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天使はなぜいるのか…

「で、その天使が何の用?あのミカエルってのもあんたの仲間?」

ミカエルの名前を出した時ガブリエルの表情が暗くなった。

「奏太何やってるの〜?すごい声出してたけど」

あまりの大声に心配した母さんが下の階から上がってきた。

「あぁ、大丈夫!ちょっとタンスの角に足をぶつけただけ」

「あら、大丈夫?」

「おう」

わざわざ見にきてくれたのに礼すらまともに言えない。高校生なんてそんなものだ。“ありがとう”という言葉が照れくさい…なんてことを考えながら下の階に向かっていった。

「姉さんはまた間違えを起こすのですか?」

誰にも聞こえないような声でそっと呟いた。そして静かに霧のように消えていった。


「ミカエルよ、その後どうなった?」

真っ白な部屋の真ん中で真っ赤な椅子に座った偉そうな男がミカエルに質問した。

「ガブリエルが動き出したようですわ。アダム様」

アダムと呼んだ男の前にひざまずき、上目遣いになりながらガブリエルのことを報告した。

「ガブリエルか…あの裏切り者めまた私の邪魔をするのか」

「ご安心くださいアダム様。私が阻止して見せますわ」

まるで蛇のように体を滑らせ、アダムのいるイスへと歩み寄り、アダムの首筋近くで囁くように言った。

「期待しているぞ、ミカエル」

そんなミカエルの行動を完全に無視してアダムはその場から立ち去ってしまった。

「アダム様から承ったこの権限…多いに役立てて見せますわ」

誰もいない部屋にミカエルの声はただただ響くだけだった。


「ゼウス様、天使界のアダムとミカエルが行動を開始したようです」

明らかに貴族ですと物語るような部屋でガブリエルはある男に報告をしていた。

「そうか、また天使界が盛りだしたか」

「いかがなさいますか?」

「なんとしても天使界の行動を止めるのだ。そのために貴様には天使から女神になってもらう。異論はないな?」

この聞き方では異論は認めないと言っているようなものだ。

「異論はありません」

ガブリエルの声から不満の色はないため、本当に異論がないことがわかる。返事を聞いたゼウスはガブリエルを横目に部屋から出て行った。


「奏太様、奏太様、起きてくださいまし」

大切な日曜日に朝早くから起こしにくるなんてなんて不届きなやつだと思いながら、掛け布団にくるまった。

「奏太様!そ・う・た・さ・ま!」

あまりにもしつこく起こしてくるので仕方なくその重い瞼を聞いた。しかし完全に開いたわけではなく、うっすらとだ。

「だれ?」

「私、ガブリエルに申します」

「え?」

メガネを取ろうと手を伸ばした時に何か膨らんでいるものに触れた。一度触ったことのある感覚だった。

「まさか…」

「う…うぅ…奏太様の変態!」

まさかと思った予想は的中した。そう、前回もやってしまった行為だ…前回は拳が飛んできたが今回は掌だった。

「いたい…」

「あ、私ったらつい…はい、これ」

ガブリエルが差し出してきたのは濡れたタオル――ではなく奏太のメガネだった。

「あ、ありがとう」

ガブリエルから受け取ったメガネをかけ、ガブリエルがいる方向を見た。真っ白な大きな翼、一般人は絶対に着ないような服。間違えなくガブリエルだった

「本物だ」

「どういう意味ですか⁉︎」

何を隠そう奏太はメガネをかけていないときは視力が皆無だ。ほぼ何も見えていない、だから声で判断するしかないのだ。

「え、あー、気にするなよ」

「すごい気になります」

「大丈夫、じゃ!おやすみ」

そう伝えると再び布団にくるまった。ガブリエルは数分の間止まっていたが、とうとう行動を起こした。

「はぁ…」

呆れたように胸元からクラッカーを取り出し、おもむろにクラッカーから伸びる紐を引っ張った。“パーンッ”二人しかいない部屋に乾いたクラッカーの音が響いた。

「うるさい…」

「起きてください、奏太様!知っているかと思いますがもう11時ですよ!」

「え、ちょっとまって11時?」

慌てて布団から飛び出し時計を見た。明らかに時針が11時をさしていた分針はギリギリ12をさしていないがほぼ11時だ。

「なんでもっと早く起こしてくれないの⁉︎」

慌ててパジャマを脱ぎ、私服に着替えた。普段は絶対にこんな速さで着替えるなんて不可能だ。

「いや、なんども起こしましたよ」

「まぁいいや」

「そんなことより慌ててどうしたんですか?」

「いや、ちょっと約束があって…」

話しながらも準備をやめないところを見るとかなり重要な約束なのだろう。それなのに寝坊するなんてなんとだらしない人だろう…と言わんばかりの呆れ顔でガブリエルは見ていた。

「よし、じゃあ行ってくるね」

「あ、はい、いってらっしゃい」

勢いよく階段をかけ降り、バタバタと靴を履き玄関から飛び出したかと思うと鍵をかけていないことに気づき戻ってきた。鍵をかけて今度は落ち着いた様子で歩いて行った。もう間に合わないことを確信したのだろう。

「はぁ…改めてくることにしますかね」

ガブリエルは静かに霧のように消えていった。

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