異世界転移
初登校です。
死ぬときほど、あっさりするものはないもので、仕事帰りの午後22時、運転しているところに対向車線から突っ込んで来るあの10tトラックで僕は死ぬのだろう。
思えば大したことのない人生だった。
いろんなことで一喜一憂するものの、この時この瞬間にしてみれば大したことの無いなと感じる。
強いて言えばこの瞬間が一憂に当たるのかもしれない。
さて、そろそろお別れだ。
全てにありがとう、そしてさようなら。
「こんばんは」
「え?」
次に目を覚ますと僕は丘の上にいた。満点の星空は綺麗で、遠くには街明かりがほんのりと見えていた。
「え、あれ? ここは?」
当然、なんのこっちゃわからない。ここはどこだ?
「ここは王都ルーベルトの外れにある英雄の丘と呼ばれるところです。」
「はぁ……、あなたは?」
「私のことは置いといてください。一身上の都合があります」
「いやなんでだよ、教えてよ」
「仕方ないですね、3回だけですよ?」
「1回でいいよ!?」
なんかへんな人だなと思っているの、咳払いを一つ入れ、彼女は話し始めた。
「私の名前は女神ルーベルト。この世界を管轄している女神の1人です。因みに年は秘密です!」
「聞いてないよ」
なんか変な人に会ってしまったな。
女神とか言ってるし。
「そーなんだー、すごーい」
「待って、どこ行くの。話聞いて! マジバナだから!女神だから!神だから!」
「神、そんなこと、言わない」
「言うから!」
言うんだ。
それはさておき……。
僕は死んだはず。
死んでなくとも、目覚めたら病院じゃなくてこんなちゃらんぽらんな女性のいる丘の上。
……整理してて頭痛くなってきた。
あれかな、最近流行りの異世界転生とか言うやつ?
マジで?
魔法でチートしてハーレムできるの?
「残念ながらあなたは死にました」
「オブラートって知ってる?」
「知らんけどね、とりあえず死んだ」
「んで?」
「そうそう、死んだからついでに世界の1つ2つ救ってもらおうかなって思って、霊体かっさらって、連れてきちゃいましたテヘペロ!」
「なるほどな、お前が頭おかしいのはわかった」
「で、無事にバレて堕天した」
「やっぱり頭おかしいじゃないか」
さっきから一世代ぐらい前の言動が目立つ、頭おかしな女神だ。
それから、数十分同じようなやり取りをして、ようやく本題に入った。
どうやら僕は元の世界ではお亡くなりになり、風になって親に会いに言ったらしい。嘘だけど。
んで、さっきの説明の通り、連れてこられてしまったようだ。しかも、おまけ付きで。
「あなたのステータスは全て限界値になっています。普通では得られないような多種多様な最上級スキルもつけました。なので、ちゃっちゃと魔王をぶっ○しに行きましょう。そして慰労金を山ほどもらって山際の誰も来ないようなクソど田舎でもう一回死ぬまで暮らしましょう」
「話し下手かよ」
「更に更に私女神ルーベルトが憑いて、19,800円」
「やすっ……、いや高い……?」
「今なら高枝切りバサミが付きます」
「やすっ、てかいらねーよ!」
案の定チート能力を頂き、先は思いやられないが、早速荷物が増えてしまった。
まあ、いい案内役が付いたと思って我慢しよう。
とりあえず丘の上で騒いでも進まないので、早速スキル《千里眼》と《テレポート》を使い、街の中へ、もとい宿の一部屋にテレポートした。
宿屋さんすいません。
でも、神さまのお願いなので、僕は悪くないので勘弁してください。




