秋葉原ヲタク白書78 ココナツはAV堕ちの匂い
主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。
相棒はメイドカフェの美しきメイド長。
この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第78話です。
今回は、コロナ不況に泣く秋葉原で地下アイドルの失踪が相次ぎ"チョコレーター"の関与が噂されます。
メキシコの死体処理屋"シチューメーカー"の日本版が登場?地下アイドル業界には戦慄が走りますが…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 消えるアイドル
アキバでアイドルが消えている。
アイドルと逝っても地下アイドル、握手&記念写真で日銭を稼ぐアイドル達だ。
誰もがマイクを手に私はアイドルと自称するアキバには様々な種族が棲息スル。
その多くにとり、今回のコロナ禍は大量絶滅を招来する重大事件であったのだ。
その影響は計り知れズ、ヲタク経済の急激な寒冷化により多くの種が絶滅する。
地下アイドルは大量絶滅時代を迎えている。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「あの"地下セレブ"のアリンも姿を消したょねぇ」
「あ、あのお笑いと婚約までして破局、ホスト通いから恐喝未遂までやってたアリン?」
「AVで見かけたけど、尻は汚いし肌のケアも出来てなかったなー」
コロナ全面解除で営業再開した御屋敷で、久々に顔を揃えた常連達が盛り上がってるw
お題は"コロナ消えアイドル"w
ココは、僕の推し(ているメイド)ミユリさんがメイド長を務める御屋敷。
宇宙の歪みを追う先達に準え"重力波検出実験施設バー"とも呼ばれる。
「そー逝えば、ルミカも"KDG148"で、あの名曲"ヘビーロコモーション"を歌ってたのに、いつの間にか消えたょね?」
「え?彼女なら私的アカウントから店外交友の写メ流出があって"活動辞退"に追い込まれてたょ?去年の話だ」
「あ、そのルミカもAV堕ちしてる。しかし、何かパッとしないンだょな。アイドル時代の方が輝いてた。でも"元148"の肩書があると反射的に萌えちゃう俺のカラダはバカだっ!」←
何だかなーw
せっかく、女子が頑張ってルンだから、肩書に惑わされズにチャンとカラダを見ろ!
と、大声で叱咤しつつも横目で見たくなるのがAVだが、何だ!みんなAV堕ちかょ?
結局、誰も消えてナイじゃんw
その傍らでは、僕達の会話に生温かい視線を向けつつカウンターの中と外で女子トーク。
メイド姿のミユリさんと…あれ?誰だろう?パンツスーツの女子はミユリさんのお友達?
昨夜、国営放送のニュースショーで見た顔?
「で、ミユリ。助けが必要なの。力になってくれる人、探偵みたいな人が欲しい。実は、ウチの地下アイドルが最近よく消えるの。今はカリアが行方不明で」
「ええっ?それはタイヘンじゃナイ?ねぇ、詳しく聞かせてょ」
「もう姿が消えて3ヶ月経つの。もう万世橋は諦めて捜してナイみたい」
「何があったの?」
「分からない。最後に目撃されたのは、ライブハウスの楽屋。詳細はファイルにしてあるわ」
「万世橋の見解は?」
「ソレがサ、ヘンなオジサンが現れて連続犯に拉致されたナンて逝うのょ。妙な話だけど、カリアが消えた夜、同じライブに出てたアイドルの子が楽屋に戻ると、独特な匂いがしたそうなの。お菓子を焼いたような匂い。ココナツかナツメグ。それで、万世橋のヘンなオジサンが逝うコトには、他に5人、アイドル行方不明の届出があって、彼女達が消えた楽屋からも同じ匂いがしたンだって。チョコレートを湯煎したような甘ったるい匂い。そのオジサンは、勝手に同一人物による連続犯と決めつけてて"チョコ湯煎用の壺"とか呼んでたわw」
「"チョコ湯煎用の壺"?」
思わず、横から聞いてしまったのは僕だ。
ミユリさんの友達は、僕を見て首を振る。
「有名なメキシコの死体処理屋"シチューメーカー"は、死体をドロドロのスープに溶かして処理スルけど、ソレに準えてるのw」
「あの対立するギャングの死体を週5万円で300体処分したとか逝う人?Yahoo!ニュースで見たわ」
「アキバで行方不明になった地下アイドルもドロドロのチョコに溶かして処理してるのカモょ…」
「で、でも"チョコ湯煎用の壺"でアイドルがチョコになるのかな?そもそもアイドルが入らないでしょ」
「私は、プロモーターでタレントの失踪には慣れてる。刑事事件の可能性も視野に入れてるの。ただ、例えカリアがどうなったとしても、何があったのかは社長として知っておきたいわ」
「あ、テリィ様。コチラは私の古い友人でモプミ。モプミ、コチラは私の御主人様ょ」
「へええぇ。コチラが?あの、有名な…」
どう有名ナンだw
モプミさんは、上野で初めてパンダを見た幼稚園児みたいな顔で僕を見る。
