案内人な魔王国の貴族。
魔王城に呼び出されたときは一体何事かと思ったのだが
あんな目に会うとは思わなかった。
オーガに変身させられるなんてなぁ。
元に戻してほしければ命令に従えと脅されて弱っちい学者な魔族の
言う事を聞かされた。
サイクロプスが見張ってたし逆らおうとしたヤツラは全員
サイクロプスに叩きのめされた。
魔王さまもどうやらアイツに捕まっているらしい。
どうすればいいんだろう・・・
ともかく命令通りに隣国の人の国を攻めた。
ほとんど制圧できた頃その向こうの国との国境辺りで
反撃された。
戦力をソコに集中して撃破! のはずがあっという間に反対にやられてしまった。
まさか天候を操るほどの魔術師がいたとは・・・
しかもあんなチビだなんて。
だがチビなガキはオーガにされた私達を元に戻してくれた。
毒薬を使われたのには驚いたね。
解毒薬が用意してあったとはいえ、
「死にかけないと元には戻れない」なんて言うんだから・・
だが何人か勇気のあるヤツラが試してくれて元に戻ったので
ウソじゃないと分かった時は嬉しかった。
停戦交渉の打診をしたいと言われて案内役に名乗り出た。
他にも立候補したヤツはいたがなぜか私が選ばれた。
一緒に居た知人はチビは魔族の神の加護を得ていると言う。
・・どうみても〔人〕なんだが・・・
だが知人が私にウソを吐く理由は無い。
他にもチビの加護が見えてる者がいたようだ。
ともかくしばらくチビの指示に従っておくことになった。
「すいません・・オレ転移の魔法はまだ下手なんです。
風魔法で飛びますから気分が悪くなったら言ってください。」
飛行魔法も結構高度な魔法のハズなんだが・・
自分の他にも3人も運びやがった!
しかもあの高度とスピード・・もう何も言えない。
コイツが本気になったら魔王国どころかこの大陸全部を壊すくらい
軽いかもしれない。
一緒についてきた魔術師と騎士の顔色は悪かった。
私も多分悪いだろうが肌の色がちょっと連中とは違うからな。
多分、平気な顔に見えてたと思う。
チビがなんだか感心したような顔をしてたから。
地下牢に閉じ込められていた上級貴族の方々を救い出し
魔王さまに謁見をお願いすると言うことで案内をお願いした。
〔加護〕を持ってるというのはやっぱり信用になったようだ。
学者な魔族は人の王子に隷属の首輪を付けられて命令どうりに
色々やらされていただけだった。
「魔王さまの実力がこんなものだとは思っておりません。
オーガなんぞに変身させられていたら十全の力が出せません。
若輩な私はとても魔王さまのお相手などホントは無理です。」
なにをトボケてやがるんだコイツは!!
だが魔王さまはこちらのメンツに配慮してくれたと感じられたようだ。
本来ならもっと人の国側に賠償とか山ほど請求してもいいはずなのだが
そうすると魔王さまと国の恥を大声で宣伝するようなものだ。
占拠した隣の人の国への援助を向こうにさせることと貿易の交渉で
一歩譲歩させること、そして大元の第一王子の排除。
あくまでも排除だ。
殺せと言えばかえって反発してこのまま戦争を継続させかねないしな。
さすがに上級貴族の方々は〔分かって〕おられる方々なので
交渉も順調に進んだ。
向こうの第一王子は辺境の修道院に生涯幽閉だそうだ。
ところが戦争の犠牲者の遺族がどことも知れない異世界に
彼を強制送還してしまったという。
勇者を召喚した人の国の王子が・・なぁ・・
なんだか皮肉な話になったね。
世界のすべてから切り離されて王子ですらなくなったただの人間が
生きていけるんだろうか・・
人は魔族よりずっと弱い存在だからなぁ。
連中は集団でこそ力を発揮するヤツラだと思う。
王子は生きていくだけでも多大な努力が必要だろう。
今まで周りに傅かれて生きてきたはずだからなぁ。
あのチビならどこでもしぶとく生きるだろうことは疑いの余地なんか
無いんだけどな。