修練の第六話
ソムに矢を見事に当ててみせた二人は高ぶるというより浮かれた気持ちを抑えつつ、矢を回収し、拭いていた。
「狙って当てたわけでは無いにせよ、初射を当てたな。だが、浮かれるんじゃあないぞ。」
「ハイッ!分かってます!」
カロスが一ヶ月かけて身についた素早い返事を返すと、二人同時に矢拭きを終える。
「終わったな?では、今日から本格的に弓を教えるッ!良いか、ここは砦の外だ。危険な動物も当然存在する。だがッ!お前らはもう護られる側では無いッ!砦を出た時から、否ッ!弓使いになると決めたその時から、お前らは護られる側ではなくなったッ!忘れるんじゃあないぞッ!」
いつもの脅し文句を合図に、弓の練習が始まった。
和弓と洋弓の間のような2mほどの弓を、上下を逆に持って呆れられるところから始まり、矢のつがえ方や離れ方、弓手や馬手の握り方など、正に基礎であり、同時に核でもある部分から厳しく、しかし懇切丁寧に教えられる。
時折実践としてソムを狩りつつ、気が付けばその調子でもう二ヶ月が経過していた。
二人の腕はソム程度ならば一本も外さず当てることができるほどに成長していた。
砦の外でありながら危険な動物に出会っていないのは、ミルズが休憩時間に周辺の動物を狩っているためであった。
「今日の練習は終わりだッ!・・・明日の集合場所は砦前だ。」
いつもとは違う集合場所。練習から一週間が経過してからというもの、集合場所は現地である砦外だったのに、
「なんだって今になって集合場所を・・・」
「明日、来ればわかる。」
端的にそう言われ思わず押し黙る。
明日が少々不安であるが、その日も慎ましく終わっていった。
夜、いつもならば光り輝く星々が雲に隠れて見えなかった。