ガン見と逝うか、全く遠慮なくジロジロと見られて思わず赤面してしまうw
「はじめまして」
「あ、コチラこそ」
「どーもどーも」
社会人ポク頭を下げ合うが、フト胸元から下着が見えたら…スゴい谷間だw
多分ワイヤー入りで絶対にミユリさんの天敵に思える大きさだが仲良さげ←
ソレが僕とモプミさんとの最初の出逢いだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日の昼下がり。僕は、僕達の溜まり場"マチガイダサンドウィッチズ"にいる。
ココのホットドッグ、とりわけチリドッグは文字通り、神に召される美味しさだ。
「おはようございます」
「あ、ミユリさん。また僕を尾行したな」
「はい。でも、尾行ではなくてお供です。私はテリィ様のメイドですから」
しれっとした顔で右隣のスツールに座る。
でも出勤前の私服のメイドって…萌える←
「御出張前の腹ごしらえの御時間と思って。私達って、最近ホントに以心伝心ですょね!」
「うーん。何となく御釈迦様の手の平の猿って気分が…ま、良いや。昨日のモプミさんの話だょね?面白い話…だと良いけど?」
「あら?最近は御退屈されてるのですか?ソレは好都合です。何たって、行方不明のアイドル捜索ですょ?しかも、連続事件カモしれないのです!」
「うーん。いよいよ、お釈迦様の手の平に乗せられそう…先ず万世橋へ逝って、モプミさんの逝ってた"ヘンなオジサン"の話を聞くコトから始めるのかな。ま、あくまで、始めるとしたらだけど」
「さすがは、ウチの御主人様です。実は既にアポは入れてあって…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
と逝うワケで、僕は横須賀にいるハズがナゼか私服メイドと万世橋にいる。
コレぞ私服の…ではなくて至福の時間?とか逝う話は、どうでもOKだw
「万世警察の行動科学課?ソンな仰々しい課があったのwコレって、海外ドラマに良く出て来るプロファイラーって奴だょね?ヤハリ白衣とか着てるのかな?」
「ソレはCSIだろ。君は余り警察モノは好きじゃナイみたいだなwドリュだ。よろしく」
「テリィです。鮫の旦那から話は?」
鮫の旦那コト新橋鮫は、万世橋の敏腕刑事だ。
「聞いてる。でも手短かに頼むょ」
「行方不明になったアイドルは、誘拐されたらしいとのコトですが」
「らしいじゃない。アレは誘拐だ」
「貴方のプロファイリング結果を拝見したい。第三者である僕達が見れば、何か発見がアルかもしれない」
「ソコまでだ。悪いが相手はザコじゃない。"チョコ湯煎用の壺"は大物だ。俺達には、何も証拠を残さない。ココナツの香り以外はな。と言うワケで申し訳ないが、民間には情報は明かさない方針なんだ」
「おお、そうでしたか!ただ協力出来れば、と思ってただけなので。コレ以上お時間を取らせては申し訳ナイ。ドリュ捜査官は巨悪の捜査でお忙しそうだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋から出たトコロで、僕は、ミユリさんから怒られるw
「もう少しで資料をもらえそうだったのに!」
「えっ?まさか!あの傲慢兄チャンは、情報は絶対出さナイょ。会った瞬間から、別ルートでの入手を考えてた。あーゆー威張った小役人は、手柄を独り占めしたがるから、例外なく組織では浮くンだ。だから、鮫の旦那の名を語って、彼の周りが勝手に資料を見せてくれるよーに仕掛けた。ホラもう来た。あ、もう1人来た。また来たwコレで3人からオファが来たぞ」
「ホ、ホントですか?あら?みんな同じ資料ですね。余白の落書きだけが違う」
「恐らく課内会議かなんかで、ドリュが熱弁をふるったのだろう。落書きを見る限り、3人とも、かなりドリュに辟易してるよーだ。"バカヤロー"って書いてアルw」
「で、彼のプロファイリング結果は?」
「うーん。詭弁で怠惰と虚栄を語るのみだw恐ろしく中身がナイ。彼は、正真正銘の3流プロファイラーだ」
「収穫は全くゼロですか?」
「こりゃ下手すりゃ連続犯"チョコレーター"自体がドリュの想像の産物カモょ?」
「そこまで仰います?もしや、ドリュ捜査官に何か個人的な恨みでも…私、1度彼と話してみたいのですが」
「どうぞ。まぁプロファイラーの仕事って、誰かを怪物に仕立てて、タイヘンだタイヘンだと騒ぐコトだから、仕方ない面もアル。5人のアイドル蒸発も相互に関連性は無いンじゃナイかな」
「でも、ココナツの甘い香りは?」
「ソレだけが謎として残る。ドリュは、その1点のみに注目、一見無関係な6件の蒸発を紐付けた。ソレが彼の唯一の成果だ」
ミユリさんは、珍しく不満そうな顔で上目遣いで僕を見る。
彼女の"必殺の角度"で、少なからずドキドキしてしまうw
「もしかしたら、さっきドリュ捜査官さんを誤解させたカモしれません。私、彼と逢ったらデートに誘われちゃうカモ」
「TOがいるって…当然逝わないか」
