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二人の天使

「は?」

「は?じゃない、教科書76ページを読め」

どうやら、先生に指名されていたらしい、しかたなく教科書を読む。読み終わり再び前を向いたとき、ミカエルと名乗った天使は消えていた。

「(なんだったんだよ…)」


「あははッ奏くん冗談が上手だね」

昼休みにはいり煉と雪奈に天使のことを話すと煉には思いっきり笑われ、雪奈にはめちゃめちゃ心配された。

「お兄ちゃん、頭打った?それとも薬?」

「バカにしてんのかお前ら⁉︎薬もやってないし冗談でもない!」

なんとか自分が正常であることを証明しようとしたが無駄だった。まず天使が見えている時点で正常ではない。結局挽回できないまま昼休みが終わってしまった。その後はあの天使が気になってしまい授業など受けていられなかった。ふと気づけばもう放課後になっていた。

「奏くん帰ろ〜」

「おう」

特に話すこともなく、いつもの道をいつものように歩いて行く―――予定だったが、今回ばかりはそうはいかなかった。

「だから本当にいたんだったて!こう大きな翼を持った天使が、んでミカエルって名乗ったんだよ!」

「へー、でも僕らには見えなかったよ?」

「それはその…あれだ、選ばれた奴にしか見えないってやつだ」

我ながら呆れてしまうような嘘だ。例え自分があの天使だとして、願いを叶えてやるとしたら、俺なんか選ばずにもっとマシな奴を選ぶだろう。

「はいはい、わかったよ。じゃあまた明日ね」

気づけば家の前についていた。夢中になりすぎてどうやって家の前に来たかもわからない。夢中になるって怖いと思いながら玄関の扉を開けた。

「あら、おかえり〜」

「おう」

母さんに軽く挨拶し二階の自分の部屋へと向かう。部屋の扉の前に来たとき、異変にきずいた。確かではないが誰もいないはずの部屋から人の気配がする。誰か来ているなら母さんがなんか言ってくるはずだ。

「(誰だ…?)」

恐る恐る扉を開けた。しかし部屋の中には誰もいなかった。ただ窓から離れて置いてある机の上に真っ白な翼が落ちていた。


「あら、まだ私のことが見えていたのですね」

「次は奏くんを餌にする気?」

ミカエルと話しているのは煉だった。何やら物々しい雰囲気で話している。

「あら、嫌ですわ、餌だなんて。私はただつまらない日常にちょっと刺激を与えるだけ」

「でもその刺激が…」

後に続く言葉を言おうとしたとき、煉の唇に冷たい指が触れた。まるで血が通っていないかのような冷たさだった

「しーッ、それ以上言うとあなたの体が弾け飛びますよ」

天使の言葉とは思えないような言葉だった。その顔は笑顔だが、楽しそうな笑顔ではなかった。

「貴女との契約で僕は色々と失った。次は奏くんから奪うの?」

「詮索は良くないですよ」

「それくらい教えてよ、僕たちは互いに利害を犯さない契約でしょ?」

「黙りなさい〈絶対服従エンジェルズアイ〉」

目を見開き、煉を見つめる。先ほどまで強気でいた煉が急に黙り込み、辺りは静寂に包まれた。

「貴女は私に服従していればいいのですよ」

何を言われても今の煉はいい返すことができない。ミカエルは契約という肩書きで相手を無理矢理服従させ、自分の意のままに操る。

「今日は帰ります。奏くんに余計なことを吹き込まないでくださいね」

そう言い残すとミカエルは霧のように消えて言った。その数分後ようやく絶対服従エンジェルズアイが解除され、口を開くことができた。

「奏くんって呼んでいいのは僕だけだよ」

誰もいない部屋にただ虚しく響いていた。間も無くして煉の母親が帰ってきた。ここからはまたいつもの日常に戻る…


ふと気づくと辺りは真っ暗だった。帰ってきてからすぐに睡魔に襲われ、さっきまであった警戒心はすっかり消えていた。

「奏太〜ご飯できたわよ〜!」

リビングから聞こえる母の声、どうやら寝てからまだ数時間もたっていないことを物語っていた。布団から出てリビングに向かおうと部屋の扉を開けた。

「うわッ」

何か柔らかいものにぶつかった。しかし奏太の部屋の前に柔らかい壁などない。目を開けぶつかったものをまじまじと見た。肌色で少し膨らんでいる。ぶつかったのに凹んでいないところをみると、弾力性があることがわかる。

「いつまで私の胸を見ているのですか?奏太様」

「え?」

まさかの回答に思わず手で揉んでしまった。柔らかく弾力がありいい感じの膨らみ方をしている。間違いなくこれはお○○いだ。

「この変態!」

言葉と同時に飛んできたのは手のひらではなく拳だった。予期せぬ拳に身構えることすらできずに頬にぶつかってきた。

「イッタァァァァァァァァァァァァ」

普段から大きな声を出す方ではないが、この瞬間は人生で一番と言って良いほどの声が出た。

「あぁ、つい手が…」

「加減ってものはないのか⁉︎」

「いや、あの…普段はあるんですけど今日は忘れてきました」

そう言って濡れたタオルを差し出してきたのは今日生物の授業のときに現れた天使ミカエルではなかった。

しかしながらミカエルより可愛かった。

「私はガブリエルと申します」

「もしかして天使?」

ガブリエルから受け取ったタオルを赤く腫れた頬に当て冷やしながら質問した。

「えぇ、天使です」

白くて大きな翼を広げ自慢気に言ってきた。腰に手をあて鼻を高くしている様子は奏太の妹の雪奈の小さい頃を見ているようだった。

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