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隠されたルーツ


何故こんな事が出来るのだろう。いつもそう思いながら生きてきた。私の家は元々分家だった。どこから続いていたのか今になっては分からない。ただ唯一理解出来るのは、主にこの県で優遇されている事だけだ。


「お前に教えてやる。この家のルーツを」


全ての話を終えた後、兄は楽しそうに自分の調べ上げた事をゆっくりと語り出した。


「俺達一族は元々渡来人だった。日本に住むために土地をその時の天皇が用意したと記されている」

「……天皇?」

「ああ。そうやって後ろ盾を使いながら這い上がったのが俺達の一族なんだ」


そんな事祖父にも祖母にも聞いた事はなかった。ただ天皇と言われて、ふと思い出したのは祖母が語っていた昔話。その内容は特殊な仕事をしていた祖父の兄の事だった。彼は30代で天皇家の荷物を運搬する立場を与えられ、海に沈んで亡くなったと聞いた。その時、表には出される事のないもう一つの名前を手に入れた。


善行院と聞いた私は不思議な名前だなと思いながら、聞き流していた。それが事実かどうかは祖母と祖父にしか分からないだろう。そして兄の全ての力を引き継いだのが私の祖父だったのだ。


古い家はいくらでもある。普通だと感じていた環境が普通ではないと知ったのはそれからだいぶ後の事だった。


「俺が知っているのはこれくらいだ。それ以上は辿れなかった。どうだ? 面白いだろう?」


血筋は薄いが純粋な日本人ではない事を把握した私は、兄の言う事だからと気にしないようにした。それが事実だと理解したのは家の家紋がどんなものなのかを知ってからになる。


丸に包まれた三本松の家紋。名称は丸三階松と言われているらしい。今の名字からは連想が出来ないが、元々分家だった私達は、本家が潰れた時に血筋を守る為に、処置として据え置いた。その本家はその名字を名乗っていた。


渡来人、天皇、そして本家の名字、一族。


これらのキーワードで繋がったのは、皇別氏族と言う内容だった。


何故自分の周りにその名字が殆ど七日、そしてそれらと繋がっている人達には、皆立場があり、表舞台に出ている人が多かった。そして私は父とよくある場所へと足を運んでいた。そこも同じ名字だ。


「血筋を守れ。私達の命よりもそれが一番大切な事柄だ。例えお前が犠牲になったとしても、死んだとしても、家だけは潰してはならない」


どうして血筋ばかり言うのか疑問を抱いた事があった。普通の家庭なのに、何をいっているのだろうと。その背景を知らずにいた私は、いつしか家に支配されていたのかもしれない。


「俺達には血筋を守る必要がある。そうやってこの家も十六代目になった。俺達に子供が出来なかったら、分かるな?」


 唐突に話を突き進めようとする兄の言いたい事が見えない。いいや、本当は分かっていたのに、分からないふりをしていたんだ。


「お前に子供が出来たら、俺達に寄越せ」


聞きたくない言葉が私の鼓膜の中で震えている。どこまでも私の人生を操るつもりなのだろう。私の求めているものとは程遠い内容に、言葉が出ない。


こんな事を平気で口にする奴が、自分の兄だと思うと吐き気がした。どこまでいっても、この人は変わらない、そう実感したんだ。

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