「当然って、どーゆー意味でしょう?」
「彼の前のミユリさんを見れば、別に驚かナイさ。TOとの関係に努力すべき時に、別の男にコスプレを見せたがる。ミユリさんは、コスプレテロリストだ」
「コスプレテロリスト?」
「通常の恋愛を望む育ちなのに、エキセントリックなコスプレ体質がソレを受け容れない。平凡な恋愛に当たる時もあるだろうが、そうなると自分でブチ壊す。常に、自分自身の心の中に葛藤がアル。平凡な恋愛を取るかエキセントリックな恋愛を取るか」
「私は、エキセントリックな恋愛になんか、憧れはありません。ただ、テリィ様と…」
何だか警察署の前で痴話喧嘩してるみたいでカッコ悪いので、後半の話は手短かに要約w
「ソレから、モプミさんからカリアの私物を見せてもらったけど、ヤタラと几帳面な人物みたいだ。キーケースの鍵は3本で、3本共お揃いだが、それぞれにキチンとラベルが貼ってある」
「アパートの鍵でしょうか?」
「ラベルAはアパートの入り口。ラベルBは恐らく自分の部屋。でも、3本目にはラベルがない。悪いンだけど、彼女のアパートへ逝って、何の鍵だか調べて後で連絡をください」
「え?テリィ様は?」
「出張に逝かせてょ。今から追い掛ければ未だ間に合うンだ。行方不明アイドルの部屋って、実は興味津々ではあるけど…」
で、かなり遅れて出張した僕だけど、ヤハリ現場に逝けばよかったと猛省している。
"後悔先に立たズ"と逝うが、部屋にはミユリさんを昔の名で呼ぶ男がいたそうだw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ララァ!」
「マハラジャ?」
「なぜココにいるの?」
最後の文句は、部屋の中と外で異口同音w
あ、ミユリさんはアキバの前は池袋のRPカフェにいて、ララァは彼女の当時のネーム。
ソコは、EICを模したRPカフェで、客が演じる役割の中に"インドの王様"がある。
因みに"ララァ"はベリーダンサーなので、ミユリさんも池袋では"ヘソ出し"コスプレで頑張ってたコトになる。まぁ若かったからな←
ソレから、ミユリさんは決してnew typeではありません。発電器官はアルけど念のため←
「マハラジャ!アキバで何をなさってるの?」
「いや…ソレはその、君を追って来たンだょララァ」
「絶対ウソですね?ソレって」
"マハラジャ"を演じるロジャは、池袋時代のミユリさんのTOだったが、ある日、シヴァなる巨乳メイドに"推し変"してしまう。
"捨てられた"ミユリさんは、池袋を出て、当時やっと萌えだしたアキバに流れ、その、あの、何て逝うか、まぁ僕と出逢うワケだw
万世橋の上で…あ、下だったかなw
「マハラジャは、行方不明のカリアを御存知なの?」
「そんなコトより、ララァは、どうやって鍵を開けたンだ?ピッキング?君って強盗なの?」
「カリアがこの部屋の鍵を持っていたのです。でも、なぜ彼女は貴方の部屋の鍵を持っていたのかしら?」
「えっと、ま、不本意だが警察に通報する。ララァ、もしお互い何も見なかった、不幸な池袋時代のコトなど何も思い出せナイと言ってくれれば、この場は、イカれた元カノがストーカー化して押し掛けて来たけど、僕が説得して追っ払った、って線で警察には話しとくけど?」
「誰がイカれた元カノなんですか?警察って万世橋でしょ?日頃色々とお手伝いしてるから、マハラジャのコトも、もっと上手に脚色してあげますょ?」
ココで、ミユリさんはワザと語調を落とし、ワケ知り顔で意味深長な視線ビームを発射。
「…このお部屋のステキな甘い香りのコトも含めてね。そうそう。余りに甘い香りがスルので、最近、万世橋で"チョコレーター"と呼ばれて大騒ぎになってる重大容疑者のコトを思い出してしまったわ。この匂いを嗅いだら、万世橋の鑑識は、きっと大喜びスルでしょうね。さ、通報はマハラジャがなさいます?ソレとも私が?」
ミユリさんの話を聞いたマハラジャの狼狽ぶりは正に目を覆うばかり(だったとのコト)。
「ララァ。アキバに来て、君は随分とエゲツなくなったな。池袋時代は、もっとウブで(薬についても)控え目なメイドだったのに…僕に何が聞きたい?」
「あら。ヘソ出しコスの踊り子の何処が、そんなにウブだったのでしょう?ただ、カリアとマハラジャの関係を少し教えて欲しいだけですわ」
「…浮気は嫌だった。と言うより池袋で懲りた。でも、彼女は、この部屋の直ぐ下の階にいて…余りにも素晴らしい"器"の持主だったンだ」
「だから"器"ごと"溶かした"の?」
「"溶かす"?何のコトだ?チョコの湯煎じゃあるまいし。今時バレンタインかょ?彼女が消えたのは確か…」
「7月6日」
「私は、ロケハンで首都高目黒線の高架下にいた。カリアの消息がわかったら教えてくれ。俺も心配してルンだ」
第2章 消えたカリア
結局、ミユリさんが通報し、2人は万世橋からコッテリ事情聴取されたらしいが、その後、ミユリさんにドリュからお呼び出しがw
