#6 初めての仲間!
更新頻度が下がります。2週間に1話か、月1話になるかと思います。
どうにかゴブリン達から逃げ切ることができた私は、マオアー町に帰ってきました。門の所で兵士さんに冒険者カードを見せると、すんなり入れました。今回の兵士さんは20代後半くらいのおじさんとお兄さんの間くらいの微妙な年齢の人です。きっと若い頃はやんちゃだったのでしょう。金髪ですし。あ、この世界では珍しくない色なんでした。私も金髪ですし。金髪の男性=チャラい、なんて思ってごめんなさい。
冒険者ギルドに戻った私は、早速採取した薬草を提出します。
「シェリアさん、これお願いします」
いつもの受付のお姉さんに、薬草の入った背負い籠を渡します。
「アイナさん、お帰りなさい。お預かりしますね。確認しますのでしばらくお待ちください」
シェリアさんはカウンターに「鑑定中」と書かれたボードを置くと、籠を持って奥に行きました。その間、私は依頼ボードを見ながら時間を潰します。
受ける受けないは別として、どんな依頼があるのかくらいは確認しておこうと思ったのです。それに、食堂の方は行きにくいですし。チラリと横目で確認すると、変な視線が向けられています。うん、あんな場所に入りたくありません。食事は宿に戻ってからにしましょう。
依頼ボードを眺めていると、小さな鐘が鳴りました。振り返ると、15歳になるかどうか怪しいくらいの銀髪の少女が入ってきたところです。なるほど、確かにドアの鐘が鳴ると反応して見ちゃいますね。これはもはや本能のようなものです。
私は意識をボードに戻します。ゴブリンの討伐、一角兎の討伐、帝国南西で干ばつ。あ、これは赤ランクの依頼書でした。誰かが剥がしたやつをいい加減に戻したのでしょう。スーパーとかでもたまに見ますよね。途中でカゴに入れた商品を戻すのに、元の場所に戻さない人。豆腐のパックがお肉売場にあったのを見た時は驚きましたよ。確かに原材料は畑のお肉と言いますけど、だからと言ってお肉売場に置いたらダメでしょう!
私は「帝国南西で干ばつ」と書かれた依頼書を赤のボードに戻し、再び黒のボードの確認に戻ります。
「アイナさん、確認が終わりました」
シェリアさんに呼ばれたのですぐに受付に戻ります。
「根っこまで綺麗に採取できていましたし、薬草の状態もよかったので、少し多めに買い取らせてもらいました。お疲れ様でした」
薬草採取などの一部の採取系の依頼や一部の討伐系の依頼は、需要量の関係上、常に出されています。こうした依頼は常時依頼と言われています。なので申請しなくても構わないのですが、申請をしているとポイントがわずかに加算されるのです。他にも依頼の受理によって冒険者の行動を把握することができ、万が一にも行方不明になった時、最後に受けた依頼を手がかりに捜索がされるそうです。そのため、特に受理してもらう必要のない常時依頼でも、なるべく受理してもらった方が色々と得なのです。
小さな「お得」をコツコツと積み重ねるのが大事なんです。その結果がポイントカードでパンパンな財布なのですが……。
報酬の銅貨を受け取り、カードを提出していると、
「なんでこれっぽっちしかないのよ!」
2つ隣の受付で怒鳴り声がしました。ビックリしてカードを落としてしまいました。そちらを見ると、先ほどやってきた銀髪の少女が何やら怒っているようでした。
「ちゃんと5匹分持ってきたでしょ!なんで3匹分しかないのよ!」
「ですから、1匹は綺麗な状態ですが、残りの4匹は黒こげになっているので価値が下がっているんです」
受付のお姉さんの言葉に反論できなくなったのか、銀髪の子はおとなしく銅貨を受け取りました。
結構気が強そうです。あんな後輩が演劇部にいましたね。先輩相手にも容赦なく注意をする子。まぁ、私には関係ないですね。
受け取った報酬を財布に入れて、私はギルドを後にしました。
ギルドを出て安眠亭に戻ったのは、夕方でした。片道2時間、森で2時間。薬草採取の依頼だけで6時間もかかったのです。あまり割に合わないことがわかりました。最下級の魔物退治や薬草採取の依頼は、単独で受けるのではなく、他の依頼のついでに受けた方が良さそうです。常時依頼ならば複数を同時に受けることができるみたいですし。このままだと宿代が払えなくなるので、もっと稼ぐ方法を考えなくてはなりません。とりあえずは宿代を少しでも安くするために、夜だけでも店を手伝いましょう。
安眠亭は寝泊まりだけでなく、1階に食堂を持つ宿屋です。私の地球産接客能力を駆使すれば、看板娘の座も簡単に……って、私は宿の看板娘になりたいわけではないので、自重しなくてはなりませんね。
お手伝いを終えたのはだいたい21時くらいでしょうか。それから夕食をいただいた私は、中庭の井戸で水浴びをします。石鹸がないしお湯もないのですが、何もないよりはマシです。衝立に隠れて水浴びを済ませて部屋に戻り、お金を数えます。
この調子だと数日で宿代が足りなくなります。それまでにランクを上げてより稼ぎの良い依頼を受けなくてはなりません。
今日の依頼は様子見のようなものですので、明日から頑張ります!……ニートみたいな発言ですが、明日から頑張ります!
