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#17 ラノベ主人公、現る

令和最初の投稿です。

これからも毎月第一日曜日の更新を目標に細々とやっていくつもりです。


 アイナ・フォルレイクとしてこの世界に転生してからおよそ半年。季節はすっかり秋になりました。

 たいして気温の上がらない平和的な夏が過ぎ去り、夏を満喫できずに変わり映えのしない毎日……。

 オークや狼を倒したり、薬草を採取したりして肉や薬草を納品して、少しずつ貯金をしながら日銭を稼ぐ。

 大きな事件に巻き込まれたり、貴族や王族を偶然助けたりすることもなく、ティアさん達との絆が深まっていきました。

 あ、半年といってもこの世界は30日で16ヶ月あるので、半年は8ヶ月になります。

 一応は実りの秋なので冬が来る前には収穫祭があるらしいのですが、王都でもないただの町ではいつもより出店が多く、町の雰囲気が陽気になる程度らしいです。

 町のあちこちで大鍋料理が振る舞われるようですが、収穫した物を適当に放り込んで調理をするため、ある意味闇鍋です。割り振られる食材はランダムなので、運が悪いと致命的な組み合わせの食材が回ってくることもあるらしいです。

 それはともかく、今日は朝早くに出かけて町の北側にある平原で紫ランクの牛型モンスターのモーブーを討伐した私達は、証明部位と価値の高い部位をギルドに持ち帰りました。収納魔法が欲しいです。

 依頼を追えたのが昼前。これからギルドの食堂は混雑してくる時間なので、私達は昼食ついでに他の冒険者の人から情報を集めることにしました。

 周囲の会話に耳を傾けながら昼食を摂っていると、色々な話が聞こえます。

 最近、魔法使いが増えているため魔力回分のポーションが品薄になっている、とか。

 東のアルトゥーラ王国で勇者が活躍している、とか。

 南のベスティア共和国の首都に魔族が現れていて大変なことになっている、とか。

 北のリエース王国の王様が最近、妙に攻撃的な性格になってきたらしい、とか。

 別の大陸の情報は港町か首都でないとほとんど入ってこないので、大きな話題はこれくらい。後は東の森で修行をしていた初心者が少なくなってきたとか、帝都に憧れる若者がパーティーを組んで旅立ったけど無事に着けただろうかとか、そんな話題ばかりです。

 冒険者は上下関係にうるさいため、調子に乗っている新人がベテランに叩き潰されたり、逆に返り討ちになるという定番イベントもありますが、結構後輩を気にかける人も多くいます。

 昼食も終わり、そろそろ宿に戻ろうかと思っていると、ドアベルが鳴りました。ついつい入り口の方を見てしまいます。他の冒険者さん達も。

 冒険者ギルドに入ると中にいる冒険者が一斉に注目する現象。これはエレベーターで階層表示をついつい見てしまうのと同じ感覚ですね。ファミレスとかだとお客さんが入ってきても気にならなかったのですけどね。

 入ってきたのは1人の青年と3人の少女からなる4人パーティー。歳はだいたい16歳か17歳くらいの高校生の仲良しグループといった感じでしょうか。

 パーティーリーダーらしき青年は茶色がかった黒髪の好青年っぽい雰囲気で、鉄の胸当てをつけていて、背中に大きな剣を背負っています。後ろからついてきている3人の女の子達はそれぞれ、僧侶っぽい金髪ロング、格闘家っぽい赤髪ショート、魔法使いっぽい黄緑のツインテールです。ぱっと見た感じ、バランスのよさそうなパーティーなのですが、同時に私は別のことを思っていました。

 ハーレムパーティーか!

 まさか本当に美少女に囲まれたハーレムパーティーが存在するなんて!さすが異世界!さすがファンタジー!

「おうおうおう、そこの兄ちゃんよォ」

 受付に行こうとしていたハーレムパーティーの前にガラの悪い冒険者が立ち塞がっています。トゲトゲの肩当てのハゲ……いや、スキンヘッドの冒険者で、ランクは確か緑でしたか。そこそこ大きな冒険者パーティーの1人で、素行の悪さが目立つ問題児です。問題『児』といっても歳は30は越えていそうですけどね。

「俺に何か用か?」

 青年は自分より大きなスキンヘッドを相手に怯むことなく、仲間を背中に庇うように前に出ました。少女達は全員が揃いも揃って不愉快そうにスキンヘッドを見ています。

「良い女を侍らせて楽しそうじゃねェか。俺にも分けてもらおうか」

 スキンヘッドは青年ではなく後ろにいる少女達を見ながら舌なめずりをしました。正直、気持ち悪いです。

「彼女達を仲間にしたい、と?それなら俺ではなく彼女達に直接交渉することだ。彼女達は俺の所有物じゃないからな」

「なら、そいつらの前でお前をぶちのめして、全員もらってやるよ!」

 彼を倒せば手に入るとでも思っているのか、スキンヘッドは青年に殴りかかります。青年はそれを半歩引いて避けると、スキンヘッドの腕を掴んで身体を半回転し、背中全体でスキンヘッドを持ち上げてギルドの外に投げ飛ばしました。見事な背負い投げです。あれは一本勝ちですね。