「警察無線でココナツって言葉が出たら、現場に出向いて、関係者から直接話を聞くようにしてルンだ。何たって、俺は現場主義だからね。事件は、会議室じゃなく現場で起きルンだ」
「ソレぞココナツ主義ですね!お陰様で、現場で"ココナツ"とか"甘い匂い"とか散々連発した甲斐がありましたわ」
「ココナツだけじゃない。他の言葉も拾うようにしてたさ。"コパトーン"とか"焼き菓子"とかもだ」
「また、地下アイドルの行方不明は続くって予想していたのですね?」
「予想などしていない。ただ、論理を組み立てるだけだ。ソレがプロファイラーと逝うモノだ…君の方は何か収穫があったか」
「私?私は、あくまでアマチュアですから」
「君の池袋時代の御主人様のアリバイは確認された。今回の"甘い香り"とは無関係と断定した。今度会ったら、警察がそう逝ってたと伝えて安心させてあげなさい」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
早速、ミユリさんは"朗報"を伝えに、昼下がりの御屋敷に"マハラジャ"を呼び出す。
「ララァ」
「マハラジャ。万世橋の知合いに聞いたら貴方は無罪だって。良かったわね」
「マジ?ホントか?何でかワカランが、助かった!ところで、ララァは今、探偵みたいなコトをして警察の手伝いをしてるそーだね。実は、トラブルを抱えてルンだけど?」
「深刻なトラブルかしら?」
「そうでもないケド…実は所属タレントの個人情報を盗まれた。現場で健康診断の血液型が違ってて気づいたンだ。悪用される恐れもあるから、よければ調べてくれないか。料金は払うよ」
「要らないわ。でも、今は忙しいから後でも良いかしら」
「助かる。会えてよかった」
聞くコトだけ聞いて、頼むコトだけ頼み、ついでに支払いもせズにロジャは消える。
一部始終をカウンター席から横目で見ながら聞き耳立ててた僕はミユリさんと合流。
僕も、深呼吸して単刀直入w
「ミユリさんとマハラジャとは…その、あの、致したの?」
「実は2年ほどメイドとしてお仕えしたら…突然、婚約指輪を頂戴しましてwその時にナンダカンダで…その、えっと、ハイ、致しました」←
「ええっ?ミユリさんって、プロポーズを断ってアキバに出て来たのかw知らなかったょソンな話」
「私も、テリィ様がアキバにお見えになった理由は存じてませんし」
すげぇ返しだw
「実は…サイバー屋のスピアにカリアの裏アカ(ウント)を探してもらったンだけど、どうやら"不倫3P"をやってたみたいだ」
「"不倫3P"?」
「YES。相手はモチロン"マハラジャ"ことロジャなんだけど、そのロジャをカリアはもう1人の女と責めてたらしい」
「まぁ。お盛んなコトで。でも、3Pって2人目の女は赤の他人が原則でしょ?」
「うん。で、その女の闇サイトでのHNが"チョコレーター"ナンだ」
「ええっ?アイドル失踪と何か関係が…」
「わからない。もう少し調べてみないと。あ、ソレからロジャだけど…」
「彼が何か?」
「今は、AV監督をやってるらしいょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ロジャ監督ですょね?ええ。彼はAV監督ですね。ヒロピンものとか得意ですょ」
「ヒロピンって、ヒロインピンチだっけ?女子隊員が捕まって十字架に磔になり人質にされちゃう奴だょね?」
「女スパイが捕まって拷問されちゃうパターンもお約束です」
ミユリさんが"マハラジャ"ごっこをやってる間に、僕はAV監督事情をおさらいスル。
講師は、フリーディレクターのスズキくんで彼にはミニコミ誌時代からの貸しがアル。
しかし、貸しを返してもらう以前に、スズキくんの話が止まらない状態ナンですけどw
「ヒロピンAVのコトなら何でも聞いてください!そもそも、この業界の監督って、AVメーカーの社員監督以外は、大半は演出からカメラ、下手すりゃ男優までこなすフリーのディレクターなんです。実は、僕も…」
「ええっ?!ま、まさか、スズキくんもAV男優なの?」
「ええ。怪人の着グルミの中ですが」
ソ、ソレも男優って逝うのか?
「先ず、ヒロピン3分類に従い、ヒロピンマーケットを俯瞰しますと…」
「待った!何だょそのヒロピン3分類って?」
「だ・か・ら!"魔法少女系"と"スーパー戦隊系"と"アメコミ系"ですよっ!」
因みに"ヒロピンの王道セーラー戦士"は"魔法少女系"のトップに分類されるそうだ。
「で、ロジャ監督はセーラー戦士モノの名手で、旬を過ぎたメイドに声をかけては自分のヒロピンAVに出演させる、いわゆる"ヒロピン落とし"が得意技です」
「おお!もしや稀代のナンパ師なのか?ついでに自衛官募集も得意だったりして」
「まぁ監督自身もナンパでしょうが、噂じゃ凄腕の女コーディネーターがいて、ソイツが目ぼしいメイドに声をかけては、ヒロピンAVに落としてるらしいです」
そんな便利なコーディネーターがいるの?
