浅木 その(1)
「E2もやられました…!」
傍らの部隊長補佐が汗をにじませた声で告げる。先ほどまで諭されていた文一からの通信が途絶えていた。残っているのは、ここから離れた場所にいる菊之丞を除いくと六人だけだ。十三人のほぼ半数がやられている。
浅木は集まった五人の顔を見渡す。どれも強張っていて余裕がない。きっと自分も鏡に映したように同じ顔をしているのだろう。
「聞いた通りだ、これ以上この場に集まる者はいない」
一人一人と目を合わせながら話す。
「六人で戦うしかない、今この瞬間に現れてもおかしくない奴と」
口にしてみると、浅木自身、倒れ込みたくなった。
半減した戦力が通用するのだろうか、移動能力も伝えられていなかった、まだまだ相手には未知の、脅威の力があるはずだ。それでなくとも武名を轟かせている相手に挑まねばならない。ひょっとしなくとも自殺行為に近いだろう。
黙り込んでいた浅木は、視線を感じ顔を上げた。そこには、自身を見つめる不安そうな顔が並びんでいた。自分が今この場の最高責任者であることを思い出した浅木は、とめどない弱音を飲み込むと、もう一度、自分と生死を共にする部下たちに向き合う。
どれも死にたくないと叫んでいる。選ばれた者だというプライドなどどこかへいってしまった。
浅木は唐突に、だからこそ勝てるのではないか、と思った。木刀を振り回して喜んでいた自分たちとはもう違う。甘っちょろさは消え、数分先まで生き残るために目を血走らせている。いわば死兵だ。
「やるぞ、持ち場に着け」
公園は予定戦場に条件が近い。数を優位に繋げるのなら開かれた場所が望ましいのだ。
互いを視認できる距離まで散らばった部下たちの中心で、浅木は静かに時間が経つのを待った。