表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/142

頭を下げただけの王様。

 自信満々で出て行った高位の神官は人格が崩壊した。

勇者は魔道具のおかげで帰って来たものの体中を食われて

欠損だらけになってしまった。


コレでどーやってオーガの軍団に対抗できるというのか・・


神殿の神官が神さまからのお告げが有ったと言う。

『勇者召喚』

それがあまり良くないことだと知識としては知っていた。

それでも・・


勇者も賛成してくれた。

ココには彼以外勇者はいない。

迷わなかったとは言わないがそれしかもう手は無いだろう。


だが召喚されてきたのは二人の少年たちだった。


「はぁ~・・自分達でやって下さいよ。」


なんだかバカにされたような気がしたのは私だけじゃあなかったようで

大臣が隷属の首輪を発動させた。


だが反応したのは一人だけだった。

チビな少年は平気な顔でもう一人に回復魔法を掛け首輪を簡単に外してしまった。


「コイツラは多分帰還させる手段を持ってないと思うよ。

こんなのをハメたがるヤツラは大抵そうなんだ。」


大臣はますます頭に来たようで騎士たちに取り押さえるように命じたのだが

チビはとんでもないヤツだった。

騎士たちを全員魔力で拘束してしまったのだ! 


見掛けはチビなのにとんでもないバケモノ・・


「騎士がこんなに居るなら子供の勇者なんか召喚してないで自前の戦力で

何とかしてください。」


返事もできずに固まっていたらなんとお祈りを始めた。

確かにココは神殿だが異世界人のコイツのお祈りなんて・・


そう思ったのに神さまの声が私にも聞こえた。

神官でもないのに・・アイツのせいなのか・・? 


神さまはココの事情を話され暗黙のうちながら召喚を助言したことを認められた。

そしてオーガの軍団の退治を依頼された。


チビなのに実力者らしい・・神さまが依頼するなんて・・

そう言えば「最強勇者の一番弟子」とか言っていた。

神さまが最強と言われたからには相当な実力者だろう。

何処の最強なのかは分からないが・・


チビ勇者は引き受けてくれた。

私にできたのは頭を下げることだけだった。

それからはもうあれよあれよという間にコトが進んで行った。


勇者の体はまともな生活もできないほどの欠損だらけだった。

なにやらアヤシイ薬を使ったと思ったら四日ほどで元通りに

戻ってしまった。

完璧な成人男性の健康体だった。


戻った体は馴染むまで暫くかかるが魔法は使えると言う。

勇者は魔法で援護したいと言った。


「申し訳ないとは思いますが神官殿はオレでは無理です。

オレは体のキズならなんとかできますが心までは・・」

ココの神官や医師でも無理だったのだ。

そこまで望むのは酷というものだろう。



オーガの軍団も大きな入道雲からの雹と雷で退けた。

この国の騎士団や他国からの援軍も殲滅戦に参加できたので

面目を保つことができた。


だがあのオーガが問題だと分かった。

禁忌の技で造られたオーガ・・

一体誰がそんなモノをコノ世界で造ったのか・・


チビ勇者の師匠だという全然強そうに見えない最強勇者が調べたが

何も発見できなかったという。

証拠を隠滅して逃げたのか・・

またやりかねないと思うとコワイがまあ・・

当分は何もできないだろう。


ココの勇者はチビ勇者の世界に修行に行きたいと言ってきた。

彼等のトレーニング法ならもっと強くなれそうだという。

だが・・勇者が居なくなったら・・


神さまは許可してくださったそうだ。

確かにまたあのオーガどもが出てももう一度チビ勇者達を召喚するなんて

できないだろう。

他の世界にも出てるそうなのだから。


神さまは非常事態には勇者を呼び戻してくださるそうだ。

有り難いことだ。

もうオーガの軍団に滅ぼされる以外無いという事態になっても

我々は神さまから見捨てられなかった。

有り難いことだ。


神官は最強勇者の妻だと言う女性が人格を戻してくれた。

記憶が所々飛んでいたしなんだか性格が控えめになったようだ。

大きなショックを受けた部分を封印したせいだという。


チビ勇者が彼女は聖女なんだと教えてくれた。

女性は結婚すると聖なる力を失うことが多いのだが彼女は失わなかったらしい。


マレにそういうことがあると神殿長が言っていた。

「私に見えるだけでもコワイくらいの加護をお持ちです。

こんな方がおられるとは・・

あの勇者殿が聖女と言われる訳です。」



 王として私にできたことなどほとんど無かった。

ただあのチビ勇者に頭を下げただけだ。


せめて彼等と神さまに感謝の祈りをささげよう。

そうして次の不測の事態に備えることにしよう。

勇者が修行から戻るまでは一年だがその短い間でも

できることはあるはずだと思うから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