さぞかしナンパの達人では?あ、女性かw
「何でも業界筋じゃ"チョコレーター"と呼ばれる敏腕コーディネーターだそうです。どんな人なんだろ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
さて。
いよいよ、僕も"マハラジャ"ことロジャ監督と、直接対話する必要がありそうだ。
実は、前にもロジャとは会ったコトがあり、傷心の彼を池袋に送り返したりしてる。
ミユリさんの今カレvs元カレ対決の舞台は…
メイドからコロナが出て大騒ぎの@ポエムw
「えー。全く気が進みませんが、お元気ですか?貴方が、年増メイドを片っ端からAV落ちさせてるって逝う話の真相を聞きに来ました!」
「そんな聞かれ方をされて、私が素直に話すと思うか?そのカリアとか言う地下アイドルをヒロピン落ちさせたかどーか、全く記憶にございません」
「そんなに無茶なリクエストだとは思ってナイょ。恐らく、貴方の相棒である"チョコレーター"は、AV現役時代に親バレで契約期間満了を待たずに活動停止からの引退に追い込まれ、その後はAVメーカー広報を振り出しに、撮影現場やプロダクションのマネージャーを経て、今は貴方の右腕コーディネーターに収まる…ざっとこんな感じの人生では無いでしょうか?」
ロジャ監督は絶句スルw
「す、すごい!ナイスプロファイリング!まるで海外ドラマに出て来る凄腕プロファイラーじゃナイか!テリィたん、すげぇ!」
「やっぱり?しかし、今さら"面接回り"で営業するワケでも無いし、彼女も失うモノなど無いハズだ。万世橋の新橋鮫は僕達の身内です」
「おぉ!鮫と知り合い?そーなのか?」
「鮫の旦那の口利きは、役に立つょ?君が何かを話してくれるだけで、カリアの事務所の社長さんも気持ちの整理がつけられる。あ、万一、服役した場合には、イライラ解消には文通が良いみたいだ。手紙は熟考した思いが伝わる、素晴らしい通信手段ナンだ」
「うーん。実は刑務所の中に緑化班ってのがアルらしくて、もし服役したらソレに入りたいと思ってルンだけど…口を効いてくれませんか?」
「えっ?ロジャって花を植える趣味がアルのか?」
「いや。時々外に出られるらしくて」←
「モチロン、鮫の旦那の電話1本で心ゆくまで園芸が楽しめるようにしてあげられる」
「わかった!実は…俺はアチコチから頼まれて、曰く付きの地下アイドルやワケありメイドを始末する闇商売をしてイル。ただし、何処に始末したかとかはワカラン。基本的に外注なので」
「外注?他に実行犯がいるのか?」
「ソレが、先程から君が口にする敏腕コーディネーター、通称"チョコレーター"だ。大抵の子は"ヒロピン落ち"させて終わりだが、中には荒療治を要求スル客もいるからね」
「何?"チョコレーター"って、AV堕ちさせる口説き屋かと思ってたら、アフターの処理を行う処理屋だったのか?!」
「YES。ところが"チョコレーター"は"溶かす"時は異常に熱心ナンだが、ソレ以外は割と雑な女で、バラして神田川に撒いたりして、梅雨の大雨でプカプカ浮いて来て困ったりした。毎回ヒヤヒヤだ」
「おい!カリアは?カリアのコトはどー処理したンだ?」
「カリア?あのモプミさんのトコロの地下アイドルか。彼女は余りに生意気で1回3Pやってプライドをズタズタにしてから…あ、あれ?メロンソーダの味がしない?」
突然、ロジャは手にしたソーダのコップを取り落とし、急に喉を掻き毟って苦しみ出すw
見た目にも、明らかに高熱を発症したコトは明白だが…コ、コレは、もしや新型コロナ?
わぁ!7時のニュースに濃厚接触者で出そうw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の御屋敷。
ミユリさんが床に倒れて"死んでる"w
虚ろな目は天井を向き、血を吐いた跡。
「ミユリ姉様、動かないで!ハイ、素晴らしい"死相"です!」
「ちょっと何なの、つぼみん。ダメよ。笑わせないで」
「ミユリさん、喋るなw傷口に塗った豚の血を固めたいンだ。も少し辛抱して。よーし。良い絵が撮れた!」
ロジャがコロナ発症で隔離され文字通り僕の眼前でチョコレーターの手がかりが絶える。
一計を案じた僕は、チョコレーターを念頭に"闇サイト"に募集広告を打つコトにする。
御案内の通り"闇サイト"では麻薬売買に殺人依頼、さらに人身売買とかが取引される。
有名"闇"サイトは、当局の手で閉鎖されては次々復活し、永遠のイタチごっこが続く。
ソコにミユリさんの写真を投稿する。
"死体みたいな恋人のAV堕ち希望"
「助かったわ、つぼみん」
「いいンですょ」
「動くな!豚の血が固まらない」
第3章 僕のメイドに手を出すな
直ぐチョコレーターから有力な返事が来るw
コロナ不況で、あらゆる事業継続が困難化する中、現金収入は貴重なのだ。
ミユリさん自身のクォリティもズ抜けて高いが今回は髪で顔が隠れているw
ところが、約束した"マチガイダサンドウィッチズ"にミユリさんと逝くと現れたのは…
「ミユリさん!」
「ドリュ捜査官?」
「ん?君達は?」
何と、プロファイラーのドリュ捜査官だょ。
しかも…上から下までUNIQLOでキメてるw
日曜の折込チラシから抜け出たようだw
聞けば"闇サイト"で怪しい募集広告を見つけ覆面捜査に乗り出したとのコト。
確かに筋は通るケド…まさか僕に隠れてミユリさんと会うつもりだったのでは?