翌朝、私は朝食を済ませるとすぐにギルドに向かいました。今回は薬草と一角兎を狙います。一角兎は魔物ですが、罠を仕掛けて捕まえて、縛ってしまえばなんとかなるはずです。一角兎のような魔物は食料としても使用されるので、討伐証明部位を採取する必要がないのです。
後は、この2つの依頼と一緒にできる依頼があれば完璧です。そう思って依頼ボードを見ていると
「そこの金髪の子、ちょっといいかしら?」
不意に声をかけられました。振り向くと、昨日の銀髪の子がこちらを見ていました。あれ?何かマズいことでもやらかしちゃったかな?
「私ですか?」
「そう、あんたよ。ちょっとこっち来なさい」
そう言って私の手を掴むと、すぐ近くの席に連れて行かれました
「あなた、剣士よね?それも黒ランクの」
銀髪の子はいきなりそう言ったのです。
「私、見ての通りの魔法使いでね。前衛のできる人を探してたのよ。あなた、私とパーティーを組みなさい」
なぜか物凄く偉そうに言われました。
「パーティーですか?」
「そう。さすがに魔法使いがソロで稼ぐにはこの町は厳しすぎるのよ。私、攻撃魔法は炎しか使えないから」
それは確かに厳しいですね。この町にある黒ランクの依頼は、森に行くものしかないのでは、と思うほど森に行かせてくるのです。採取も討伐も森の中。炎の魔法使いは森の中では無力な存在になってしまいます。草原とかに出てくる魔物もいるにはいるのですが、かなり強力なので黒ランクの新米冒険者が遭遇すれば逃げることすらできません。
ともかく、パーティーのお誘いは私にとっても悪い話ではありません。ソロプレイヤーは寂しいのです。昨日も1人で森に入って黙々と薬草採取をするのはとても寂しかったですし。
「私は別に構いませんよ。でも私、剣士じゃないですけど」
「……は?」
私の言葉に銀髪の子は目を丸くしました。
「剣士じゃない?それ、アイアンソードでしょ?」
そう言いながら私の腰からぶら下がっている剣を指差します。この剣は女神様がくれた初期装備の安物の剣です。標準より少し小さいのは私のためにカスタマイズしてくれたのでしょう。
「私、魔法剣士なんです」
そう言って私は指の先に小さな火を灯しました。
「魔法剣士?それってどっちつかずの中途半端ってこと?」
おふぅっ!鋭い言葉の刃が私の胸に突き刺さります!確かに能力的には中途半端ですけど!器用貧乏ですけど!作品によっては上級職なんですよ!
