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第四話

 ねぐらにしている宿屋に向かう途中、なにやら人だかりができていた。


 何事かと覗き込んでみると、案の定、喧嘩であった。


 荒くれ者が集まる飲み屋街だ。ケンカの類も日常茶飯事であり、見慣れた光景であった。



「ザッケンナコラァ~!」



「ああん!? ッスッゾコラァ!」



 お決まりの罵声が飛び交い、同時に拳が繰り出され、その体が宙を舞う。


 結構なレベル同士のパーティーのケンカであり、見ている分には中々の迫力だ。


 まあ、飴玉を舐め終わるまで見ておいてやるかと、見学する事にした。


 無責任な掛け声を飛ばすつもりはないが、押し合いへし合いの波に呑まれ、最前線まで押し出されてしまった。



「やんのか、ゴルァ!?」



 いえ、結構です。間に合ってます。そう言おうとしたが、それより先に拳が飛んできた。


 俺は冷静に踏み込んで、拳をかわしつつ、平手打ちをお見舞いした。


 スキルこそ【開錠】しかないが、基本職の盗賊シーフを長年続けてきたのである。


 動きだけなら、そんじょそこらの中堅冒険者よりも上だ。


 耐久力が絶望的にないため、一発貰えばアウトな高難度ダンジョンばかり繰り出していたため、逃げる、隠れる、かわす事は割と得意だったりする。


 パシィっと平手打ちが命中。暴漢はその場にへたり込んだ。



「も、申し訳ありませんでしたぁぁぁ! 俺が悪かったです!」



 いきなりの土下座である。


 俺も、暴漢達も、周囲の野次馬達も、誰もがその異様な速度で土下座した男に視線が集中した。


 本当に落ち着いているようで、土下座体制以外はごく普通に詫びを入れていているようにしか見えなかった。


 土下座は大げさだぞ、土下座は。


 などと思わなくもないが、すぐにある事に気付いた。


 それを確かめるべく、次々と別の暴漢に“触れて回って”みることにした。



「「申し訳ありませんでしたぁぁぁ!」」



 あっさり全員がひれ伏した。


 周囲の困惑度合いも増していくが、俺だけがこの状況を分析できた。


 そして、一つの結論に至った。


「そうか。俺は心を“開錠”できるようになったんだ」

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