「いい加減にしてください!ドリュさんのやるコトを悪い方にばかりとらないで!」
「いや、ミユリさん。覆面捜査とは、いつも誤解を生むモノだ。そんなコトより、今度は"令和広場"でココナツの匂いがスルとの通報だ。来るかい?」
「はい。喜んで」
ミユリさんとドリュは、手を取り合うようにして出掛け、僕はポツンと残される。
うーん。今回も仕掛けは良かったのだが…でも、物事を結果だけでは判断するなw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「先程、令和広場の管理者から多数の薬莢が落ちてるとの通報があったンだ」
「薬莢?何か別の事件ではナイですか?」
「現場はココナツの匂いがスゴかったらしい。ソレで、俺にも連絡が来た」
"秋葉原中央令和広場"は、雑居ビルが1本取り壊しになった後を公園化した広場。
ビルに囲まれた谷底に、今は万世橋が黄色いテープの非常線を張って現場検証中だ。
「ココは、夜はドラッグ市場になるンです。昨夜、取引でモメたのかもしれない。何かあれば声をかけてください、ドリュ捜査官」
「どうも。あ、彼女も入れてくれ。行動科学課の協力者だ」
「しかし、ヒドいココナツの匂いですな…はい、どーぞ。テープをくぐって、お嬢さん」
ドリュは鼻を摘み現場の制服警官と話しながら、ミユリさんを非常線の中に招き入れる。
「しかし、確かにココナツの匂いが優勢だけど、こーゆー現場はストリッパーと同じで、踊り子にライトが当たると他の全てが誤魔化されてしまう。我々は、他の全ての成分を割り出す必要がある」
「え?他の成分って何かしら?ところで、ドリュさんはストリップとか逝くの?」
「化学薬品だ。微かに漂白剤の匂いがする。金属製のモノだ。ソレに、他より強い臭いが1つある。ストリップは大好きさ。俺はストリップヲタクだ」
「まぁ軽くショック…で、その強い匂いとは?」
「水酸化ナトリウム。強塩基性で別名苛性ソーダだ。死体を溶かすほど強力。実は、警察が殺人現場の清掃で使ってる業者さんからも同じ匂いがスル」
「と逝うコトは、犯罪者側も同様の"業者"を使ってるカモしれませんね?有名なメキシコの…」
「"シチューメーカー"か?殺人が日常茶飯事の海外の犯罪組織が顧客なら、ビジネスとしても成立するだろう。独自に発明した溶剤で死体を溶かして現場をきれいに片付けるそうだ」
「しかし、ソレが、地下アイドルが消えた後の臭いの正体だとすると…」
「アキバの"チョコレーター"は、独自成分の匂いを消すためココナツミックス液を混ぜているのだろう」
「では"チョコレーター"は、独自のココナツミックス液で死体を処分スル業者サンと逝うコト?」
「コレはチャンスだ!6つの地下アイドル失踪事件は、実は氷山の一角で"チョコレーター"は、他に数百の犯罪に関わってる可能性がアル。もしかして、AV落ちしたストリッパー情報の宝庫カモしれない」
ドリュが"ストリッパー"を連呼する度にミユリさんは引いてるがガサツな彼は気づかズにミユリさんの歎息は大きくなるばかりだ。
「ドリュさん、ちょっちお話が…出来れば2人だけで」
「え、何?」
「少し広場から離れたトコロで…」
ミユリさんとドリュは、再び非常線をくぐって令和広場を出ると、暗い夜道を歩き出す。
「実は"チョコレーター"に死体を処分させてる人と付き合いがありまして…」
「ええっ?!"チョコレーター"に発注者がいるの?」
「発注者と逝うか、恋人と逝うか、内縁の夫婦と逝うか、単なる3P相手なのか…実は、私の池袋時代の元カレなんですけど」
「はあぁ?!な、何を言い出すンだ?もしかして、その男と君と"チョコレーター"で3Pをしたのか?うーむ事実はストリップより奇ナリ…羨ましい」
ますます、話はヘンな方向へと転がる。
ミユリさんの歎息は大きくなるばかり。
「とにかく!その人がハッキングされて顧客情報が流出したンですが、犯人捜しをリクエストされて、顔認証ソフトとか使って調べてたらSNSの写真がヒットしたのです。で、そのハッカーも実は私の知合いで…彼女の名はシヴァ」
「スゴい!ソイツが"チョコレーター"なのカモょ?しかし、ソンな大事なコトを何故こんな暗がりで…」
「ソレは、こーなるからょ!」
最後の声は物陰からで、次の瞬間、ドリュ捜査官は金属棒で後頭部を殴られて昏倒する。
振り向いたミユリさんの頭にはズボッと麻袋が被せられ両脇からガッチリ腕を掴まれる。
「やっと私まで辿り着けたわね?見ててヒヤヒヤしちゃった。久しぶりだね、ミユリ」
現れた女は…シヴァだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、僕は推しがそんな目に遭ってるとはツユ知らず、別の切り口から単独で捜査中。
