#8 パーティー結成です!
アパートで一人暮らしをしています。除湿剤を9個も部屋に置いているのに湿度が80%もあります。エアコンの除湿では太刀打ちできません…。
冒険者ギルド。世界中に点在する巨大な組織で、魔物や魔族と戦ったり、色んな人の依頼を受ける人達「冒険者」のサポートをするための組織です。小さな村には無いこともありますが、ほぼ全ての町に存在する冒険者ギルドには、様々な役割があるそうです。
1つ目は冒険者の管理。冒険者の登録を行い、それを管理するのですが、全ての冒険者ギルドには専用の連絡用魔法道具があり、それを使うことで冒険者の流れを管理しているそうです。冒険者カードを読み取り、最後に利用した支部を確認することで、どの冒険者がどこの支部の近くにいるのかを把握することができるのです。劣化版位置情報サービスのようです。冒険者への仕事の斡旋や依頼人との仲介も、ギルドの大切なお仕事です。
2つ目は冒険者のための食事と寝床の提供です。冒険者ギルドには依頼書の張り出された掲示スペースと受付窓口の他、食堂があります。ここは一般の人も利用できるのですが、冒険者カードを提示すれば割引サービスがあるのです。さらに大きな支部になると冒険者専用の寝室もあるのです。本当に寝るための部屋なのでかなり狭いですが、野宿と比べると屋根とベッドがあるのは、まさに天国のような快適さです。
3つ目は郵送です。これは他の町や村などに荷物を送るシステムですが、冒険者への依頼という形で預けられます。配達先に向かう冒険者に荷物や手紙を託すのが一般的です。お金はかかるけど行商人に頼む人もいます。冒険者と違って行商人の場合は定期的に移動しているため、到着日数がある程度予想できるのです。その分割高になりますが。
4つ目は冒険者のパーティー紹介です。食堂は冒険者の個人的な掲示板になっていて、そこにパーティー募集をする冒険者がいます。入りたいパーティーがある冒険者は受付窓口で話をして、募集しているパーティーを紹介してくれるのです。募集用紙を張り出す前に受付窓口に提出するのは、どのパーティーが募集をしているかを把握するためでもあるのです。
なぜ私がいきなりこんな話をしているのかと言うと、昨日張り出したパーティー募集を受けて、早速パーティー参加希望者がやって来たそうなのです。今朝、朝一の依頼を受けた冒険者の人達が出かけた後の、朝の暇な時間帯を狙って私とティアさんはギルドにやってきました。今日の目的はギルドの2階にある図書館で魔物や魔族、植物などの勉強です。そのつもりで混雑している時間を外してギルドに来た私達は、受付のお姉さんであるシェリアさんに呼び止められ、参加希望者の話を聞いたのです。
この人、休みとかあるのでしょうか……。もしかして冒険者ギルドはブラックな職場だったりするのではないでしょうか?
「それで?その参加希望者ってどこにいるのよ?」
ティアさんはギルド内を見回しながら尋ねました。確かに気になります。しかし、視界に入る場所に冒険者の姿はありません。閑古鳥でも鳴きそうなほど、誰もいません。
「希望された方は合計5人いまして、皆さん2階でお待ちです。ご案内します」
そう言ってシェリアさんはカウンターから出てきました。ギルドの2階は図書館の他に幾つもの部屋があります。それは内緒のお話をするための部屋だったり、ギルドマスターの部屋だったりするのです。
人に聞かれたくない話をするのに使うような部屋ですね。断ったら地獄を見るような危険な依頼とか本当にあるのでしょうか?そんな依頼と出会わないことを祈ります。
2階についた私達は食堂の真上に位置する部屋に案内されました。その部屋は談話室のようになっていて、奥に1つだけ扉がありました。
「それでは1人ずつ紹介します」
そう言ってシェリアさんは奥の扉を開け、1人目を呼びました。
「ボブ・ディップさんです」
紹介とともに現れたのは、筋肉の塊のような大男でした。
なぜか上半身は裸で、鍛え上げた筋肉を自慢気に見せつけるようにポージングをする姿はかなり気持ち悪いです。こと人は服を着ても筋肉で弾き飛ばすタイプの化物ですね。
「ガッハッハッハッハッ!ボブ・ディップだ!よろしくな、嬢ちゃん達!」
豪快に笑いながら握手を求めるように手を差し出すボブさん。キラリと輝く頭が眩しいです。はい、頭です。歯ではありません。見事なまでのスキンヘッドです。
「あのさ……私達の募集用紙、見た?」
ティアは額に青筋を浮かべながら満面の笑顔で言いました。怖いですよ?
「もちろん読んださ。俺様ほどのイケメン格闘家はそうはいないぜ!」
「ゴリラ募集なんて誰も書いてないんだけど?」
「ゴッ……ゴリラ……」
あ、ショック受けてる。
「ティアさん、それは思うだけにしないとダメですよ、私だって我慢してるんですから」
私は小声でティアさんに注意をしました。しかし、この部屋はあまり広くはありません。そのため、私の小声もバッチリ聞かれたらしく、ゴリ……ボブさんは心に会心の一撃を受けたのか大きく仰け反ってしまいました。
「まさかあなた、こんなゴリラが好みなわけ?」
「いいえ。全然全く欠片も好みではありません」
「ぬおぉぉぉぉぉぉっ!」
シェリアさんの言葉がトドメになったのか、ボブさんは号泣しながら走り去ってしまいました。あれが男泣きというやつでしょうか?
