表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
With the Wind!  作者: 肉丸 もりお
六城庵とその義兄
190/361

浅木 その(3)

 人数が半分になってしまえば、当初予定した戦術はどれもそのままでは実行できない。

 行ったのはグレードダウンしたそのうちの一つ。銃撃を防ぐために二人が至近(しきん)にまとわりつき、後の四人が二組に分かれ、入れ替わり立ち替わり攻撃を仕掛ける。攻撃用の“遺産”を持った二人の隊員が隙を狙う手はずだ。


 そして戦いは“遺産”を持った一人が簡単に切り払われた時点で崩壊した。


 “虎伏せ”は倒れた隊員から“遺産”をもぎ取ると、まとわりついていた一人に突き立てた。

 “縫立(ぬいたて)小爪(こづめ)”と呼ばれるその小刀に刺された相手は、地面に縫い付けられたように体の動きを阻害(そがい)する力に襲われる。といってもそれは、“可能種”が力を込めれば即座に脱せる程度のもので、浅木(あさぎ)側としても今回は隙をつくることを目的にしているだけだった。


「ううっ…!」


 しかし、“虎伏せ”に刺された隊員は胸に深々と入り込んだ小刀を見つめたまま身じろぎするだけだった。

 その事実は明らかに、“縫立小爪”が適格者によって能力を引き出されたことを意味していた。

 浅木たちは、六城家の“命題”が“遺産”だと聞いている。だから“虎伏せ”は“遺産”の力を引き出せるのだと。それは適格する“遺産”に限る話のはずだ。


 偶然“縫立小爪”の適格者だったのか…!?


 だとすれば呪うべき運の無さだったが、事態はそれにとどまらなかった。いとも簡単にもう一人の“遺産”を奪い取ると、“虎伏せ”は驚くべき文句を呟いた。


輪転(りんてん)骨鳴(ほねな)き”」


 棍棒が振りかざされ、その場から動けないでいた隊員の頭を粉々にし、四散させる。


 飛び散る肉の間に見え隠れする骨は白く、その色に侵される頭の中で、あり得ない、という言葉が生じた。

 生涯(しょうがい)に一つ適合できるかどうか、それほど“遺産”を扱う条件は厳しい。戦場で拾ったものを一つどころか二つ操って輪転まで行うのは、偶然では済まされない。


 ではどうしてなのか。


 鼻頭(びとう)を押しのけ脳幹(のうかん)に届くものが、浅木の思考を終わらせた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