 少女達もスキンヘッドが殴りかかってきた瞬間に左右に別れていたので、彼が投げ飛ばすことがわかっていたのでしょう。

「俺達がいない間に、バカなやつが増えたみたいだな」

「そうですね」

「今度きたらアタシが顔の形が変わるまで殴ってやるわ」

「いや、私の魔法の実験体にする」

 物騒な会話が聞こえてきましたが、気にしないでおきましょう。あのスキンヘッドは4ヶ月ほど前にこの町に来た冒険者パーティーです。もちろん私達にもちょっかいをかけてきたので、ライラさんとティアさんが物理的な『オハナシ』をしてお帰りいただきました。後日、仲間を連れてお礼参りにこられたので、私が【ライト】を使って先制目潰しをして全員でボコりました。レベルが2も上がりました。御馳走様でした。

「なんというか、懲りないわねぇ……」

 もうこの町の冒険者ギルドの名物になりつつあるスキンヘッドでした。弱いのになんであんな自信満々なんでしょうか?

 ハーレムパーティーは受付で少し話をすると、食堂にやってきました。

「みんな、ただいま」

 青年が軽く手を挙げながら言うと、食堂が一気に沸き上がりました。

「あの人達、誰なんですか?」

「彼らはこの町で1番の冒険者パーティーよ」

 近くにいたウエイトレスさんに尋ねると、親切に教えてくれました。なんでも全員が赤ランクの冒険者で、1年前に帝国全土を巡る旅に出ていたそうです。

 パーティーリーダーは大剣使いのコテツ。

 僧侶としてパーティーを支える金髪少女のマリー。

 格闘家でありながら双剣士でもある赤髪少女のアカネ。

 火属性魔法に特化した攻撃魔法の奇才と言われている黄緑髪のミール。

 パーティー結成後、この町に視察に来ていた領主様が魔物に襲われているところを助けたのをきっかけに一気に名前が売れていったらしいです。

 聞けば聞くほど異世界転生作品の主人公か!と言いたくなるような活躍ぶりですね。

 私もそんな活躍をしたいです。


 冒険者になってすぐマリーと出会ったコテツは、手堅く東の森で狩りをしながら冒険者としての経験を積んでいった。

 回復支援魔法に特化したマリーがいたことで、ランク以上の活躍ができたため、2人はすぐに紫ランクにまで上がることができた。

 その後、帝国南部から武者修行の旅をしていたアカネと出会ったコテツは、アカネに試合を申し込まれ、勝利した。アカネとはそれから行動を共にしている。

 子爵家の五女であるミールと出会ったのはその直後だった。没落寸前の実家の助けになるようにと、冒険者として活動をしていたミールだったが、子爵令嬢にして火属性魔法の天才ということもありプライドが高く、どこのパーティーも長続きはしなかった。そのため1人で活動することが多かったミールは、一角狼の群れに包囲され、絶体絶命の危機に陥っていた。それを助けのがコテツだった。

 コテツ達はミールをあっさり受け入れ、ミールも自分を受け入れてくれたコテツ達に心を許すようになっていった。

 4人になり、緑ランクになってしばらくして領主であるボーデン伯爵を助けたコテツ達は、帝国の有力貴族との強いコネを得ることができ、名が売れた。有名になったことで指名依頼が来るようになり、すぐに青ランクになった

 青ランクから赤ランクになるには半年以上の時間がかかったが、その間にマオアーの町では2度のスタンビートが発生した。そのスタンビートで大活躍をしたため赤ランクになったのだが、本来なら青から赤になるには平均で2年はかかると言われている。

 短期間で赤ランクにまで駆け上がったコテツ達は、帝国全土を巡る旅に出ることにした。それが今からおよそ1年前のこと。

 帝国各地で様々な依頼を受けて稼ぐ彼らは、辺境では無償で依頼を受けていた。辺境の集落では冒険者に払う報酬を用意できないことがよくあるため、世界を巡ることができ、なおかつお金に余裕のある高ランク冒険者は辺境に行ってボランティア活動として依頼を受けることがあった。

 そして、およそ1年の遠征を終え、帝国全土を旅して帰ってきたのだ。マオアーの英雄パーティーが。


「ほんと、聞けば聞くほどラノベ主人公みたいな活躍をしてますね」

「なによ、らのべしゅじんこうって」

 私の呟きにティアさんがツッコミを入れてきますがスルーです。

 しかし、私は1つ、重大な事実に気付くことができました。

 この世界に来て半年。ずっと違和感がありました。せっかく異世界転生したのに、何かが違う異世界生活。その違和感の正体が今日、判明したのです。

 そう、私達には『チート』がないのです。

 フラグ建築士一級の資格を持つ人がいないのです。

 この2つが無ければ、異世界で大活躍したり、貴族と仲良くなったりできないのですよ!なんで私は【キャラクターメイキング】なんて選んでしまったのでしょうか……。

 もっとチートな転生特典を選んでおけば、今頃私もラノベ主人公のような異世界冒険ができていたかもしれませんね。

 そんなことを思いながら、濡れた床で足を滑らせたマリーさんを助けようとしてラッキースケベを発動させて仲間全員を巻き込んで倒れるハーレムパーティーを眺めるのでした。



この季節は花粉症に悩まされます。腸を鍛えると花粉症になりにくくなると聞いたことがあるのですが、腸がとても弱い人はどうすればいいのでしょうね?

次回から話を進めていきたいと思っています。

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