#24 新しい武器
今回から0時投稿から12時投稿に変えることにしました。
決して間に合わなかったからとかではありません。(目そらし)
「ようこそ。俺が領主のソーマ・フォン・オダ子爵だ」
目の前にいるのは黒髪黒目。プロレスラーのような体格の渋いダンディーなオジサン。
この人が、アルトゥーラ王国の東端にあるオダ領の領主、ソーマ・フォン・オダ子爵様。
見た目は完全に日本人プロレスラーです。
「俺からの依頼を受けてくれたそうだな」
そう言いながら私達を見定めるように見てくる子爵様。あからさまに私達を観察していますね。
「内容は依頼書にあった通り、俺の子供の家庭教師だ」
「お子様は何歳なんでしょうか?」
「上から順に14、13、11、10、8、6だ。読み書き計算は下の2人に。上の子達には冒険の話を聞かせてやってほしい」
6人もいるんですか!?子沢山ですね……。奥さん、超頑張ってますね。
「それなら私が下の子達の勉強を見ますね」
リーンさんはすかさず名乗りを上げました。確かに適任です。
ライラさんは騎士志望の剣士なので、男の子受けの良い話ができそうです。一応、貴族令嬢なので学力もあるはずですけど。
ティアさんは頭は良いけど教えるのは致命的に下手な印象があります。覚えが悪い子にキレるタイプですね。
「それなら私はリーンさんと一緒に勉強を」
「あんたは絶対こっち側でしょ」
「何でですか!?」
遠まわしに馬鹿扱いされた気がするんですけど!
「ところで、依頼を見つけたのは誰だ?」
「私です」
子爵様の突然の質問に、思わず普通に答えてしまったけど、大丈夫ですよね?
「なら君はちょっと残って欲しい」
「え?」
子爵様が手を打ち鳴らすと、部屋の外で待機していたと思われる執事さんが入ってきました。
「彼女達を案内してくれ」
「かしこまりました、旦那様。こちらにどうぞ」
ティアさん達は執事さんに連れられて部屋を出て行き、私と子爵様だけが残されました
「えっと……」
「楽にしてくれて構わない。無礼講というやつだ」
どうしたものかと思っていたら、優しい表情で言われました。
「今でこそ子爵という立場だけど、元はただの平民だったからな。よほどの礼儀知らずじゃない限り、咎めたりはしない」
「そうですか……」
「それに、どうやら君とは同郷のようだしね」
ニッコリと笑顔を浮かべる子爵様。ですよねー。やっぱりその話ですよねー。
「子爵様は……」
「ソーマで構わない。君の名は?」
「ミツ……アイナです」
危ない危ない。危うく別の人の名前を言う所でした。
「それは本名なのか?」
「いえ。転生の際に改名しました」
「改名?もしかしてキャラクターメイキングを選んだのか?」
何やら信じられないものを見たかのような顔をされました。そんなに変でしょうか?確かにチート能力じゃないですけど。
「わかりやすい女神様だったので」
「なるほど。あの問題神様か」
問題神様……。確かに私についてきて魔法の使い方を教えてくれましたけど、直後に上司らしい人に電話で呼び戻されていましたね。
「あの女神様、担当した人を必ず女性に転生させるんだ」
…………え?
「妹欲しさにな。そのせいで男としての記憶を持ちながら女に転生した人も結構いるみたいだ」
「それ、男性からしたら歓迎することでは?」
いきなり美少女になって色々やっちゃう、なんて物語はよくありますからね。
「最初はそれでもいいだろうけど、ナンパをされたり、悪党に捕まって弄ばれたりすることを思えば、最悪だと思うがな」
確かに。こんな世界だと、奴隷にされることもあるわけだし、転生して転性したからといって、浮かれていたら大変なことになるわけですね。
「担当した人を全員女性にするってことは、ソーマさんはあの女神様に当たらなかったってことですよね?」
「あぁ。俺は男性の神様だった」
「なのにあの女神様のことを知ってるんですか?」
「俺の転生特典の力だ」
そう言ってソーマさんが「オープン」と答えると、彼の目の前に半透明の青い液晶画面が現れました。
「これが俺の貰った転生特典。まぁ、検索能力だな。これで世界中の色んなことを調べることができるんだ。まさか神様の情報まで調べれるとは思っていなかったが」
どこか遠い目をしていますけど、何かあったんでしょうか?
