表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/18

唯香のライブ〜終焉〜

絶望の時は刻一刻迫っていた。ただその迫りくる絶望に今、気付くものは誰もいなかった。あの終焉の鐘が鳴り響くまでは………


「始まるね」

「なんかすごいな」

受付でチケットを見せたら関係者席に通された。あまり近い席ではないが一般席よりは良く見える場所だった。

「行くぜ!武道館!」

会場の照明が消えて唯香のイメージカラーの赤のサイリウムが点灯した。一曲目が始まると会場は熱気に包まれた。同じタイミングで会場の全員が掛け声を出し、ジャンプをしサイリウムを振る。奏太はあらためて唯香がトップアーティストであることを認識した。

「うるさいなぁ…」

ライブ会場では聞くはずのない言葉だった。会場の雰囲気をぶち壊すような言葉にファンたちは激怒していた。が、会場はかなりの音が響き渡っており、人ひとりが声上げたところで聞こえるはずもない。唯香の歌を遮ったのはただの人ではないことが会場のファンにはわかっていなかった……奏太と煉を除いては。

「奏くん…」

「あぁ…わかってる」

奏太と煉は関係者席から離れ、会場の外に向かった。会場を出るためには外につながる扉を開けなければならないが、その扉の反対側からはただならない空気が伝わってきた。

「なんだろう、この感じ…」

煉が恐る恐る扉に手をかけ、開けようとした時…

「キャー!」

会場内に響き渡る悲鳴と慌ただしい足音、しかしその悲鳴は中から聞こえてくるだけではなかった。耳をすませてみると、悲鳴は外からも聞こえる。

「煉!伏せろ!」

煉は扉から手を離し慌てて伏せた。奏太の方を見ると、奏太の目が赤くなっていた。

「女神権限が、危険を知らせている…なにかが近づいているらしい…」

奏太が近づくものの正体に気づいた時、けたたましい爆音と一緒に会場の上半分が消え去った。さらにあたりは炎で包まれた。

「唯香!」

奏太は唯香が心配になり、きた道を戻った。今の奏太に煉をかまっている暇などない。だからなのか、煉が気を失っていることにも気づくことはなかった。

「そうくん?そうくん!」

「唯香!」

唯香はまだ会場のステージの傍にいた。どうやら会場のファンたちはみんな外に避難したらしい。しかし唯香は逃げる途中でがれきの落下に巻き込まれ、マネージャーたちとはぐれたのだ。

「よかった…無事で…」

「あなたは本当に間抜けですね」

奏太が顔を上げるとそこには唯香ではなく、見知らぬ男がいた。

「お前は誰だ?」

「名乗ったところで貴方には無駄なことですよ」

「何を言っている?」

「では、さようなら救世主奏太くん」

「奏くん危ない!」

奏太が気づいた時、奏太の体は宙に浮いていた。代わりに煉がさっきの男の前に立っている。奏太がゆっくりと落ちて行くにつれ、煉を貫いていく。まるで写真を連続させているような光景だった。

「煉!」

背中を打ったのにもかかわらず奏太は瞬時に立ち上がり、煉のもとに駆け寄った。

「チッ、天使の犬が邪魔しやがって」

煉から剣を抜き、煉を蹴り倒した。

「奏くん…逃げて…」

「そんなことできるわけないだろ!」

「ならば…死ねッ!」

庇うように煉を抱きしめている奏太にむかい、煉の血のついた剣を振るった。しかし、その剣は煉にも、奏太にも当たることはなかった。

「うろたえるな!前を見ろ!立ち止まるな!」

音も風も無く奏太に向けられ剣を防いだのは翼をはやした見たことのない人物だった。

「まさか、貴様が出てくるとはな…ミネルヴァ」

「こちらも驚いたぞ、ラファエル。貴様がまだ生きていたとはな」

「勝手に殺すなよッ!」

ミネルヴァに防がれていた剣を力のままに、振り下ろした。

「甘いッ!」

ミネルヴァは振り下ろされた剣を後退しやり過ごし、ラファエルの剣を自身の剣で弾き飛ばした。

「たかが剣!自惚れるなよ?」

ラファエルの周りに、よくない空気が集まっているのがミネルヴァをはじめ、奏太にも感じ取れた。

「聖界に伝わり宝刀、我の声に答えいまここに現界せん、聖剣・エクスカリバーッ!」

ラファエルが手を掲げると、空から雷がラファエルに向かって落ちた。数秒の間あたりは砂埃に包まれたが、それは一風により消し去られた。

「貴様ら!ここから立ち去れ」

ミネルヴァは奏太と煉を守りながら戦うことは困難と判断し、二人をその場から離れるように命じた。

「でも、煉が…」

「女神権限にアクセス!healing」

煉の周りを緑の光が包むと、煉の傷は見る見るうちに塞がっていった。煉の表情が苦痛の色から安堵の色へと変わるとそのまま意識を失った。

「逃げられると思うなよ!」

ようやく姿を現したラファエルがエクスカリバーを一振りするとあたりは風の渦に包まれ、そこから外に出ることは困難になってしまった。

「貴様!何が目的だ!」

ミネルヴァが尋ねるとラファエルは馬鹿にしたような笑い声をあげた。

「ハハッ…貴様にはわかるまいよ、ここが一番いったいどんな地なのか」

「ふざけるのも、大概にしろッ!」

ミネルヴァが勢いよくラファエルに向かっていったが、その剣はラファエルに届くことなくエクスカリバーの風に弾かれてしまった。

「フッ…いいだろうそこまで知りたいのならばせめてもの慰めに教えてやる。この地のことをな!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