「まぁいいわ。前衛ができることに変わりはないんだし」
この子、私を壁として利用するだけのつもりなのではないでしょうか……。でも、パーティーを組むのは良い考えではあります。報酬の分け前は減りますが、効率は上がりますので結果的に収入が増えるかもしれません。1人では倒せない敵も2人なら倒せるようになるため、討伐報酬が増えるというわけです。
「で、あんたもソロなんでしょ?」
「はい。昨日、黒ランクになって初めての依頼をしました」
「それじゃあパーティー募集でもしときましょうか」
「パーティーの募集?」
私が首を傾げると、自慢気な表情を見せてきました。人に教えるのが好きな人の顔ですね。
「ギルドの食堂を利用したことは?」
「ないです」
私みたいな子供相手に興奮するような人のいる場所に、好き好んで行ったりしませんよ。
「ギルドの食堂には、許可を貰えればパーティー募集の貼り紙を貼り出すことができるのよ。そんなわけで、早速行きましょう」
そう言うと私の意見を聞かずに受付に行きました。ついて行った方がいいのかな?受付のお姉さんと何かを話しているのを遠くから見ていると、急にこっちを向いてVサインを出してきました。そして、受付で羊皮紙を受け取ると、私を手招きしながら食堂へと向かいました。
これは、ついて行かないと後で面倒なことになりそうです。私は急いであとを追いかけます。
途中、私に手を伸ばしてきた中年冒険者がいましたが、くるりと回転しながらかわします。人混みの中をスイスイ歩くことのできる私にかかればこれくらいのセクハラは回避できます。食堂でバイトをしていた時はお盆で頭を叩きながらの回避でした。
「これでよしっと!こうやってパーティー募集の貼り紙を貼っとけば、そのうち人が来るわよ」
そう言って壁に貼った羊皮紙を指差します。食堂の壁には何枚もの羊皮紙が貼られていて、その大半がパーティー募集の貼り紙でした。お品書きと並んで貼っているので、中にはパーティー名なのかメニューなのか、すぐに判断できないものが混ざっています。私は新しく貼られた貼り紙に注目します。
パーティーメンバー募集!
募集するのは剣士1名と僧侶1名
イケメンや女性優遇!
スケベな中年冒険者対策なのでしょう。イケメンを優遇すると書いたのは、こちらが女性であることのアピールなのでしょう。わざわざ男がイケメンの仲間を募集するとは思えませんし。
「さて、それじゃあ私達は常時依頼をやりに行くわよ」
「え……あ、はい!」
そうだ。貼ってすぐに来るわけじゃない。きっと、興味を持った人が受付で話を聞いて、本人達が来るのを待つのでしょう。ならば、それまで私達はお金を稼がなくては。宿代のために。ランクを上げるために。
「あの、出発前に準備をしなくていいんですか?」
「準備?」
「はい。回復薬とかの準備です」
「あんたねぇ……」
なぜか残念なものを見るような目で見られた上にため息をつかれました。私、何か間違ったことを言いましたか?準備を怠った者に勝利はない、って言葉を聞いたことがあるのですが。
「そんなものを買う余裕あるわけないでしょ!」
残念なのは私じゃなくてこの子だった!私以上にお金に困っていた!
「昨日の報酬で5日ぶりの宿だったのよ!?ケガしなけりゃ回復薬なんかいらないわよ!魔法も考えて使えば回復薬に頼らなくても済むわけだし」
攻撃は最大の防御ってタイプの人ですね。やられる前にやっちまいな、ってことですね。まぁ、確かにその通りではあります。回復薬って、1つ1つはそんなに高くはありませんが、ひと通り揃えると結構な額になるんですよね。節約のためにも回復魔法の開発か、回復魔法の使い手を仲間に加えることを考えないといけません。
「さぁ、気を取り直して出発よ!目標は薬草とゴブリンと兎と狼!鹿が取れればもっと良し!」
兎や狼は動物でも魔物でも大差なく売れます。魔物の方が肉質は低いのですが、毛皮や角が素材として売れるので、差額があまりないのです。動物の方の毛皮は衣服になり、魔物の方の毛皮は防具になるそうです。そして、鹿は肉も角も高額で売れるらしいです。角はインテリアとしてだけでなく、装備素材にもなりますし、粉末にすれば薬の材料にもなる万能素材です。その代わり、大人の鹿は一角狼より強いらしいです。この世界の鹿はライオン並みに危険な存在なのかもしれません。
ともかく、私はシェリアさんから薬草を入れる籠を受け取ると、すぐに後を追いかけました。
そして、前を歩く背中を見て、私は大切なことを忘れていたことに気が付いたのです。
「あの!まだ自己紹介とかしてないんですけど!?」
まだ名前を言ってないし、聞いてもいなかったのです。この世界に来て初めての仲間なのに、自己紹介を忘れてしまうなんて!