「それで、どうして私をここに残したんですか?」
「ああ、そうだ。本題に入るのを忘れていた」
そう言うと、ソーマさんは両手を組み、手の甲に顎を乗せました。
「オダ領に来た理由を聞かせてもらいたい」
オダ領に来た理由……。そんなの、刀に決まってます。擬人化すると、格好いいんですよ。
「私、この世界に来て1年になるんですけど、女神様から貰った剣をずっと使ってて……せっかくだし、刀に挑戦してみようと思ったんですよ」
嘘ではない。嘘ではないです。他にも理由はあるってだけで、嘘はついてません。
大事なことなので2回と言わず1000回でも言いますよ。……ごめんなさい、1000回は言い過ぎました。さすがにそんなに言えません。
「それで、東に行けば和の文化があるっていう異世界の定番に賭けたわけか」
「まぁ、はい……」
結果的にこの大陸にはないようなので、やっぱり海を越えた先にあるんでしょうね。
「残念だけど、ここから東に行っても、和の文化には出会えない」
「え……」
「顔に出てた。ちなみに道場に刀を飾っているが、あれは俺が個人的に手に入れた代物でな、この中央大陸の西端にある魔族領で購入したんだ」
西の魔族領。中央大陸の西端。帝国の西に広がる荒野を抜けた先にあると言われて魔族領。全くの反対方向です。
「ちなみに和の文化も魔族領にある」
「そんな……」
異世界名物の「和の文化は東。もしくは東の海の向こう」が……。
なんで和の文化なのに西にあるんです!おかしいでしょ!ずっとひたすら東に行けばいつかは辿り着くでしょうけど、海の魔物を気にしながら世界をグルッと回るくらいなら、始めから陸路で西に行った方が速いですよ!
「ま、同郷のよしみだ。俺の持ってる刀を1つだけやろう」
「いいんですか!?」
「俺が作った、錆びた包丁より切れない名刀ナマクラと、我が領最高の木工職人が作り上げた迷刀村正。好きな方を選んでくれ」
在庫処分ですか!?
「ダメか?なら魔族領で買った鳴刀『悲哀』はどうだ?抜き身だと慟哭の声が、鞘に入れると啜り泣く声が聞こえる刀で……」
「呪われてますよね!?」
「冗談だ」
楽しそうなソーマさんの表情を見て、私は確信しました。この人、ボケまくって遊んでます。
冒険者ギルドから連絡が入った。
俺が出した依頼を受けた者が現れた。しかも内容をちゃんと理解しているようだ。
ようやくか。この領に冒険者ギルドを作ってからずっと出していた依頼だ。いや、内容は最初とは違うけど。
この世界の人には読むことのできない言語で書かれた依頼書。俺の同郷を見つけるためだけにずっとギルドに出していた。
やっぱり転生者は冒険者になるもんなんだな。
書類を片付けているとメイドに連れられて冒険者がやってきた。
女性パーティーだった。暗い赤色の髪の剣士に、桜色の髪の少女。この2人は気品を感じる。貴族令嬢だろうか。
銀髪の少女は気が強そうで、どこか猫を思わせる。
金髪の少女は……俺を珍しそうに見ている。この世界で黒い瞳は珍しいし、黒髪は少数派だからな。領主になる前、この大陸を旅したことがあったが、黒髪の人は数えるほどしか見なかった。
挨拶を済ませ、早速仕事をしてもらう。金髪の少女が転生者だそうなので残ってもらうことにした。
自分以外の転生者に会ったのが初めてだったので、ちょっと悪ノリをしてからかってしまった。
この子には、俺がこっちに来てからの向こうの話を聞かせてもらおう。その報酬として、俺が魔族領から連れ帰った刀鍛冶師の作品を1つ譲ることにしよう。
この少女の漫画やアニメの趣味が俺と合いますように。
異世界に行く前に今見ている作品の完結は見届けたいですよね。
ちなみに、ソーマ子爵の物語もざっくりと構想だけはあります。日の目を見ることがあるかはわかりませんが……。




