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私はスライムを愛でたい  作者: ものぽりー
スライム愛を抱えたまま死亡、転生
4/6

転生手続きで運を使い果たす

前の話より、雰囲気明るく。


 ゲートの先には長い廊下があり、扉がいくつもあった。

 いずれも『転生手続き』となっていて、1から…見えるだけで15まではある。

 どうやら転生手続きは個室で行われるようだった。

 私も数人並んでいる列の最後尾に並んだ。



「次の方、赤いランプの点灯しているお部屋にどうぞ―」


 扉の上にはパトライトがついていて、部屋が空くと点灯して教えてくれるらしい。

 手前の『転生手続き2』の扉のパトライトが光っている。

 ……もっと別のライトはなかったんだろうか、赤いパトライトって明らかに入ったらアウトな印象だ。



 再び待つこと30分程度。


「次の方、赤いランプの点灯しているお部屋にどうぞ―」


 もはやそれ以外には喋れないのではと疑うほど定型文な職員さんの案内と、廊下のはるか先で点灯したパトライトを目印に、順番の回ってきた私は進んだ。




 『転生手続き25』の扉の前に立つ。

 パトライトがまぶし過ぎて目に痛いので、躊躇うことなくドアノブを回す。


「失礼しまー………」


 中に足を踏み入れると、思ったより広めの部屋。

 その中心に、思ったより存在感のある……巨大なくじ引きマシーン。


 天井スレスレの高さまである、部屋の7割を占めるドーム状の丸いガラス。

 その中には、三角形の紙がそれはもう大量に舞いあがっていて。


 ……え、福引会場?




「お待たせしましたー。転生手続きですねー。プレートをお預かりしまーす」


 ちょっと反応に困って固まっていたら、どこからか声が聞こえた。

 と、ひょこっとドームの影から眼鏡のお姉さんが顔を出した。

 緩いサイドの三つ編みで、ほんわりした感じ。

 …この緩さ、本当に地元の福引会場に来たような気分だ。


「ええーと、手続きを担当します、リリンですー。手続きのやり方聞いてますー?あ、聞いてない?簡単ですよ、くじを引くだけですっ」


 マイペースな職員さんは、私の手からさりげなくプレートを奪い取ると、かなりアバウトな説明をしてくれた。

 アバウトすぎて、何から聞けばいいかが行方不明だ。


「じゃあまず場所いきますねー。どうぞー!」

「どうぞと言われても」


 せめてどうやってくじを引くのか教えてください。






「はい、5枚揃いました。お疲れ様です!」


 ガラスのドームは、正確にはガラスではなかったようで、どこからでも手を突っ込めるようになっていた。ちなみに突っ込んだら迅速にくじを1枚引っ張り出さないと、大量のくじが手にビシバシ当たってきて大ダメージだった。

 そして中から1枚くじを引くと、一瞬で中のくじの色が変わる。

 最初は赤。続いて1枚引くごとに緑、紫、青、黄と変わっていき、最後に赤に戻った。

 何でも、一瞬でドームの中のくじが入れ替わっているらしく、赤から順番に転生後の転生先・種族・性別・能力値・運を決める為のものらしい。


「ではでは、お待ちかねの結果発表ですよー!うおー!!」


 くじ引き最中からずっと、いや部屋に踏み入れた瞬間からずっと、この人…リリンはこのテンションだ。

 対して私は確認事項を2、3質問するだけだった。

 例えるなら電池を変えたばかりのシンバルを叩くサルの人形と、充電の切れかけたaiboくらい温度差がある。

 私なら確実にめげる。リリンのメンタルは、きっとオリハルコン製だ。


 と、私がテンションについていけなさ過ぎて逃避している間に、リリンが全てのくじを開封していた。



「こ…これは…っ!!」


 リリンは心底驚きました愕然としてます、な表情をしているが、本気なのか誇張されているのか判断に苦しむ。

 むしろリリンは本気かもしれないが、他の職員さんなら全く反応しない結果という可能性も否めない。


「す、すごいですよ、おめでとうございますっ!!能力値が幻の☆5ですよっ」

「はぁ…」


 興奮したようにはしゃぐリリンだが、どのくらいすごいのかわからないので反応に困る。

 まぁ、『幻の』と言っているので、少なくとも宝くじで1万円が当たったとか、卵割ったら双子だった程度の珍しさではあるのだろう。


 私の転生手続きという名の福引の結果。


 転生先は『フォルテース』という異世界

 種族は『人族?』(なぜ?がついているかは不明だが)

 性別は『女』

 能力値は『☆☆☆☆☆』

 運は『☆』



 ……運が☆1って、どの程度運が悪いんだろう……

 能力値と運が☆3だった方が嬉しかった。うん。

 そして転生先が異世界かぁ。

 

「フォルテースは文明としては地球より遅れてますが、かわりに魔法が存在しますよー。剣と魔法の世界ですねー。あ、魔物もいますので死亡率は高いですけど!でも能力値☆5ですし、多分大丈夫ですよ!多分!!」


 にこっと笑ってサムズアップしてくるリリンが適当すぎて力いっぱい殴りたい。

 あ、もちろん私はか弱いので拳でなんて無理ですよ、メリケンサック着用ですよ。


 なんて考えていたが、ふとリリンのざっくり異世界紹介で気になった点が。



「あの、リリンさん」

「はーい、なんでしょーか!」

「転生先、異世界って…魔物って………例えば、スライムとか…?」


 魔物=スライムのことでしょうか?


「んー。いるんじゃないですかねっ」


 唇に指をあてながら首をかしげつつ答えたリリン。

 

 つまり。

 つまりは。




 生スライム、フゥゥゥウゥゥゥウゥゥ!!!!!



 ってことですよね!?

 やだ、ちょ…どうしよう?!

 私のスライムハーレムがついに実現するのですかイエアァァッァァ?!!

 わかってる、いつもの私らしくないのはわかってる落ち着け!!

 でもでもでもでもっっっ

 この胸の高鳴り、アアァアァァァァア!!!!


「リリンさんっっ!!私、私は早く、今すぐにっ!転生したいのですがっ!!」

「まぁ!やる気十分ですねっ!ではでは、そこの転生の門をくぐって下さいねっ」

「はいありがとうございましたいってきます!」

「あ、転生すると、生前の記憶や今この手続きの記憶は消えますよぅ。といっても魂には記録されてるんですけどー。それでも心に刻んでほしい唯一のお願い事でーす。『罪は犯さないでください』ねー!!次の転生の時、手続き多くなって大変なので、これは職員一同からのお願いですぅ」

「りょーかいですもう行っていいですか!!?」

「はーい!ではいってらっしゃいませ!よい人生をー♪」



 白いハンカチを振りながら見送ってくれるリリンに背を向け、部屋の奥にある転生の門…扉に飛びつく。


 ああ待っててね、私のスライムハーレム。

 ついでに健康的にひもじい思いをしない程度に食い繋いでいける程度の経済力があったら最高!




 スライムが仲間になりたそうにこっちを見てくれるのを夢見て、私は転生の扉をくぐった。






やっと転生に漕ぎ着けました。

そして主人公はきっと、生前に溜めておいた運をここで使い切りました。

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