区民センターの人気講座"相撲エクササイズ"の会場に凄腕情報屋のドレミさんを訪問。
「ココナツでハイに?ええ、なれるわょ。ちょっち加工が必要だけど…決して最高ではナイけど、大量に摂取すれば少しなら飛べるわ。幻覚も見れるカモしれない」
「ドレミちゃん、昨夜、令和広場で薬の出入りがあったみたいだけど、何処のドラッグディーラーかわかるかな?」
「あらぁ。テリィたんがドラッグ?ねえねえ。ミユリさんは知ってるの?後で怒られるの、私、嫌だからね…でも!やっとテリィたんもミュージシャンの仲間入りか」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ドレミさんに教わった薬屋のアジトは、パーツ通り裏の雑居ビル4Fにある。
狭い階段を肩をスボめて登ると、場違いな甘い匂いがドンドン強烈になるw
登り切った暗がりで耳をすますと、薄いドアの向こうで低い声の罵り合いが聞こえる。
ままょとドアを蹴り開け踏み込めば、細長い部屋にドラム缶を囲む男達と2名の女子。
女子の片割れは間違いなくミユリさんだ。
見ると、後ろ手に手錠をかけられている。
咄嗟に叫ぶ。
「僕のメイドに手を出すな!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「あらあ。テリィたん、貴方まで"溶けに"来たの?バカなの?」
「テリィ様!シヴァが"チョコレーター"ですっ!気をつけて!」
「やぁシヴァ。すっかりアキバの地下に馴染んだね。もう池袋には戻らないのか?」
シヴァは、池袋の巨乳メイドで、当時ミユリさん推しだった"マハラジャ"ことロジャは乳に転んでシヴァに"乗り換える"のだが…
その後、アキバの新興宗教"洪水の化学"大教祖と恋に落ちた彼女はロジャを捨て胸をツルペタにするが確か最後はフラれたのでは?
流れ流れてこんなトコロで死体処理をw
まぁやっとロジャとは添い遂げたワケ?
「シヴァ。もう終わりだ。その手を止めろ」
「死体処理の準備中は邪魔しないで」
「ごめんな。でも、もう直ぐ万世橋がココに殺到スル」
「ウソよ。ミユリの新しい彼なら、ホラ、白眼をむいてソコでノビてる。少し強く殴り過ぎたかしら」
「あのな。ミユリさんのTOは、今までもコレからもズッと僕だ。僕は、決して乳にナビかナイ」
「テリィたんって…貴方は警官なの?」
「単なる通りがかりのヲタクです。君が今やってる仕事について聞きたい。実に、芸術的センスの求められる仕事だ」
「何の話?」
「死体を溶かしてるだろ?」
「なぜ、そうやって話の核心をつくの。もう何も喋れナイわ」
「その棚の前からどいてくれ。片方だけ鍵がかかってるオカシな棚の前から。おい、誰か!後で鮫の旦那に口を利いて欲しけりゃ、ソコの扉の鍵を開けろ」
弾かれたように黒装束の男が棚の扉を開けると、中はギッシリと大容量のポリタンクだ。
「コレがココナツミックス液か。この甘い匂いの源泉だな?みんなは色々逝うご、僕には焼きたてパンプキンパイの匂いにしか思えナイ。しかし、やっとコレで君達の企業秘密を見つけたぞ」
「モノホンの警官が来るまで、もう何も答えない。因みに、この戸棚は施錠されてた」
「いや。最初から開いてたょ?」
「え?君らは嘘つき」
「貴女もね…ってか、ソレ、AV女優のグループょね?最近、見ないけど」
「テリィたん。貴方もアキバの地下を知ってるでしょ?余りに凄惨ょ。憎しみ。悲しみ。嫉妬。焦燥。私はね、この世の地獄をキレイにする掃除屋さんをしてただけ」
「でも、ソレは誰のタメだ?犯罪者のために現場の証拠を消してただけじゃナイか」
「だって、悪党の方が払いが良いのょ」
「シヴァ自身が誰かを殺したワケじゃナイ。もし、君に処分を依頼した人物の名前を逝うなら、然るべき筋に口添えも出来る」
「私は、何もしてないわ。だって、証拠はナイでしょ?ココナツの匂いがしただけじゃない?どのケーキ屋にもココナツはある。アキバ中のパティシエを尋問するの?」
「シヴァには気の毒だけど、ロジャに仕事を依頼した客は異常に多い。例えば、一昨年、浅草橋のキャバクラが"嬢"のグループをデビューさせアキバ進出の拠点づくりを画策したが、(アキバの新幹線の)ガード下も同様の風俗嬢グループのプロジェクトを始動させ、抗争が勃発した。ところが、浅草橋側のブレーンが数ヶ月後、全員消えてる」
「こ、殺されたの?ソレもロジャが掃除を頼まれたの?確かに"嬢"の方は、私がAV堕ちさせた覚えがアルけど…」
「真相は闇だが、噂では神田川沿いのレストランの裏が現場らしくて…刑事がベーカリーのような匂いがしたと報告してる」
