ランク付け
必要な部分を書き終えた僕と女神様は再び列に並ぶ。列自体は先ほどより短く放っているものの、受け付けが少ないためにまだ時間がかかりそうだ。
「そういえば、あなたのお名前を聞いていなかったね。名前、なんて言うの?」
「あー、そういえば言ってなかったな。こっちの言い方だと、シノノメと呼んでくれればいいよ」
「シノノメですね、また、珍しい苗字ですね」
「たしかにアニメでしか見たことないな」
東の雲と書いてシノノメ。こちらの世界は言うならばカタカナしかない世界。文書も目が腐るほど長い。保険の規約といい勝負してると思う。
そのままくだらない話を続ける。アニメの話もなぜか通じた。
そうこうしてる内に僕達の番になった。
「ふむふむ、シノノメさんとルーベルトさんですね。書類はお預かりします。次は能力の試験をします。試験は簡単でこの水晶に手をかざして頂き、魔力を込めていただくだけです。それにより能力の判定をし、ランク付けをします。なので、本気を出して、頑張ってください!」
そう言って受け付け係の彼女はカウンター下から直径20cm位の水晶を取り出した。水晶は若干青味かかり、冷たく輝いている。
「ではルーベルトさんからお願いします」
「本気でやってこわれないわよね?」
「……っぷ、あはははは! 壊れるって、そんなこと有り得ませんよ! たとえ神級の魔術師が本気で流したって壊れませんよ!」
「あー……、もし壊したら?」
「私が補填しますよ!」
彼女の顔はちゃんちゃらおかしなことを言ってる、と思ってるだろう。ただ、相手はこの世界を管轄する女神。さよなら受け付け嬢。
ルーベルトが水晶に手をかざす。するとふわりと水晶は光りだす。そしてそのまま光は失われていった。
…………え?
「はい、あなたはDランクです、大言言うくらいはありますね」
「やったわ」
「おい」
テンプレは!?
ここは手榴弾の様に水晶が破裂して、受け付け嬢がガクブルする展開だろ! しかもなんでちょっと喜んでるんだよ! お前女神だろ!
「では、次はシノノメさん、お願いします」
いや、落ち着こう。きっと騒がせない様にそうしたに違いない。ただやりきった感のある彼女を見ると悲しくなってくるが……。
さて、ここは若干分岐点。テンプレ的に、ぶっ壊せば波乱に満ちそうだ。しかし、少し抑えればなんもなく解放されそうだが……。
その時肩を叩かれた。
なんだよ女神様、その顔。やったわっていった割には悔しそうではないか。え? やってしまえだと? いやいや、これ高そうだし、受け付け嬢さんが可哀想……え? ランクが上の方が金が入る?
……成る程。
手を水晶にかざし、ありったけの魔力を込めた。すると、だんだんと輝きを増していった水晶は、「もうらめぇ!」とばかりに震え出し、ひび割れ始め、そして、爆散した。
「ふぁっ!? ば、爆散した!? なんでぇ!?」
「ふっふっふっ、引っかかったなバカ娘、言質は取ったからな。正当なランクは頂いていくぜ!」
「……はっ! それどころじゃないですよ! こ、これはSSランク越えです! ヤバイです! ギルドマスターに連絡しなくちゃ! シノノメさん、ルーベルトさん少々お待ちください!」
青くなるどころか興奮した様子でカウンター裏をウロウロした後、バックヤードに消えていった。
因みに女神様はサムズアップをして満足気である。




