うん?」

店長「ひつじくーん!ごめんお願ーい!」

砂月「はーい!ごめん店長が呼んでるから行かなくちゃ」

凛堂「私もそろそろ帰るね」

砂月「具合は?」

凛堂「もう大丈夫、心配してくれてありがとう」

砂月「良かった、じゃあまた会ったら話そうね!」

凛堂「うん」


彼のことは私も知っていた。

彼が海の家でアルバイトを始める前から私は海に通っていたし、元気で明るい声が印象的で、

海に似合う人ってこういう人なんだなと思った。

それが少し羨ましかった。


話しをしたら想像通りの人で、

彼と話す時間はキラキラしていて、まるで宝箱を開けた時の子どもになった気分だった。


日曜日の午後。

あみが本を読み終わるタイミングと砂月がバイトが終わるタイミングが合うことが分かり、何度か話をし、互いの誕生日が近いこと知る。


凛堂「あのね、この前、友達と動物園に行ったの

これ見た時に砂月君の顔が浮かんで、誕生日にピッタリだなと思って良かったらもらってくれる?」

凛堂は動物園の柄が入った袋を砂月に渡した。

砂月「うわぁありがとう!開けていい?」

凛堂「うん」

砂月は袋を丁寧に開ける。

砂月「羊のぬいぐるみじゃん!手のひらサイズ可愛い〜!本当にもらっちゃっていいの?」

凛堂「うん」

砂月「ありがとう!実は俺からもプレゼントがあるんだ」

凛堂「え?」

砂月「はい!開けてみて」

凛堂「うん・・・え、これって・・・」

砂月「いやーまさか被るとは思わなかったよ!買った場所は違うけど

羊で良かったかな?俺、羊以外のプレゼントが思い付かなくてさ」

凛堂「嬉しいよ、ありがとう、可愛い」

砂月「俺、最初に見た時、あみちゃんって羊っぽくて可愛い子だなぁと思ってたんだよね

ふわふわの髪とか岩にちょこんって座ってるとことか」

凛堂「え・・・」

砂月「いや、うん、気を悪くさせちゃったらごめんなんだけど」

凛堂「全然、そんなことないよ」

砂月「俺にとってはちょー褒め言葉だから!」

凛堂「うん、ありがとう」


恥ずかしいから態度には出さないようにしていたけれど羊っぽいって言われて正直嬉しかった。

だって砂月君がひつじくんってあだ名が付くほど羊が大好きなのを知ってるから。

まるで自分の事を大好きだと言われているみたいで。


夏が終わる頃にはいつも一人で歩いていた砂浜を二人で歩くようになっていた。


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