第1話 常識はずれのレネガル家
この世界には、『門』と呼ばれる力がある。
産まれたときから誰もが持つ、主と共に成長する、主の本質。
魔王レヴルの『門』は《王魔門》。全ての魔の王を宿す『門』。
魔神マナの『門』は、《創魔門》。新たな魔法を創り出す『門』。
この二人の『門』が強大であり、他の者を圧倒したため、世界最大の戦争、『静寂の闇』は終戦した。
しかし、そんな偉大なはずの魔王と魔神は今、
「ほーらアスフィ!見て!月がハートになっちゃった!」
と、月を粘土のように動かして、無邪気にはしゃぐ魔神。
「アスフィ!この像誰かわかるか?そう!アスフィの像だ!」
と、世界五大巨大魔物のキングワールド・ゴーレムの残骸を削って、子供のような表情をしている魔王。
その楽しそうな姿は、とても偉大な、そしておそらく世界で一番の偉業を成し遂げた二人には見えなかった。
「ねぇお母さん、お母さんもう三億五千万六千歳だよ?ハートはもう・・・ねぇ?」
「うぐっ・・・あのね、お母さんだって女の子なのよ?ハートぐらい創らせてちょうだいよ」
顔をピクピクさせて震えた声で答える魔神。
「お父さんもさ、わざわざキングワールド・ゴーレム使わなくていいじゃん。そこら辺の石でいいじゃん」
「いや、えーとだな・・・」
と、返す言葉もない魔王。
「僕、今すっごい恥ずかしいよ?月がハートで世界五大巨大魔物が自分の像って・・・」
そして、少し間が空き、魔王が口を開いた。
「あのな、お父さんは、魔王なんだ」
「・・・ふわぁぁ・・・なんか言った?」
「・・・まぁいい、俺はそれはそれはもう長ーい間生きてきたんだ」
「うん」
「だからこんなことははじめてだから、質問させてもらう」
「うん・・・何?」
「お前はまだ生まれて三分だってのにどこでそんな言葉を覚えたんだ?アスフィ」