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14話 レイラ、気持ちをぶつける

「なにか……、ガルアラム様に対して殺意を向けられたりしませんでしたか?」

「あぁ。隠しているようだが俺には誤魔化しは効かないのでね。とは言っても、立場上伯爵に限らず色々な者から命を狙われていてもおかしくはないがな」

「笑っている場合ではありませんよ。私のために危険になってしまうなんて……」

「心配無用だ。すでに対策はしてある。それに……」


 ガルアラム様が恥ずかしそうにしながら頬を掻いていた。


「リリよ、少し席を外してくれるか?」

「ご健闘をお祈りします」

「おい!」

「ふふ、では外にいますので」


 ご健闘って、なんのことだろう。

 リリさんが部屋を出ていくと、ガルアラム様のあからんでいた顔がさらに赤くなっていた。


「レイラ……」

「は、はい!?」


 いきなり名前で呼ばれてドキッとしてしまった。

 聞き間違えではないことを願いたい。


「自慢のような話になってしまうかもしれないが、俺は今まで地位や名誉、外見だけで縁談や交際の申し込みばかりだった……」

「それくらいは知っていますよ。噂でも有名でしたから……」

「俺はその繰り返しで、いつしか恋や婚約など無縁だと思い生きるようになっていた」

「私も似たような感じでした……」


 とは言っても、私はモテていたというよりも両親の選ぶ縁談相手が最悪で、男の本性は性欲と物欲の塊だという印象になってしまっていた。

 だから、相手が誰でも付き合ったり婚約をしたりする行為がとても怖かったのである。


「だが、レイラは違った。別に俺のことを好いてくれるとかではなくとも、キミの優しさや気遣い、そしてなによりも堂々とした態度で行動するところに惹かれた」

「あぁ、まぁ私ってすぐ口に出たり動いたりしますから……って、へ? 惹かれ、た!?」

「嘘ではない。責任感で看病しなければならないと思っていたのだが、いつの間にか、レイラのそばにいたいと思うようになっていた……」

「ええええええええええええ!?」


 まさかの両想いだったとは……。

 驚きのあまり、大きめの声が出てしまった。


「すまないな。こんなことを言ってしまった手前、もうレイラのそばで看病することはできないだろう。だが、本当に俺にとってはキミが近くにいてくれるだけで幸せな時間を過ごせた」

「な……なにを勝手に終わらせようとしているのですか……?」

「俺は次期侯爵という身分がある。だが、好きな相手に強要など断固としてしたくないのだよ」

「それこそ勘違いですから! 私も、途中からではありますが、ガルアラム様のことを……」

「……まさか、治療のお礼になどと……」


 さすがにこういうときに信頼されないのは気が引ける。

 だが、これもガルアラム様の良いところでもあるのだ。

 冗談まじりを含めて少しムッとしておく。


「いい加減に怒りますよ!? 私はそんなことや情で人を好きになどなりません。ガルアラム様の優しいところ、謙虚なところ、心配してくれるところ、大事にしてくれるところ、責任感が強すぎてどうしたらいいか困ったこともありましたが、全部ひっくるめて好きなんです!」

「レイラ……」

「手、握っててほしいです」

「あぁ。分かった。気の済むまで」


 今はまだ怪我が完治していないから身体全体では難しいけれど、治ったらガルアラム様からギュッと抱きしめて欲しい。

 ここにいると私の欲がどんどんと出てきてしまう。

 だが、ガルアラム様はそれを全部受け止めてくれそうな包容力も持っている。


 気がつけば、私は人に甘えてしまうようになっていた。

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