まだ二作目の新人映画監督。
あー・・苦手なんだよなぁ・・エライさんって。
せっかく気分が盛り上がって来たのに・・
でも無視なんかできないし・・
アノ人ってスポンサーにも顔の効く人だしなぁ。
でも主役の彼はそのあたりが見掛けの割に分かってるヤツだ。
代わりにご機嫌取りをしといてもらおう。
今日はなんだか調子が悪そうではあるんだが・・
息子に見学させたいってことだったのになんだってゾロゾロと来てんだよ!
あー・・息子さんがダチどもを引き連れて来たのか。
まあ、思ったより行儀は悪くないからいいかな。
主役の調子がイマイチなのを見抜いたのか休憩させられた。
スタッフ連中がホッとしたのが見えた。
ふ~ん・・現場のことが分かってないタダのエライさんじゃあないらしいな。
コレは意外なラッキーかもしれない。
休憩で主役くんはちゃんと接待をしてくれたよ。
結構こういうことは大事なんだがオレって実はそういうのが下手なんだよなぁ。
ありがとう! 主役くん! でもコレは彼のためでもある。
ああいう人にコネを作っとくのは悪いことじゃあないからな。
休憩が済んだら主役くんは調子を取り戻していた。
ありがたや!
あのエライさんには感謝だね。
次の休憩中にエライさんと少し話をした。
意外と分かってる人だと理解できた。
コレなら余計な横ヤリも防いでもらえそうだし手助けも期待してもよさそうだな。
なかなか現場を分かってくれないもんなんだよ・・
エライさんってさ。
まあ、立場が違うってのは分かるんだけどね。
ところがその話の最中に大道具のスタッフがセットから落ちやがった!
修行時代の現場で事故が起こった時は保険がかかってなかったのが
後から分かって大事になったんだ。
まあ、今回はちゃんと確認しといたんだがそれでも事故にはドキッとしてしまう。
結局、足の小指の骨折だけだったんでホッとしたね。
その間に見学者のガキ・・もとい息子さんたちと主役くんが居なくなっていた。
あれ?
エライさんは楽屋のほうを見せてもらいに行ったなんて言う。
はて?
そんなこといつ話してたんだろう?
その日は事故もあったのでそこまでで撮影も中止になった。
エライさんは色々手助けしてくれた。
大ヒットとはいかなかったが出来もかなりイケたし評判も思ったより良かった。
次回作についても上からはいい返事が返って来ている。
どうしようかと思ったんだが主役くんの忘れたノートを見ちゃったんだよね。
どうやら彼の創作らしいね。
ラノベ風か・・
まあ、全部じゃあなくてもこういうのを味付けに入れてもイイかもしれない。
しかし彼って意外な才能だねぇ。
結構リアル感があるよコレ。
ということで味付けに採用決定!
エライさんも気に入ってくれたみたいだね。
なのに殺陣の連中が内輪もめなんかしてくれやがった!
皆の仲裁も受け付けないってなんなんだよ!
遅れはそのまま経費の増大だって分かってんのか!
オレは金の心配までしないといけないのかよ!
エライさんが色々心配してくれたけど代わりが急に見つかるなんて
都合のいいことが起こる訳もない。
そう思ったんだけどねぇ・・
あのエライさんは意外な人物だった。
趣味が武道全般とはねぇ・・
代わりの殺陣のメンバーはあの息子さんのダチ達だった。
指導係まで準備済みなんて恐れ入ったね。
指導係が言うには
「楽な仕事だったね。ほとんど指導なんていらない連中だよ。
多分なにかやってる上にかなりデキるヤツラだね。
キツメにやってもほとんど息も切らしてないしな。
動けるってだけじゃあ殺陣は無理なんだが若いせいか飲み込みも早いんで
ホントスイスイだったよ。」
だそうだ。
タダの中学生のガキどもに見えたがなぁ。
流石にあの一番チビな子は使うのは無理な気がしたが連中が
合間に殺陣で遊んでるのをスタッフが面白がって撮った機材の
テスト映像を見て驚いた。
チビが一番上手い!
オマケに遊びどころかちゃんと指導までしてやがる。
コレはなんとか使いたい! と思ってしまった。
台本を書き換えたいと思ったのは初めてだな。
次にも使ってみたいと思ったのにチビはあっという間に
チビではなくなってしまった。
なので芝居部分担当の子役をヤツラに鍛えさせてみた。
結構イイ線いってるようだ。
アクションのできる役者になれれば子役を卒業しても仕事が来る可能性が
増えるだろうしな。
まあ、子役は長くは使えない。成長するからな。
代替わりさせて別の子役でやらせることもできるだろう。
連続でなくてもシリーズでできそうな気配だ。
味付けが肝心なんだよな・・シリーズって。
主役のヒーローさんが召喚されたことなど全然気づいてない
監督さんなのでした。