実はオーガより弱い魔王。
ホントの事をいえば私はオーガより弱い。
なのになんで実力重視の魔族の王なんかになれたのかと言えば
側近たちが優秀だったからだ。
アレラは実力も有るし派閥の力関係のバランスも理解して
無理だったはずの王位に私を押し上げた。
今回は私もアレラも油断していたとしか言いようがない。
なにしろどう見ても弱っちい学者でしかなかったからな。
まさかオーガなんかに変身させられるとは・・
国民もかなりのものが変身させられて隣の人の国との戦争に使われたと言う。
黒幕が人の国の第一王子だと分かった時にはあきれてものも言えなかった。
まさか勇者に助けられるとは思わなかった。
オーガの状態で戦ったが軽く倒されてしまった。
もともとオーガより弱いからなぁ・・敵う訳がない。
殺される! と思ったのに勇者は私を殺さなかった。
あの学者の魔族を色々問い詰めていたがオーガへの変身は〔禁忌〕な技と
言っていいモノで下手をするとこの国の全てを
神に〔消去〕されるかもしれなかった! なんて言う!
〔消去〕って・・えーと・・
全てって・・えーと・・ホントに〔全て〕なのか?
・・・ウソを吐いてるようには見えなかった。
しかもなぜか〔魔族の神の加護〕なんてものがついている。
・・〔人〕だよね・・勇者だし・・・
私を殺す気はないようなので事情を聞いてみた。
「ココの神さまはまだ赴任されたばかりなんです。
以前は別の異世界におられました。
そちらでご縁があってご加護をいただいたんです。
ココへの召喚は実は弟の召喚に巻き込まれたんです。
弟はまだ赤ん坊なので代わりに何とかしてほしいと神さまから
ご依頼があったんです。
魔族の皆さんはオーガに変身させられましたが禁忌の技だと
魂までも魔物に変質してしまいます。
あぶないところでしたね。」
「魔王さまの実力がこんなものだとは思っておりません。
オーガなんぞに変身させられていたら十全の力が出せません。
若輩な私はとても魔王さまのお相手などホントは無理です。」
私の実力なんぞ吹けば飛ぶようなものなのに・・
コレは魔王な私のメンツへの配慮か・・まあ、有り難く受けておこう。
こんな子供に気遣いされるなど恥ずかしい限りだが彼のオカゲで
〔消去〕を免れたのだからな。
戦後の処理は〔分かってる〕上級貴族と側近達に任せれば大丈夫だ。
ココの神は魔族だと分かったし神殿には多少でも配慮して
感謝の祈りとご供物をささげよう。
あの勇者はなにも受け取らなかった。
できたらあんまり〔人〕をいじめないでやってほしいと言ったが
まあ多少の仕返しくらいしたいものだな。
〔消去〕されかけたんだし・・
いろいろあったが黒幕の第一王子は恨まれて異世界に送還されたそうだ。
飛ばした本人にも行く先が特定できないなんてなぁ。
修道院に幽閉って聞いてたんだが・・
もう帰っては来られないんなら飛ばされるのも幽閉されるのも同じかもしれない。
異世界でくたばるまでに少しは反省してほしいものだよ。
魔族にも人にも迷惑てんこ盛りだったんだから。