アスフィ・レネガル
~城の最上階~
「ほーら、見てごらん!いい景色ね~!」
と、おっとりとした、しかしどこか神々しい雰囲気の女性が優しく言う。
「よく見ておけ、これがお前が生まれた世界だ」
と、隙がなく、威厳のある雰囲気の男性が言う。
「もう、お父さん、そんな強い魔力発したらこの子が怖がるでしょ」
大袈裟に頬を膨らまして、抱えた赤子を守るように女性が言った。
「・・・だが、この程度で怖がっていてはこの世界では生きていけんぞ」
と、先ほどの威厳はどこへやら、弱々しい顔で男性が言った。
「まだ生まれたばかりよ?・・・それに、私たちの子だもの」
男性の弱々しい表情に対し、女性は強い確信を持った顔で返す。
「・・・確かにそうだな」
男性もそれにつられ、女性と同じ確信を持つ。
「後、お前じゃなくて、アスフィ。アスフィ・レネガルよ」
男性を軽く睨み付けながら女性が言う。
「す、すまん、つい癖でやってしまうな・・・よし、ア、アスフィ、お前はやりたいことをとことんやるんだ!無駄な戦いはせず、楽しく生きろ!」
男性が笑顔でそう言った。
「もう、結局お前って言ってるじゃない」
「・・・あぁ~!くそぉ~!また変な癖がぁ~!」
女性はあきれた顔でため息をついていた。
男性は頭を抱えて膝をついていた。
しかし、二人はこれ以上にないほど、満面の笑みを浮かべていた。
この日、魔王レヴルという名の男性と、魔神マナという名の女性の間に、後に世界の救世主となるものが生まれた。