予感の第四話
そうして一日目が始まった。
とはいえ、始めから技術的な事を教える気は無いらしく、体力作りからのスタートだった。
幸い、カロスは生まれ持った身体がそれなりで、ガタイも悪くないため、全く才能が無いというふうでは無かった。
ダイパの方も日々カロスを暇なときに追いかけ回してみたり、意味も無く大きな岩を持ち上げるために筋肉をつけてみたりと運動はしていたので、体力はそれなりだった。
だが、二人ともある重要なものが無かった。
───根性だ。
二人とも16歳であり、本来ならばもう二年も前には正式に職に就いている時期であろうに、のうのうと暮らしてきた二人には、根性などあろうはずもないのだ。
体力的には大したことはなくとも、精神が一日目にしてやられている彼らは、この調子では3日も続くどうかといったところで、そこはミルズも改善を検討している。
そんなことを考えている間に、昼時となった。
「やめッ!ここで一度休憩をする。休息もろくにできん奴が良い弓を引けると思うなよッ!」
「ありがとうございますぅ・・・」
ズルズルとその場に座り込んで返事をしたダイパとカロスは村長の厚意で貰った握り飯にかぶりついてからはしばらく無言で食べ続けていたが、ふいにダイパが口を開いた。
「明日から飯はどうするかなぁ・・・」
「親に事情話して・・・ってお前の親は居ないんだっけか」
と言っても、ダイパの親は決してなくなったわけではなく、村から離れた町で商売をしているため、仕送りは来るが普段は居ない。
「そうなんだよなぁ・・・まぁ、自分で作ってみるよ」
いきあたりばったりなその思考に、「そうか」としか返せぬまま、午後の練習も無事終わっていった。
その日の夜は珍しく雷雨だった。
しばらく続いた雷雨は、最後に村の近くに落ちたあと、止んでいった。