決意の第七話
場所は砦前。薄暗い早朝とあって閑散とした砦前に、三人の弓使いの姿があった。
「今日お前らをここに集めたのは、確認のためだ。」
おもむろにミルズが口を開く。
「確認?何のですか?」
要領をえない言葉に首を傾げながらダイパが聞く。
「お前らの意思、だ。」
そこで一度言葉を切り、少し溜めてから形の整った唇が動く。
「今から、お前らに初クエストを受けてもらう。」
「クエストぉ?」
カロスが唐突なミルズの言葉にもっと首を傾げる。
「そうだ。これまでは安全なソム狩りをしていたが、弓使いが生業とする危険なクエストはわけが違う。」
真剣な空気に、さしものダイパも口を挟まず、次の言葉を待つ。
「当然、行くとなれば私もついて行くが、命の保証はできない。守れる範囲しか守れないからな。」
一瞬、整った横顔に悲痛な色を浮かべると、瞬く間にいつもの厳しい顔つきに戻る。
「だから、命を張る覚悟はできているか、と聞いているんだ。」
いつもの脅し文句よりさらに本気の言葉を聞いている二人は、場違いな微笑みをたたえていた。
何を笑っている、と叫ぼうとするミルズを、手で制し、
「ははっ、あぁ、失礼しました。いえ、ミルズさん、そうやって厳しく突っぱねてるの、わざとですよね?」
まるで見透かすようにカロスが言った。
唖然とするミルズに畳み掛けるように、ダイパが
「知ってるんですよ、狩りのとき、俺らを守ってくれていること。」
「俺達に教えるために、毎日自分で練習していること。」
「ミルズさんが思ってるより、俺らはミルズさんを知っているってことを、覚えてください。」
「ッ・・・!」
嬉しいのと悲しいのをないまぜにしたようなくしゃくしゃの顔で、声にならない声を発したミルズを見つめ、微笑み、次に少し真剣な顔にして、
「危険な仕事を任された、ということは自覚しています。初めは面倒でやめようかとばかり思っていました。だから、貴方の前では弱音なんて言いたくない。」
「言わせないでください、ミルズさん。・・・さあ、そろそろ行かないと、いつまでもここにいるわけにはいきませんから」
「ッ・・・!あぁ、そうだな。詳しい説明は砦内でだッ!行くぞッ!」
「ハイッ!」
まだ頬の赤いままのミルズが足早に砦に行くのを急いでついていく。
三人の行く先を願うように、空の太陽が輝いた。