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虚無

もうそろそろ最終話になります。

煉が消えた…そして次は世界が消えようとしている。ただしく言えば世界が壊れよう(おわろう)としている。もしこのまま壊れる(おわる)なら煉の死は無駄になってしまう。そう考えた奏太は居ても立っても居られず、走り出していた。

「どこへ行くのですか?奏太様」

「セタたちがこれの発端なら、煉の死を無駄にしないために俺があいつらを止める!」

「無理だ!お前も死ぬぞ!」

「だったら!どうやって煉の死を無駄にしないで済む?教えてくれよ!」

奏太の目からは大粒の涙が溢れでた。目の前で友を失い、友の死すら無駄にしてしまうかもしれない…そんな自分の無力さに溢れる涙は止まらなかった。

「奏太様…」

ガブリエルが奏太のかたに手を添えようと近づいた時、遠くで爆発音とともに光の柱が現れた。ちょうどユグドラシルやラファエルがいる方向だった。


「セタ!よかった…」

「アオ!また会えて嬉しいよ」

最悪の天使二人が揃ってしまった。300年前の悲劇がまた繰り返されようとしている。破壊され、再生され、また破壊され、ずっと同じことが繰り返される地獄のような日々が始まろうとしていた。

「セタとアオ…またお前らと会うことになるとはな…」

「ユグドラシルか…」

「僕たち二人ならこんなやつ一瞬だよね!」

「ああ、手始めにユグドラシル…貴様を葬る」

セタとアオが手を取り、詠唱を始めた。

「光は影を嫌い」

「影は光を好む」

〈光と影二つが交わる時、世界は沈黙する!〉

詠唱が終わったと同時に、あたりの地面はまるで爆弾が爆発したかのような音を立てて弾けた。そしてユグドラシルを包むように現れた光は雲を抜け星に届くほどの高さまでに伸びていった。

「これは………」

「ユグドラシル…もう二度と会うことはないだろうな……」

光が消えた時、そこにいたユグドラシルはもういなかった。死んだのか逃げたのか、それはあたりの様子を見ればおおよそ見当はつく。

「これは一体⁉︎ユグドラシル様!」

ガブリエルと奏太、ネロバスタがついた時、東京の街はさら地になってしまっていた。人の気配ひとつない死の街になっていた。

「神が二人に人間が一人…たったそれっぽっちで何をしに来た?」

「煉の死を無駄にしないために、お前らを倒しにきた」

「笑わせるな!もはやこの地球に未来などない!」

ゼウス、アダム、その他多くの命を失った地球にはもう生の活力はなかった。もう地球は生を失っていた。

「そんな地のために、命を使うのなど無駄だと思わないか?だったら私と手を組まないか再生の鍵(世界の救世主)?」

「断る!」

「そうか…残念だ……ならばお前も、死ね!」

アオは奏太とガブリエルの周りに人型の敵を放った。

「そいつらはこの世にいた奴らの怨念を具現化したものだ。そう、貴様らが守れなかった尊い命だよ」

「こんなもの!」

ネロバスタが剣を振るい敵をなぎ倒していた。ガブリエルも奏太をかばいながら敵を倒していった。

「こちらは二人なのに君たちが三人なのはずるいと思わないかい?」

「あなたたちだって三人でしょ?」

「まさかこいつを数に入れてるのかい?冗談はよしてくれ」

アオが指をさしたのはラファエル…ではなくセタだった。

「え?アオ…どう言うこと?」

「いつまでもセタを装われるのは不快だ」

アオはセタを持っていた剣で貫いた。

「なん…で…?ア…オ…」

「セタはもうこの世にいない!300年前のあの日!俺が消された直後にゼウスと聖王に殺された!」

「気づいていたのか…」

「ラファエルと言ったか?今更お前は私に何の用がある?セタの人形を使って私を蘇らせたのだから、それ相応の意味があるのだろ?」

「アオ…君はただのパーツに過ぎないんだよ。僕が二人の天使の一人になるためのね」

二人の天使について今までしっかりとした話はどこにもなく、セタとアオが二人の天使だと思われていた。しかし事実は違うらしい。ラファエルが言う二人の天使はなんなのか誰にも分からない。

「ラファエル、二人の天使とはいったいなんなのですか?」

「貴様に話す意味すらないのでな」

ラファエルが指をならすとアオの出した敵が2倍近くに増えた。

「初めて見たか?俺の神技、“虚無(やみ)”ないなら増やせばいい、あるなら消せばいい。自分勝手なのさ俺は技はね」

ラファエルは敵を増やしただけでなく、ネロバスタを消していた。

「もううんざりだ!」

声と同時に空から無数の光の矢が降り注ぎ敵を消していった。

「この声…まさか⁉︎」

「どうして…あなた様が…」

二人の視線の先にいたのは伝説の英雄と呼ばれている最高の救世主だった。

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