#20 さらに東へ
あー、そろそろ投稿しないと……とか思っていたら、全くネタを考えておらず、真っ白なネタ帳を見て真っ青に。その日のうちに仕上げましたが、頑張れば前日に作業を始めてもなんとかなるものですね。
なぜか夏休みの宿題を思い出しましたが……
シュテヴィーゼ帝国の東に広がるアルトゥーラ王国。その玄関口となるのがマルティーニ侯爵領である。
人々が魔族と戦争をする以前の時代、帝国は肥沃な土地であるアルトゥーラ王国を手に入れるために戦争を仕掛けていた。帝国軍と王国軍の戦場は国境線。そのためマルティーニ領は最前線の領地だった。
マルティーニ領の南北は険しい山や深い谷があるため、両国を行き来するにはマルティーニ領を通るしか方法がないため、戦争の最前線となった。
当時の領主は国を守るために軍備増強に力を入れ、その結果、数世代で領軍だけで王国軍を超える戦力になった。簡単に落とすことのできない領地になったが、今度は王国軍以上の戦力を有する領地として、味方から危険視されるようになった。
万が一マルティーニ家が反旗を翻せば、王国乗っ取りも可能だったからだ。そこで王国は、当時子爵家だったマルティーニ家を侯爵にまで昇爵し、血縁関係を結んだ。反旗を翻されないためにマルティーニ家を優遇した。
これには多くの貴族の反感を買うことになったが、「もしマルティーニ家が王国に反旗を翻したら、守ってくれるのか?」という言葉で全ての貴族が沈黙した。
その後、マルティーニ家は野心を抱くことなく代替わりを続け、人と魔族の戦争が始まると帝国の矛先は魔族に向いた。
帝国が東のアルトゥーラ王国と戦争をしている間に、帝国の西の果てにある荒野に魔族の国ができていたのだ。
人より遥かに強い身体を持つ魔族だからこそ、荒れ果てた大地に国を作ることができた。
初めは帝国と魔族の戦いだったが、魔族は世界中に勢力を拡大し、全人類と魔族の戦いにまで発展した。
それがおよそ300年前のことである。
それから何人もの勇者が生まれ、魔王を倒すために旅立ったが、いまだに魔王討伐は成功していない。先代の勇者はパーティーで魔族の領地に向かって消息を絶っており、それが歴代最高の結果となっていた。
現在の勇者はつい最近、アルトゥーラ王国からシュテヴィーゼ帝国に出たばかりで、きな臭い噂のあるリエース王国に向かっていた。新しい勇者が誕生するために「歴代最強」と呼ばれており、人々の期待を集めていた。
アイナ達は勇者が帝国に向かう前に利用したという宿に宿泊し、翌日に冒険者ギルドに顔を出したが、マルティーニ侯爵領の冒険者の仕事は護衛と採取がメインになっており、討伐は領軍の仕事になっているため受けることはできなかった。
つまり、受けることのできる依頼が無かったのだ。代わりに最近のアルトゥーラ王国や勇者にまつわる情報を手に入れることができたが、どの情報も帝国で入手できるようなものだった。
そして、3日間の休息を終え、アイナ達は再びヘンドラーと共に王都へと向かって出発した。
マルティーニ侯爵領からアルトゥーラ王国の王都ファルトラは5日あれば到着するそうです。
「なんで私が料理当番なんですか?」
「だって、アイナの料理が美味しいからよ」
料理用にヘンドラーさんが仕入れた野菜を切りながら質問をすると、テントの設営を終えたティアさんが答えてくれました。
マルティーニ侯爵領の領都ウィルナップで滞在している間、宿の料理が物足りなかった私は、1度だけ自作の料理を振る舞ったのですが、それをヘンドラーさんが気に入ってしまい、護衛依頼に加えて到着までの料理依頼もされました。追加依頼です。
そこまでは良かったのですが、私1人でやることになってしまいました。皆さん、ちょっとくらいは手伝ってくれてもいいんですよ?
「焼くだけなら得意よ?」
「斬ることなら任せてくれ」
「料理はしたことがなくて……」
「……1人で頑張ります」
ティアさんは食材を丸焦げにしそうだし、なぜか包丁じゃなく自前の剣を抜こうとするライラさんも不安しかないし、リーンさんは純粋に戦力にならなさそうなので、1人でやった方が安心で安全っぽいです。
そんなわけで1人で料理をしているのですが、初日なので新鮮な野菜を使って美味しい料理を作ろうと思った私は、昼に仕留めた鳥を捌くことにしました。
え?新鮮な野菜はどうしたのかって?もちろん切りましたよ?それに、現在進行形でキャベツも丸ごと鍋の中で茹でてます。
捌いた鳥の半分は細切れにしてすり潰し、もう半分は薄く開いておきます。ミキサーとかがあれば楽ですが、風の魔法で代用して鳥をムース状にしちゃいます。
茹でたキャベツを鍋から取り出し、丁寧に剥いていきます。生キャベツだと剥くときに葉が砕けちゃうのですが、茹でておくと葉がしんなりとして綺麗に剥けるんですよね。
剥いた葉の上に鶏肉を置いて、その上にムース状にした鶏肉を広げて、さらに野菜を乗せてキャベツで包み、別のキャベツでもう1回包みます。キャベツで二重に包んでからベーコンを巻いて味付けをしながら鍋で煮込んだら完成です。
「お待たせしました。シュー・ファルシです」
ブイヨンとかコンソメがないのでちょっと違う味になりましたが、上手くできた方です。明日は野菜のテリーヌでも作りましょうか?
