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第1章-23 『決闘直前』

 あれから、僕と魔王は一度部屋に戻った。

 空間を出た頃にはもう辺りは完全に明るくなっていて、他の人がいつ起きてもおかしくなかったからだ。別にやましいことをしていたわけではないが、極力面倒ごとを避けたかったので、お互いこっそりと自分の部屋に戻るようにしたのだ。

 部屋に戻ってから推計1時間、僕はベッドで状況を整理していた……といっても、こんなごちゃごちゃした状況で、考えがまとまるはずもなく、時間だけが過ぎていた。

 そろそろ下の階でも足音がし始めたので、僕も着替えて、何か手伝うことにしよう。

 そう考え、服を着替えてからドアを開ける。

 すると――


「あ」

「あ」


 ほぼ同時に隣の部屋から出てきたのは勇者さんだった。


「おはようございます」

「おはよう。昨日は色々と悪かったな」

「いえいえ。大丈夫ですよ」

「酒が入ってたとはいえ、一般人のいる食事の場面で取り乱し過ぎた。本当に申し訳ない。まぁ、それもこれも全部奴のせいなんだがな」

「あははは」


 先ほどの密会を思い出すと、この場面では苦笑いせずにはいられない。


「で、ワカツはどうしたんだ? まだ朝食には少し早い時間だと思うが……」

「いえ、せっかく早く起きたので、居候させてもらってる立場上、家事の手伝いでも……と。勇者さんは?」

「イサムでいいよ」

「で、ではイサムさんは?」

「俺も同じかな。まぁ、決闘前で落ち着いていられないって言うのが本音だけど。ま、安心しろ。俺がお前の分まであのクソ野郎に謝罪させてやっから」

「あ、え、いや、僕は別に謝ってもらうようなことは無いですから」


 というか、さっき謝罪自体は受けてるんだよなぁ。


「ん? あ、そうか、お前は気づいてなかったのか。アイツが昨晩やったこと」

「え? あの食事中のことですか?」

「あぁ。アイツ、俺らの記憶の覗き見してたんだぜ? まぁ、それ以外にも、戦闘能力や、個人情報に関わることも色々詮索してたようだが……過去を覗き見られることだけは許せなかった。だって、どんな人でも見られたくない過去の1つや2つ、あるもんだろ?」

「は、はぁ」


 反応がしづらかった。

 今の僕には、見られて困るような過去がない。

 というか、何か、過去自体が抜け落ちているかのような気分にすらなる。いや、恐らくは、実際に記憶が抜けているとかではなく、僕の過去には多分質量が無いのだ。

 僕が日本にいたときの過去に、記憶に、僕はイサムさんが自身の過去に向けているほどの感情を注ぐことが出来ないのだ。


「……いや、まだワカツには()()()()()は早いのかもしれないな。俺だって前の世界に召喚されるまでは、見られたくない過去なんてなかったわけだしな」

「かもしれませんね」

「まぁ、いずれワカツにもわかるときが来るさ。人には、絶対に譲れないときが来る。人間はそういう転機を何度も経て大人になるんだよ……って、まだ成人したばかりの俺から言われても響かないかもしれないけどな」 

「いえ、確かに心に留めておきます」

「そうしてくれると嬉しい。 さぁ、そろそろ下に降りようか!」

「はい!」


 そうして、僕とイサムさんはパンの匂いの香る1階へと足を運んだ。


――


「あ、あの! 昨日は、すいませんでした。あの食卓に同席できず、眠ってしまっていて」


 食事を終え、決闘の場である魔の森入口へ向かう途中、ゆりりんに声かけられたかと思えば、開口一番に謝罪が飛んでくる。


「いやいや。昨日の昼は色々とあったからね」

「で、でも、あの食事、また色々とあったんですよね? なんでも、魔王さんの言動に対してイサムさんが怒って手を出したとか……。そんな場面に無防備な男の人を一人ほっぽり出すなんて、魔法天使失格ですね……」

「いや! 絶対にそんなことはないよ! 君は、君は僕を助けてくれたじゃないか。僕が召喚されたあのときも、昨日の昼だって。きっと、それは、誇るべきことなんじゃないかな?」

「そ、そうですかね? 昨日の昼の事を言えば、私は役に立ってはいなかったですし……」

「わからないけど、多分こういうのは、役に立ったとか立たなかったとか、そういうことじゃないと思うんだ。大事なのは、助かったか助けにならなかったかなんだと思う。そして、助けられた僕が、言ってるんだから、それじゃダメなのかな?」


 これは完全に助けられた側の意見だ。

 年下の女の子にこういうことを言うのは、かなり情けない部分もあるのだが、逆に助けられた僕だからこそ言えることだ。


「私もそう言ってもらえると嬉しいです」

「それと、もうひとつ」 

「はい?」

「助けてくれてありがとう。これからも、僕は弱いから、色々と迷惑をかけちゃうかもしれないけど、そのときも、よろしくお願いするよ……って、もちろん僕も自力で助かる努力はしないとダメなんだけどね」

「はい! お互いに頑張りましょう!」


 魔法天使の少女は力いっぱいに笑う。


 僕は、その笑顔に高鳴る心音をこっそりと手で抑え込むのだった。

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