通話
「どうした」
「和助が死んだ…」
「…“虎伏せ”にだな」
「ああ…」
「“遺産”はあったのか?」
「なかった、なにも」
「惜しいな。だが、それならあいつも後悔はしてないはずだ」
「…」
「“連”は回収したんだな?」
「“虎伏せ”が出てくる前に受け取った」
「ならいい…」
「こっちはまだ時間がかかりそうだ。夏が終わっても怪しいな」
「…本当にあいつを信用していいのか?」
「確かに情報源が伊那だけというのは気に食わんが、俺たちは出された飯に文句を言える立場じゃない」
「そうだけど…」
「それにな、銃の“遺産”なんて珍しいものを二つも送ってきてるんだ。あれは五つしかない貴重なものだぞ。俺たちを潰すのにこんな手の込んだ真似は必要ない。利用されているのは分かっている。俺たちも利用するだけだ。納得しろ」
「…分かった」
「さっき言った通り、“鬼縛り”は当分見つかりそうにない。あのガキにも伝えておけ」
「あいつと二人きりはひどいよ…」
「ああ、だが茂と一緒にしてみろ、間違いなく殺し合う。“鬼縛り”さえ手に入れば、 “虎伏せ”にお返しするだけだ。それまでの辛抱だと思え」
「…あいつは縛り上げて首を落としてやる」
「和助の分も含めてな」
「じゃあ切るぞ。忘れるな、勝負は夏が過ぎてからだ」
「地下に引き込んで、三人でやる。そしてあいつにも伝える」
「その通りだ」
「茂にもよろしく」
「ああ」