料理の方は引くほど大好評でした。
ウィルナップを出た翌朝。シュー・ファルシを煮込んだ時の出汁をスープにして、残ったキャベツと鶏肉でサラダを作って提供しました。朝は簡単で良いんです。夕食はちゃんと作ります。
2日目の夕食はシャリアピンステーキサンドとインサラータ・フリッタータです。え?テリーヌだったんじゃないなのかって?
ふはは!あれは嘘だ!って奴ですよ。テリーヌを作るための型がなかったから諦めたわけじゃないです。
玉ねぎを擦り込んで柔らかくしたステーキ肉に、残った玉ねぎで作ったソースを絡めてパンに挟むだけの簡単なお仕事です。
鳥型の魔物から手に入れた卵を使ってフリッタータを作って、それをサラダに混ぜ込めばインサラータ・フリッタータも完成。
やっぱり今回も引くほど大好評でした。
手料理を美味しく食べてもらうのは、やっぱり嬉しいですね。明日も頑張りましょう。
そんなわけで3日目ですが、盗賊をみんなで料理してやりました。
夕暮れ時を狙って現れた8人の盗賊。とりあえず私が地魔法で3人を落とし穴に落とし、ティアさんが3人を火達磨にして、ライラさんが1人を倒すまで3人で1人をフルボッコにしました。
火達磨になった3人には熱湯で消火してあげましたが、ライラさんに斬られた人より瀕死でした。
まぁ、悪人に人権はないって言いますし、これは正当防衛です。
このまま街まで連れて行けば報奨金が出るのですが、まだ王都まで距離があるので、リスクを犯すくらいなら置いていった方が良いということになり、8人とも埋めていくことに。
首から上だけを地面から出した状態で埋めて、魔法でしっかりと地面を固めたので簡単に脱出はできないでしょう。
運が良ければ他の冒険者が掘り出して街まで連行してくれますよ。日頃の行いの良さが運を招くのです。それではグッドラック。
盗賊の襲撃を受けたのはその1回だけで、ウィルナップを出て5日後、私達は無事にアルトゥーラ王国の首都であるファルトラに到着しました。
まさにファンタジーな街、といった綺麗な街並みが広がっていて、少し高くなった丘の上には白亜の城があります。街外れの丘の上には勇者の実家があるらしいですが、そんなところに用はありません。
ヘンドラーさんの依頼を終え、報酬を貰ってギルドで報告を済ませてから宿を確保した私達は、ひとまずの目的を達成したので再び今後の方針を決めるための会議を始めました。
「とりあえずファルトラに来ましたが、これからどうするのです?」
「もちろん、ガンガン依頼を受けていくわよ」
「もちろん、もっと東に行きますよ」
リーンさんの質問に私とティアさんが同時に答えました。
「「………………」」
「依頼を……」
「東に……」
なんで私の言葉に被せてくるんですか!
「ここから東って、一気に田舎になるのよ?禄な依頼がないわよ」
「東に行かないと、この国に来た意味がないじゃないですか!」
私はアルトゥーラ王国に行きたいわけじゃなく、東に行きたかっただけなんです!なぜなら、和風文化は東にあるから!
お米が食べたい!パンも良いけど身体がお米を欲しているのです!そして何より、せっかくだから刀を使ってみたい!
女の子だって刀を好きになれるんです。
「まぁ、せっかくアルトゥーラ王国に来たんだから、オダ領に行ってみてもいいかもしれないな」
私がティアさんの眼力に圧されていたら、ライラさんが味方になってくれました。やったね!
「……オダ領?」
「アルトゥーラ王国の東端にある新興貴族の領地で、かなり型破りな領主らしい」
なんでしょう……。私の転生レーダーがビンビンに反応していますよ。その人、ほぼほぼ転生者なんじゃないですか?
地球の知識を活用した領地経営は型破りになるのかもしれません。なによりも『オダ』って……。これで純粋にこの世界の人だったら驚きますね。
「仕方ないわね。オダ領だったらマシな依頼もあるかもしれないし、そっちまで足を延ばしてみましょうか」
ティアさんはしぶしぶ了承してくれました。
そうと決まれば早速準備です。明日はオダ領に向けて出発ですよ!
今回は料理ネタに力を入れましたが、知ってます?某料理漫画に出てくる料理ですが、どれも美味しいですよ。実際に家で作って食べたことがあります。




