チェシャ猫笑いの引きこもり魔族(実は王族)。
みんな忘れてるんだがオレって実は王族なんだよね。
まあ、あの堅物な魔王は結構有能なんで端っこのオレがする仕事なんか
ほとんど無いんだけどさ。
なので退屈な日常を打破すべく日々努力を重ねてるわけだ。
今回はちょっとドジったんだけどね。
部下の一人が手に入れてきた魔王の秘密の儀式の情報!
コレは! とちょっと興奮しちゃったんだよ。
アイツはほとんどそういう「秘密」なことはしないんだ。
興味をそそられたねぇ。
儀式をのぞき見しようと思っただけなんだけど目的が『薄毛の解消』なんだとさ!
笑うなって無理!!!
もう苦しいのなんのって!
隠れて覗いてるからモチロンバレる訳にはいかないだろ。
でもバレそうになっちゃってねぇ・・
注意が逸らそうと使った魔法が魔法陣に当たっちゃったんだ。
あー・・なんというか薄毛は解消したんだが・・逆方向だったよ。
薄毛じゃあなくツルッパゲに進化しちゃってねぇ。
ソレを見た途端もー我慢しきれなくなっちゃったんだよ。
盛大に吹き出しちゃった。
魔王城じゅうを逃げ回ったんだがまぁしつこいしつこい!
流石に魔王だけあってどこに逃げてもすぐに発見されちまう。
結果逃げ込んだのがあのダンジョンだったんだ。
ダンジョンボスのデュラハンはやっつけてもしばらくするとまた出て来るから
面倒くさくなって部屋の隅の壁を造って閉じ込めて置いた。
戦闘モードなのに戦えないってストレスだったらしいんだよ。
ココのダンジョンから魔物が氾濫したって人の勇者の一団が文句をつけに来た。
ガキどもだったしオレって王族だから当然こっちが強いハズだったんだけど・・
軽くあしらわれてペイッって感じにのされたよ。
とっ捕まってどうされるのかと思ったんだ。
魔王が直々に人の国の城まで飛んできちゃったしね。
あーんなツルッパゲを治せる神官なんているんだねぇ。
・・アイツってハゲを治すだけで大儲けできそうだよな。
まあ、フサフサな頭を取りもどした魔王の機嫌は上々だった。
オレのことも忘れたみたいに置いて行きやがったからな。
魔王城の執事が回収してくれたんで勇者どもともお別れ。
強い連中だったけど面白い連中でもあったね。
隷属の首輪の付いた貴族・王族なんて珍しいものを見せてもらっちゃったしね。
城に帰ったら魔王に謹慎処分を下されて暫く塔のテッペンに押し込められた。
甘いよ! 魔王!
こんな所なんぞ抜け出す方法はとっくに開発済みなんだ。
オレはココに居ることになってるからその間に起きたことは
オレがやったんじゃあないってことにできるよな。
アイツがストレスを溜めすぎるとどうも良くないことが起きかねないらしい。
昨夜夢に出てきた自称神さまがそんなことを言ってた。
と言うことはオレが時々解消させてやればイイって事だよな。
仕事ができてもストレスを溜めすぎちゃあアカンよね。
ということで次のイタズ・・
もとい「危機管理啓発活動」といこうかね。
コラ! 執事!! お前もその黒い笑いを引っ込めろ!! (笑)。
お前のおかげで魔王に感知されない方法を手に入れたんだ。
有効活用させてもらうぞ。
今度は絶対バレないでできそうだからな。
やっぱり全然懲りてない引きこもり魔族さんなのでした。
執事さん・・魔王さまより引きこもりさんの味方みたいです。
・・あー、事情は聞かずに置きましょう。
笑顔が怖いひとのことは特に・・ね。