「それでは次の方です。どうぞ」
まるでオーディションのように次の人を奥の部屋から招くシェリアさん。この紹介方法は冒険者ギルドの決まりなのでしょうか?それともシェリアさんのやり方なのでしょうか?わかりません。
「はじめまして、可憐なレディ達」
そう言って現れたのは、白い胸当てに白いコートの男性。顔はかなり整っています。白馬とか似合いそうな純白の騎士という感じです。重装甲ではなく軽装戦士っぽい装備ですが。
「俺の名はシュヴァイン・アグー。聖騎士だ」
「ぶふぅっ!」
名前を聞き、私は耐えきれずに吹き出してしまいました。だって……シュヴァインでアグーって……。ダメです……我慢できません……。
私の目の前ではシュヴァインさんがなぜ笑われたのか本気でわからないといった感じで呆然としています。まあ、確かにこっちの世界の人にはわからないでしょうね。
「なんかわからないけどアイナが使い物にならなそうだからパスで」
聖騎士といえば剣士と僧侶の複合クラス。なので私達のパーティーバランス的には欲しいのですが、あの名前に私が耐えれません。ごめんなさい。
だって……シュヴァインもアグーも、どちらも「豚」ですよ?豚の聖騎士って……。どんなギャグですか!
爆笑しなかっただけ褒めてくださいよ。
「それでは3人目を紹介します」
淡々と仕事を続けるシェリアさん。もしかするとマイペースな人なのかもしれません。
結果から言うと、私達は2人を新たな仲間に加え、4人パーティーになりました。3人目と5人目の人を仲間にしたのです。
4人目の人?なんか物凄いモブっぽい感じの、いかにも初期設定感漂う新米冒険者代表といった、印象に残らない少年でした。顔、容姿、強さ。全てにおいて平凡な「ザ・村人」といった感じの人。なのでほとんど記憶に残っていません。
3人目は待望の回復魔法の使い手の女の子。名前はアイリーン・エルセネルエ。アイリさんと呼ぼうと思ったのですが、私の名前がアイナなので微妙に被ってしまうのでリーンさんと呼ぶことにしました。
桜のような淡い桃色の髪と、金色にも見えなくもない黄色い瞳。垂れ目が可愛い16歳です。胸は……「巨」というには少し届かない感じですね。
そして4人目はシュテヴィーゼ帝国の北東部にあるアンデルス子爵領からやってきた子爵令嬢のライラ・フォン・アンデルス。
大陸北部にあるリエース王国との国境に山脈があるため、直接の交流はありませんが、国境の領地です。ライラさんはアンデルス子爵家の次女だそうです。アンデルス子爵家は代々優秀な騎士を輩出する家柄で、帝国騎士団の上層部の4割はアンデルス子爵家の関係者だそうです。
背は少し高く、男装が似合いそうな凛々しい女性です。黒っぽい赤い髪……ダークレッドのショートヘアーですが、毛先に行くほど色が明るくなっています。このグラデーションの髪はアンデルス家の特徴だそうです。毛先はカーマインくらいの色ですね。アメジストのような深い紫色の瞳がとても綺麗です。胸はリーンさんと同じくらいですね。
転生特典に目が眩んだ結果、幼女体型になった上に、これ以上成長しない身体にされた私と、その私と胸部がほとんど変わらないティアさん。これでパーティー内の胸部のバランスが保たれましたよ!巨乳とまではいかないけど大きい人が2人と、ぺったんこが2人です!って、誰がぺったんこですか!私はこれから成長期が……来ませんね。あの女神様のせいで……。
絶対に成長する魔法を開発してやります……。
とにかく、これで4人パーティーになりました。後衛過多っぽいので前衛があと1人いればバランスの取れたパーティーになりそうですね。
え?私ですか?私は魔法剣士ですがあまり前衛に出たくはありませんよ。剣は少し触れれば満足ですから。なので基本は魔法ですよ。愛と夢と希望と破壊を振り撒く魔法少女になりますよ。
軽装鎧を身に纏い、魔法の杖の代わりに片手剣を携えた魔法少女です。これは、新しい魔法少女の誕生ではないでしょうか?
「それじゃあ、行きましょうか」
あ、ティアさんの話を聞いていませんでした。確かせっかくだから4人で討伐をしてみよう、という話になっていたはずです。どんな依頼を受けたのでしょうか……。まあ、道中で確認すればいいですね。
さあ、それでは依頼を片付けに行きましょう!どこに、何をしに行くのかは知りませんけど!
この時、怒られることを覚悟して依頼内容を確認しなかったことを、私は後悔することになるのでした……。
今回新たに増えた二人は次回から喋ってもらいます。




