隷属の首輪が妙に似合う魔術師。
召喚の魔法陣を作動させたのはオレだけじゃあないのになんでオレが
こんな目に会ってるんだろう。
隷属の首輪は呼び出した勇者に付けるハズだったのに・・
最初にでてきた赤ん坊が泣きだしたので後から来たガキは
色々面倒をみてやっていた。
なんだかガキのくせに手慣れてると思ってたら王子が
「首輪を付けて来い! 」と言う。
コッソリ近づいて付けようとしたが魔力で拘束された。
オレも魔術師の端くれだからなんとか外そうと頑張ったんだが
コレが外れない外れない・・
こんなガキのくせに・・と思ってる間に首輪を反対につけられてしまった。
王子も混乱していたようだった。
突然魔族まであらわれたしなぁ・・
ガキによるとアレはココの神さまなんだそうだ。
魔族が神さまだなんて・・
「ええ、魔族で神さまです。ココの世界の管理神ですね。
人間だけでなくエルフの神さまもドワーフの神さまもいます。
ほかにも人魚の神さまもいますよ。」
はぁ・・そうなんだ・・
神さまなんてお目にかかることは一生無いはずなんだけど
なんでコイツはそんな事を知ってるんだ?
ともかく監視とお供というか世話係をするようにと小声で命令された。
なので王子に追い出された形のガキどもに付いて行くことに。
金なんか持ってないだろうと思ったよ。
オレに出させるのかと思ったらチャラチャラとアクセサリーを
取り出して店の場所を聞いて来た。
チョットマテ! 今、ドコからだしたんだ?!
なんでこんなガキがアイテムボックスなんか使えるんだよ!
結局コイツはちゃんと金を用意して宿までソレナリのところを
確保しやがった。
「アナタが大人でよかったですよ。
子供はなかなか信用してもらえませんからね。
さっきのアクセサリー類もオレだけだったらもっと値切られてますよ。」
こういうことは慣れてるんだと言う。
慣れてる? どういうことだ?
「召喚は初めてじゃあないんですよ。弟は初めてですけどね。
オレの世界はなぜか召喚される人の多いところなんです。
オレは回数が多いので召喚除けの魔道具を知り合いに都合を
付けてもらったんです。
まさか赤ちゃんの弟が勇者召喚されるなんて思いませんでしたよ。
阻止しようとはしたんですけどね。
間に合わなくて引きずり込まれたんですよ。」
お前・・ホントに勇者なのか?
「まあ、オレの所にはもっと強い勇者が居るんで勇者だと名乗るのは
ちょっと恥ずかしいんですけどね。
魔族の神さまにも頼まれましたからなんとかしたいです。」
オレから情報収集して第一王子からの要請を受けてなんとあっという間に
解決してしまった。
もう驚いたなんてもんじゃあない!
雹を降らせたのもオーガが魔族だったことも!
だが黒幕が第一王子だったのはもう何も言えない位驚いた!
ガキ勇者まで驚いてたくらいだ。
王家の方々がどれほどの衝撃だったか想像もできない。
側妃の子ながら次の王はあの方だと誰もが思っていたのだ。
第二王子は第一王子に対抗することを楽しんでおられた。
最近、表情が曇りがちな気がしては居たのだがもしかしたら
なにか妙な情報をお持ちだったのかもしれない。
停戦の打診に第一王子の排除があったのは当然だろう。
魔王までオーガに変身させてたなんてなぁ・・
魔王国のプライドをメタボロにしたようなものだろう。
第一王子は辺境の修道院に生涯幽閉ということにはなったが
勇者の召喚に加わっていた魔術師の一人がどことも知れない異世界に
彼を送還してしまった。
アイツの家族が戦死してるのは知ってたんだがまさか王子を
異世界に放り出すなんて思ってもみなかったね。
勿論アイツはとっ捕まったが皆同情的だった。
戦争の犠牲者はアイツの家族だけじゃあなかったからなぁ。
召喚された勇者たちは帰ることもできずコノ世界で戦うしか生きる道は無かった。
だがチビは神殿であの魔族の神さまにお祈りして元の世界へ帰って行った。
隷属の首輪を付けようとしたことを謝ったんだけどチビは
「オレは付けちゃいましたからね。
未遂のアナタよりヒドイと思いますよ。すみませんでした。
一緒に付いてて下さったんで助かりましたよ。
まあ、オアイコってことにしてくれませんか? 」
なんて言いやがった。
まあ、おかげで解決したんだし。
むしろ礼を言わなければいけないだろう。
弟とトカゲ・・おっとドラゴンだったな・・
一緒に帰って行ったがアイツの世界ってどんな所なんだろう?
もう召喚は行われることは無いだろうから会うことも無い。
でも、もうちょっと一緒に居てもいいと思ったんだ。
生意気なガキだったんだけどな。