第1章-25 『RPGで言えば最終決戦的な(1)』
久々の更新になります。
大幅更新になるので、お付き合いください。
「勝負は始まったようだが、来ないのか? 貴様が恨みを持つ相手は眼前にいるぞ?」
やはり俺の口と身体は、俺の考えとは別に動く。なんでこうも簡単に相手を挑発してしまうのか。もうこうなってしまっては、戦いに意識を集中せねば。
「それじゃあ、遠慮なく行かせて貰おうか! ただ俺は、全力で行かせて貰う。死にたくなければお前も全力で受けろ! でないと、死ぬぜ?」
そういいながら、イサムは一本の剣を背中の鞘から抜き、斬りかかりながら、全力で近づいてくる。
「ふん! 貴様如き相手に全力等片腹痛い。半分だ。半分の力だけで貴様を無力化してやろう」
「そうかよ! だったらお前の後悔する場は地獄になるな! 炎剣!」
言葉と同時に俺に斬りかかるが、魔法障壁で身を守る。
「チッ! 無詠唱魔法まで習得済みかよ」
「我は魔王だぞ? この程度のことが出来ずに魔王の立場を守れるものか」
とは言ってもこれもアイツの教えによるものだが。
俺は続けて口を開く。
「それと、貴様は本気を出さんのか? あれだけ全力で行くとかぬかしておいて」
「なんのことだ? 俺は今でも全力なんだが?」
「惚けずとも良い。昨日の剣、あれが貴様の奥の手であろう? 出し惜しみはお勧めしないな。そんなことをしているから人間は魔王に勝てんのだ」
「ハッ! 流石に見抜かれてたか。だったらお望み通り使ってやるさ。だが、覚悟しておけ。アイツを抜くというのはどういうことかという事をわからせてやる……来い! αカリバー!」
『キーン……シャンシャンシャンシャン』
酷い金属音と共に、奴の抜いたもう一方の剣は昨日見た通り触手の化け物へと変貌を遂げる。
「もうコイツを抜いたからには、後戻りは出来ねぇぜ?」
「もとよりそのつもりは無い! かかって来い! 劣等種!」
「人間様を舐めるなよ! ぜやぁ!」
もう一本の剣が抜かれ、本格的な戦が始まった。
ーー
「そろそろ喰らっとけ!」
「その程度の動きで我は倒せん!」
付けている腕時計に目を送る。
時計は試合開始から40分後の時間を指している。
流石に2本の剣を同時に処理するのは、面倒が過ぎるな。これでは防戦一方だ。
特に厄介なのは、後から抜かれた聖剣(?)だ。
アレは先が何先にも割れているせいで、一度に多方向からの攻撃を防がなければならない。
更には、イサムと別の聖剣まで防がないといけないとなると、こうなってしまうのも当然なのかもしれないが……。
「そうか? 俺にはさっきから守ってばかりに見えるがな!」
「ほざけ、劣等種!」
イサム本人にも見抜かれてしまったようだ。
この防戦一方の状況、ひとつだけ簡単に打破する方法がある……にはあるのだが、極力それはやりたくない。
この戦いが終わった後にもイサムと旅をするにあたり、そんな事をしてしまえば、かなり不利になりかねない。
「さてさて。そろそろ決めさせてもらうぜ! 喰らっとけ! 我が師に授かりし奥義、【七色剣戟】!」
なにやらイサムは本気で仕留めに来るようだ。その奥義の為か、触手の剣の攻撃が鈍くなる。これならイサムの攻撃に集中できる。
「紫ノ剣・【闇夜斬り】!」
イサムの剣が闇を纏い始める。大方、闇属性の付加を施した攻撃といっただろうか。
取り敢えずここは様子見で防御だ。
「【魔法障壁】! 【属性鳴音】!」
『キーン! ギリギリギリギリ……』
魔法障壁にイサムの聖剣が当たり、当たりに高い金属音が響き渡る。
が、魔法障壁が割れることはなかった。
「これが奥義か? 笑わせてくれるな」
「そうだよな、笑い物だ。これだけが奥義だと思ってるならな! 藍ノ剣・【黎明斬り】!」
「ほぅ。連続攻撃か。だが、今回の魔法障壁は昨日よりも手を込めてある。馬鹿の一つ覚えでは、破ることは……」
ってん?
なんか魔法障壁の様子がおかしい様な……。
いや、今回のものは昨日のものよりも魔素含有量を増やした特別性で、更に魔法無効化を重ね掛けしているんだぞ。そう容易く破れるわけが……。
「……蒼ノ剣・【滝登斬り】!」
「んなっ!!」
なんという既視感。
魔法障壁が昨日よろしく砕け散る。
やばい……って、これは逆に好機なのでは?
イサムの次の一撃は確実に俺に届く。その攻撃を死なない程度に喰らって、その後俺を無力化できればイサムの勝ちだ。
少し予定とは違うがこれで勝負がつk……
「終わりだぜ! 翠ノ剣・【吸収斬り】!!」
「……まだ……青いな」
俺の意思とは関係なく、口と魔力と眼と体が動く。
……待て、この魔法は!!
まずいッ!!
「……【時空波動】」
「!!? ……クッ……ソがぁぁ!」
剣技が当たる寸前、イサムの身体が吹き飛ぶ。
まさか開発途中の魔法まで持ち出してくるとは思わなかった。自分の身体ながら驚きだ。
時空波動……時間と空間の関係から考え付いた波動魔法。
まだ調整中だから実践では使用してこないようにしていたが、呪いによって強制的に発動させられてしまうとは。
時空の扱いは難しく、危険も伴う。
今回は偶々成功したから良いものの、暴発していれば、イサムや俺だけでなく、ワカツ達にまで被害が出ていてもおかしくなかった。
どうやら俺の呪いは、そんなものを使ってでも、勇者には負けたくないらしい。
もうこうなってしまえば、これ以上の被害を出す前に、最短でこの決闘を終わらせるしか他にないようだ。
イサムには悪いが、この決闘、どんな手段を使ってでも即座に勝たせてもらう。
この瞬間、魔王のプランから、ようやっと勇者の勝利が消え失せた。
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