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浅木 その(2)
「いたぞ…!」
声に弾かれた全員の視線は、公園の入口から堂々と侵入する男を捉えた。
夜を拒むような“威装”の白色に思わず注意が引かれるが、その反面黒い手袋でもつけているのか、手先は判別しにくかった。恐らく意図的な配色だ。派手な”威装”のカラーリングもそれに意識を割かせるために行っているに違いない。
そこから実戦を経験した者の独特な臭いを嗅ぎ取った浅木は、刀を握りしめる手に必要以上の力が入るのを止められなかった。
部下たちからも息苦しそうな気配が伝わる。短くなった呼吸が重なり合い、公園の静寂を乱していた。
植えられた木々の影から踏み出たとき、男の顔が街灯に照らされた。同時にけたたましい音がする。
体を震わせてやっと、鴉の鳴き声だと気づいた六人を、ぞっとするほど暗い瞳が収めていた。