「わ、悪いけど!私には何の話かさっぱりワカラナイわ!私は、AVメーカーでマネージャーをやってた頃、何人か風俗堕ちの口利きをしただけで…その後ロジャから引き継いだ"原液"を継ぎ足し継ぎ足して使ってるだけなの」
「おいおい。鰻屋のタレじゃ無いンだぞ!シヴァ。君は珍しいタイプだ。完全に池袋と決別し、そうやってアキバで新しい立ち位置を築いた。僕達は、君の幅広い客層の中から、誰とでも取引が出来る。でも、今ココで君がロジャに頼まれたコトを話してくれるなら、全てを免責にするように口を利いても良いょ」
「ウソょ。全部ウソだわ」
「コレは、先着1名のみが大いに得をするババ抜きだ。何故か?君が何をしていても罪を免れる。なぜか?警察の狙いはロジャだけだからだ。なぜか?ロジャを捕まえれば、彼は取引に出て、引き換えに大勢の情報を話す。シヴァ、君の犯したコト全てをロジャが教えてくれる。だから、君が最後までババを温めていても、ゲームに負けるだけだ」
「テリィたん…」
「いずれ誰かが話す。もし、知ってるコトを話すのなら、今がチャンスだ」
第4章 恋するテロリスト
シヴァは、駆けつけた新橋鮫に全てを話し、気を失ったドリュを引き渡す。
供述に拠れば、彼女は基本的に"売人"で生計を立てていた、とのコトだ。
つまり、彼女から漂う"甘い匂い"はコカイン由来のモノなのだ。
もちろん、ソレを"原液"に混合するコトを思いついたのも彼女。
彼女はAV堕ちの口利き料も稼ぐが内縁関係にあるロジャに貢がされている。
そして、最後が問題の"溶かし"だが、コレは、その、あの、詳細は不明w
翌日の御屋敷。
「カリアは"チョコレーター"が何人も売れないアイドルをヒロピン落ちさせていると知って、黙ってられずに告発を試みるも直前に消されたらしい」
「カリアの企みに気づいたロジャが"チョコレーター"に警告したのカモ」
「そして"チョコレーター"はカリアを"溶かす"決心をしたんだ。でも…」
「でも?」
「でも、彼女は今、名前を変えて神田駅前にいる。AVで止まらズ風俗まで堕ちたケド生きてる。元気に頑張ってるょ」
「あら。テリィ様は神田駅前絡みだと妙にお詳しいのですね?まぁ良いわ…あら、御髪が濡れて…」
「ええっ?!しまった!」
「ウソぴょん。ロジャは、どうなるのでしょう?」
「もちろん、起訴される。あとは"溶かし具合"次第だ。でも、僕達は、シヴァが司法取引したと逝うコトも含めて、全てを忘れた方が賢いカモ。まぁ僕に出来るコトと逝えば…」
「あら?何か仕掛けたのですか?」
「いや。スズキくんがさ、昔取った杵柄で何かお役に立てますか、ってシツコイから…」
僕は、ミニコミ誌"ヲタポケ"の付箋をつけたページを開く。
見開きで"不倫監督、愛人をAVに出演させる"の文字が踊る。
「うーん。我ながら素晴らしい見出しだな。コレこそ社会的制裁と呼ぶべきモノだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
例の雑居ビルに鑑識が入って、検視官達は排水口に引っかかっていた人工腱を見つける。
溶けない繊維で出来た腱からDNAの検出は不可能で、完全に痕跡が消されていたそうだ。
"チョコレーター"の掃除は完璧だ。
そのための技術も漏らさズ備えてる。
"秋葉原で殺人に関する衝撃的な証言がありました。警察筋からの情報に拠りますと、被害者から殺害の痕跡を消すため"チョコレーター"と呼ばれる、極めて特殊な技術を有する集団が…"
マスコミは連日この話題で持ち切り。
でも、ミユリさんの機嫌が治らないw
「確かに、私はエキセントリックな恋愛への憧れも多少あるカモしれません。でも、並みのヲタク生活と両立できると確信しています」
「そーだょ!ミユリさんなら両立は可能だ!その通りだ!」
「でも…テリィ様は、私がコスプレテロリストだと仰ったのょ?」
「タダの例えだ。しかも、助言のつもりだった。無理をするミユリさんに胸が痛み、指摘したまでだ」
「無理などしていません。私はメイドとしてお仕えして幸せなのです」
「幸せにも、いろんな形がある。自分が素直になれる形を探す努力を怠ってはイケナイ」
「…で。結局、私はコスプレテロリストなのでしょ?」
ミユリさんは怒ってるw
でも、仕方がナイだろ?
ヲタクは、みんなテロリストなんだからさ。
おしまい
今回は海外ドラマでよくモチーフになる"プロファイラー"をネタに、新橋鮫の同僚プロファイラー、死体処理屋"チョコレーター"、彼女を操るAV監督、失踪する地下アイドル、所属事務所の女社長などが登場しました。
海外ドラマで見かけるNYの都市風景を、コロナで経済失速下の秋葉原に当てはめて展開しています。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。