ギルドカード式スマートフォン?
しばらくその場に立ち尽くしていると、背の低い老齢の男性が奥の扉から現れた。白髪で床まで伸びたヒゲを少し引きずっている。
「ぬしが評価水晶を破壊した者か?」
しゃがれた声で男性が俺に尋ねた。眉毛でどこを見ているか分からんが、声の指向性でこちらに話しているのはわかった。
「はい、僕ですが」
「ふむぅ、見かけによらんな、人というのは」
「あ、因みにギルドマスターはドワーフ族です。こんななりですが、カウンターくらいならぶち破れますよ」
「あ、はい」
この世界にはドワーフ族がいるらしい。となると他にもいそうだな。あとでルーベルトに教えてもらおう。
「さて、お主の評価はBランクとしておく。評価水晶を破壊した魔力、胆力はあるようだが、実戦経験があまり無いとみえるのう」
「その通りですね、お気遣いありがとうございます」
「ただし実績次第では、すぐにランクは上がる。ここは冒険者の街だ。依頼なんぞ腐るほど貼ってあるからのう、好きなのを取って、受け付け嬢に持って来るがよいわ」
変な笑い方を最後にして、彼は奥の部屋に戻っていった。
ルーベルトと会って以来、珍妙な人としか会ってなかったので、まともな人?もいるのかと、若干安心した。
「さて、紹介が遅くなって申し訳ありません。私は受け付け嬢のサルンといいます。気軽にさーちゃんとお呼びください!」
「わかった、さーちゃん」
「ありがとうございます! なかなか呼んでくれる人いないんですよ!」
でしょうね。
「ちなみに私もるーちゃんて呼んでいいわよ」
「うるせえルーベルト」
「格差なー……」
しょぼくれてしまったが、まあ気にして無いだろう。
「そして、こちらがお二人のギルドカードになります。ルーベルトさんはDランクなので鉄、シノノノノノノノメさんはBランクなので銀になります」
「おい」
「失礼、噛みました」
「わざとだろ! しかも噛むとかの次元では無い!」
「それはさておき、注意事項です。裏の丸の中の《!》マークを押してください。」
ルーベルトと俺はカードの後ろを見た。確かにボタンぽいものがあった。
2人はそのボタンを押すと、よくあるSFのホログラムの様にずらっと色々なスクリーンが現れた。
「それがあなた達のステータス及びカードに収納できるドロップ品などの収納スロットになります。収納スロットはランクが上がるほど大きくなりますので頑張ってランクをあげてください!」
そのあとは、紛失した場合の初動や、その他の機能など、必要最低限の事を教えてもらった。
聞いてて思ったけど、ちょいと便利なスマートホンだなこれ。一応グループやクラン間での会話やチャットに近い機能もある。
思ったより苦労しなさそうな気がしてきた。チート能力で携帯持ってるとか最強すぎでしょ。
「以上で説明は終わりです。今後は各街にあるギルド館に行けばどこでも依頼は受けられますので頑張ってください! SSランクになるのを楽しみにしてますよー!」
とりあえず登録が出来たので、次は依頼を受けよう。でないと、今晩も無断ヤドカリだし。




