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美人な領主未亡人。

 領主だった夫は戦死しました。

勇者さまと共に・・


悲しみに沈みこみそうな私を支えてくれたのは息子です。

お世辞にも頼もしいとは言えない優しい息子。

病弱で線の細い子で何度も死にかけるような目にあいました。

でもそんな息子が〔勇者〕だとお告げが有ったなんて・・


戦うどころか普通に外で遊ぶことすらほとんど無かったのに。


そんなときに神殿からもたらされた知らせには驚きと喜びを

感じてしまいました。


〔勇者〕の一行が異世界から迷い込んで来ていると! 


先代の勇者さまは誠実で優しくて勇敢な本当に勇者の見本のような方でした。

異世界の方でも勇者さまなら息子に多少の指導をお願いできるかもしれないと

期待してしまいました。


勇者さま達はココの先代勇者さまよりずっと若い方々でした。

リーダーらしい方は息子とあまり変わらない位に見えました。

後でご本人からご自身も病弱だったせいで少し皆より成長が

遅かったのだとお聞きしました。


年長者が二人付いて来ていましたがどう見ても彼がリーダーで

疑いようもありませんでした。


息子と色々話して訓練をして下さいましたが驚きでした。

風魔法で浮かべた紙の玉を打つだけの訓練なんて・・

と思ったら息子は当てることすらできませんでした。

こんなことで・・と情けなく思ってしまいました。


それでも根気よく回復魔法を掛けながら続ける二人・・

こんなことで・・コレはホントに訓練になっているのかと

疑問に思ってしまいました。


午後から魔法の訓練をしていました。

息子は魔法は初体験・・できる訳がない。

と思ったのにあっという間に発動させることに成功してしまいました。

聞いた限りでは最低でも3日、普通で1週間、長いと一カ月だったはずです。


「モチロン勇者ですから才能は有りますけど午前の訓練で集中力を

上げましたからね。

魔法にはイメージと集中力が大事なんですよ。」


アレはタダの剣の訓練じゃあ無かったんですね。


「勇者はほとんどなんでもできますが専門職には敵いません。

全てが最強という都合のいいことにはなかなかいきません。

そのあたりを自覚できれば最強への第一歩を踏みだせたことになるかと思います。


彼は始めたばかりですし若すぎるくらいです。

まだ自分の事で精いっぱいです。

仲間に足りないところを補ってもらうなんてことを理解するには

まだまだかかるでしょう。


我々は元の世界に帰らないといけないんです。

続きは周りのあなた方に指導していただくしか道はありません。

どうかよろしくお願いします。」


依頼をしたのはこちらなのにココの魔術師、騎士、神官達に

あんなに丁寧に頼んでくださるなんて・・


神官さまは体質改善の薬を処方してくださいました。

ほんの4日ほどなのに息子の顔色が明らかに良くなってます。


「健康の基本は食事と睡眠と運動です。薬はその補助です。

一気に頑健な体とはいきません。

焦らず一歩づつ進むつもりで頑張ってください。」


食事内容のバランスなんて考えたことも無かった・・

あの子は食事することにもあまり関心を示さない子だったし。

少しでも食べてくれればそれで親は満足してしまってました。

食べたものが血となり肉となり骨となる。

戦う力にもなると分かればあの子も食べることに関心を持ってくれるでしょう。


4日で勇者さま達は神さまの助力を得られて帰られました。

息子はたった4日ながら顔が引き締まってきました。


最初の訓練で使っていた妙な形の訓練用らしき木剣(?)を

息子はお譲りいただいていました。

初心を忘れないように・・なんでしょうね。


「やっとスタート地点に立ったようなものだから気を抜かず頑張ってほしい。

オレも昔は病弱だったし今だってこんなチビだ。

それでも勇者ができてるからな。

君にもきっとできる。


自分が勇者なんだということを忘れないようにな。

周りがみんな先生だと思って頑張れ! 」


息子に励ましの言葉を残されて帰って行かれた勇者さま。

敵と戦って見せたわけではないけれど彼は確かに勇者でした。


まあ、どうしても生意気なチビにしか見えないところがお気の毒でしたけどね。

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