光と闇(2)
よろしくお願い致します。
『おはよう!今回はちゃんと出たわね!関心関心』
『じゃさっそく動きましょうか?とりあえず二時間後国道沿いにあるコンビニの後ろに黒いイースがあるわ、その車のとこまで来なさい。良いわね?それじゃあまた。』
…。
私は何一つ話していない、完全に一方的過ぎる、と言うより喋れない。何故なら…まだ朝の4時だからだ…。
勘弁してくれ。確かに昨日は助け?がいるのか分からないが協力的なことはすると言ったが昼夜逆転生活の私には辛すぎる…。
だが約束は約束。仕方ない。私はしぶしぶ明日6時、まだ薄暗い寒空を震えながら先ほど指定されたコンビニへ向かった。すると確かに広い駐車場の1番後ろの1番右側に黒い軽自動車が1台ポツンと止まっていた。『コンコン』と運転席を軽くたたくと窓が空き、『助手席に来なさい』と(君)はいう。
言われた通り助手席に座りおはようございますとだけ声をかけ(君)なんなのか?何故私なのか?一体なにを助けてほしいのか?その全ての謎を話してくれるのをじっと待っていた。
…30分くらい経ったか。何も話さない(君)にだんだんイライラ?なのか分からないが、それに似た感情が沸き上がり始めたころ、ついに(君)はその口を開いて話始めた。
『…私は警察から特別に守ってもらえるある制度をうけているわ、だから誰にも私の本名、戸籍、国籍、年齢、家族構成を知らない、知り得ない』
『守ってもらえるある制度??何ですかそれ?』
『あまりはっきりとは言えないけれど、ようはある事件の重要な証言などを持つ人が、警察に話すと当然命の危険すらある、それでも事件解決には証言が必要、という事でその人に証言をしてもらう。』
『ただ、そのかわりその人は別人になりすまし警察に一生守られる人生になる。名前から何から全て変わる…それが私。』
う~ん…分かりそうで分からない。ただ一つ、(君)がある事件に関与していて、重要な証言を持っていた?そして(君)は警察から常に守られ、私は(君)の全てを知ることが出来ないということだ。
何だかガチで大ごとに巻き込まれた感が否めない…。
ただ、今はもう余計なことは聞かず助け?とやらを済ませて(君)から離れたい、怖い…。それだけだ。だか、(君)は話を止めない。
『また、という事であなたには(君)と呼ばせているわ、あと、私のことは決して詮索しないことね。』
言われなくても不気味な恐怖で、これ以上知りたくないのだが。
『でね、それ前提で話すわね。』
『この国は数十年前に戦争で負けたわ、完全に街も人も勝利国のもの。』『多額の賠償責任と敗者ゆえの屈辱感、そして尋常ではない、罪のない方々の犠牲、やけ払われて消え失せた街も人も…。ただ、人は強い。また立ち直ろう、ここから始めよう、と国の戦争指導者、トップは言ったわ。』
『けどね、あれだけの犠牲、失ったもの、幼い少年から少女、女性や高齢者など本来守られるべき方々までもが戦力にされ槍1本で戦いに出された…当然叶うはずもない。やがて追いつめられ、普通では理解しがたいトップへの、国への忠誠心で自ら死を選ぶ人までいた。奴らに殺されるなら自ら…。と。そこまで、そこまでよ?そこまでやらせて、国民を騙し、強制的に戦わせ、家族も家も命さえも奪われた…。』
『…そんな簡単に立ち直れると思う?国の復興なんかできると思う?そもそもどうやって?現代のような裕福など、ライフラインなど、食料など本当にどこにもないのよ?被害が酷い場所には供養もされないまま放置されてるご遺体が一体どれほどあったか…。それなのに、通り過ぎる人々は気にもかけない。そうよ、必死なのよ、自分が生きる事に、家族の安否確認に。』
『…私は社会の、歴史の勉強でもさせられているのだろうか?いくらこの私でもそれくらいは耳にしたことがある、(君)ほど詳しく、よりリアルに、は分からないかもしれないが』
そんな私の考えをよそに(君)は話をまだ止めない。
『あまりにも酷い惨状…現実…。』
国も敗者ゆえに苦しい立場。苦しんでる方々に現代のように即座に援助や支援物資など出来やしない。このままでは、この国は終わる…。治安悪化やヤクザ、麻薬の横暴、手がつけられなくなる。…それは希望、願い、夢、光すら失われた闇の未来…
日本はこれからどうなる?どうなるのだろう
誰もがそんな不安を抱えながら死に絶え、生き延びても戦争場所から二度と帰って来ない大切な人を亡くした絶望感に心は、体は、完全に打ち砕かれた。
それが、本当の意味での敗者。
そう言い少し黙って(君)は言う。
『どう思う?』
『はい?どうって…歴史で習った事ですし、今の現代人には到底分からない苦しみ悲しみだと思います…。』
『そうよね、で、ここからが本題。』
『もし、もしそんな人たちを救える者がいたら?あなたなら救う?』
急になんだ?本題?救える?私は少し困惑しながら答えた。
『そりゃ自分が誰かを救える力があるならそうしますよ!』
『そうよね!あなたならそう答えると思った、じゃもう一つ、もしその人たちを救った事が原因で取り返しのつかない腐りきった国、人間になるとしても?救った数十年後に。』
『…???なにが言いたいのだろう、分からない。救ったら国が人間が腐る?なんで?』
『早く答えなさい!』(君)は少し苛立ちながら大声で私に問う。
私は答えた。もう、正直に、素直に!
『国だかなんだか知らないけど、今苦しんでる人たちがいるなら、私に救える力があるならやれる事を精一杯やる!それだけだ!』
『…。そうね。助けるわよね、ほっとけるわけないわよね!!みな苦しんでるのに。』
『だから私たちは手をさしのべる事を決めた。恩着せがましさから、存在は明かさずに、当時は食べ物や生活に必要なもの、やがて医療、福祉、介護、教育、現代まで、今もまだ続けているこの支援、人々が立ち直る役に少しでもなればと、手をさしのべる事を決めた。』
『さっきも言ったけどそんな彼らは恩着せがましい気持ちがいやで存在を隠した。結局苦しんでる人たちを救ったのは(国)ということにした。それほどまでに心が痛んだ。』
『そんな彼ら、集団の名を(AFP)と呼ぶ』
この存在は国の中でも最高の金持ち集団
そしてこの名を知る者は国のトップレベルですら数える程度。
『…まさか』
『そう、その中の一人が私。』
『そしてあなたに助けてもらいたいこと、分かったかしら?私たちAFPの初代リーダーは間違ったのか、あの時苦しんでる人たちを救わなければよかったのか?私は違うと思う。初代リーダーは間違ってない』
『その証明をあなたがするの』
『助けてくれるのよね?私を。AFPを!』
…私はすぐに『はい』とは答えられなかった。
それほど頭が大混乱だったからだ…。
ここまで読んで下さりありがとうございます。