002 「この子でー」→002 「第二話。奴隷と主」
少しの時間、誰も喋らない、動かない状態で三十分が経過した頃だろう。扉が開く。
「お待たせ致しました」
扉が開いて、違う男の声があたりに響いた。声がした方を見ると、両足のない少女が車椅子に乗っているのが目に入る。自分は子供の方を見るとニコニコと笑っていた。子供は、この少女も買うようだ。
「うんうん。これで約束の二人だね」
はい、お金、と子供は言って机の上にコインを置いた。男はすぐにコインを手に取って、頷き、一枚の紙を取り出した。あれが、自分たちを縛る契約書。そこに少年が懐から取り出したペンでサラサラと何かを書いている。きっと、署名をしているのだ。少年が書き終わり、ペンを仕舞うと、首が一瞬キュッと締まったかと思うと首から出ていた鎖が消えていた。いや、消えていないが、薄くなって主人以外に触れないようにされたのだ。
「これで二人はボクのモノだから、連れて行くね」
子供がそう言ってからは男達の行動は速かった。早くこの少年を追い出したかったのだろう。車椅子ごと子供に押し付け、自分を含め三人共、館から半ば放り出されるように外に出た。そして、子供が歩いていくのを自分はゆっくりと着いて行きながら、少し離れてから後ろを振り向いて見る。かなりの年月をあそこで過ごした。良い思い出などある訳がない。でも、ここから居なくなる、となると不思議だ。しかし、館から二、三人の男達が出て来ており、何やら白い粉を巻いている。何を、しているのだろう。
「シオを撒いてんの」
自分の疑問に、主は答えてくれた。どうやら、主であれば思っていることが筒抜けらしい。
「ひっどよね。ボクが行くとこ全部出てったあとはシオ撒くんだよ」
主は首を横に振りながら溜息を吐き出して、そう続けた。
「あ、でも歩けるんだよね。んじゃあ、この子の車椅子押してくれる?」
主がそう言って、少女の乗った車椅子をこちらに渡してきた。自分は主に言われた通り、少女が乗った車椅子をおしながら主の後をついて歩いた。街道を少し歩き、街への門を潜る。そして、着いた先は普通の喫茶店。普通の席に通されて、普通に飲み物や食べ物を頼んでいて、普通に目の前に食べ物が置かれた。
「さ、まず食べちゃおう。ボク、朝ごはん食べて無いからお腹ペッコペコなんだよね。モチロン君達もお腹空いてるよね?」
目の前の少年はニッコリと笑ってそう言った。正直に言うとそこまでお腹も空いていない。余り体力も使わなかったし、何より、普通の食事が怖くてお腹はいっぱいの状態。
「お腹、空いてるよね?」
ボク1人で食事させるような寂しい真似させないよね、と副音声が聞こえた気がした。思わず自分は首を縦に振って目の前に置かれた食事に手を付ける。少年は満足したように笑って一言。
「いただきます」
手を合わせて言い、食事に手を付けた。隣に座らせた少女は、主の行動を見て、真似したあと、食事を開始した。
文章変更(2017/04/29)
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